未来シティ予想図

課題克服×魅力増強プロジェクトで「日本一訪れたい街、渋谷」へ!

全ての人にとって快適で、夢が見つかる街づくりを実現

2012年の渋谷ヒカリエ開業を皮切りに、現在7つのプロジェクトが進行している渋谷。この街の持つ歴史や多様性を生かし、「エンタテイメントシティSHIBUYA」というスローガンのもと、その課題をクリアしつつ強みを伸ばす再開発が加速している。この再開発で渋谷はどのように変わっていくのだろうか。本プロジェクトについて、東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)の都市創造本部 開発事業部 事業計画部 渋谷まちづくり担当 課長補佐の亀田麻衣さんに話を聞いた。

スローガンは「エンタテイメントシティSHIBUYA」

ワールドカップ、盆踊り、ハロウィン、年末カウントダウンなど、事あるごとににぎわいを見せている渋谷。長谷部健区長が“世界の都市(ニューヨーク、ロンドン、パリ、渋谷)”と言うように、渋谷は今、国際的な都市へと成長を遂げている。

「年末カウントダウンはスクランブル交差点に人が集まり過ぎるという課題を街ぐるみで解決するために一昨年から始まりました。昨年は10万人もの人が訪れ、過半数が外国人。その様子がSNSなどで世界中に発信されて、渋谷は今や『世界のSHIBUYA』となっています。

SNSがこれだけ広がって、他人と直接関わりを持つ機会が少なくなったと言われる中で、見ず知らずの人が集まって、お互いに盛り上がる場所として渋谷が選ばれている。祝祭を祝う場として、人とのリアルなつながりを求める場として、今の渋谷があるのかな、と思います」

東急電鉄 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 渋谷まちづくり担当 課長補佐の亀田さん

渋谷の“課題”と“魅力”とは?

「今回の再開発の目的は、渋谷の持っている課題を克服すると共に、元々持っている強みをさらに伸ばすことです。

渋谷はその名の通り、すり鉢型の谷地形で、谷底にあたる部分に駅があります。ですからゲリラ豪雨の際は浸水してしまう可能性があるし、坂が多くて移動しにくく、回遊性があまり良いとはいえません。また、南側を首都高速道路と国道246号が走っていて分断されているため、スクランブル交差点側だけが『渋谷』と呼ばれていて、渋谷の“面”を狭く認識されてしまっているのです。

それから、大正期から歴史を重ねてできた駅構内は、皆さんご存じの通りとても分かりにくいですよね。こういった課題を克服していく必要があります。

また、遊ぶ場所としてのイメージが強い渋谷ですが、実はIT企業の設立数が都内ナンバーワンだったり(※下のグラフ参照)、クリエイティブコンテンツ産業が集積している地だったりと、ビジネス街としての側面も持っています。しかし一方ではオフィスの床面積が足りていない、という課題もあります。

2000年以降に設立された東京都のIT企業数

画像提供:東急電鉄

さらに、インバウンドの側面から見ると、渋谷は新宿、浅草、銀座に次いで4番目の訪問先となっています(※下のグラフ参照)。スクランブル交差点は日本一外国人が訪れる場所といわれているし、渋谷にはライブハウスや映画館があって、ナイトライフを楽しめる環境もある。

しかし、ホテルは新宿の約4分の1しかないので、せっかく外国人観光客が訪れても渋谷をじゅうぶんに楽しんでいただけていないんです」

訪問先ランキング

画像提供:東急電鉄

このように魅力と課題が混在する渋谷だが、一番の強みは、やはりアクセスの良さにあるといえる。

「渋谷駅は9路線乗り入れている、新宿に次ぐ乗降者数国内第2位のターミナル駅です。渋谷に拠点を置く企業によると、優秀な人材を確保するという面でも、アクセスの良さは重要で、学生は渋谷で働けるというだけで反応が良いようです。

また、渋谷は周辺が全てブランド力のある都市。原宿、表参道、代官山、中目黒、恵比寿など、1駅圏内の駅が全国区で有名な駅ばかりなんです。これを生かして、渋谷を起点にそれぞれの駅まで歩ける楽しい街づくりができるのではないか。そうして渋谷の面を広げていこう、というのも今回の開発コンセプトの一つで、われわれはこれを『広域渋谷圏』と呼んでいます」

渋谷周辺はメジャーな街ばかり

画像提供:東急電鉄

ITベンチャー企業の聖地であり、ファッションや流行が生まれる場所として文化的な面でもさまざまな強みを持つ渋谷。課題を解決しつつ、このような渋谷の魅力を伸ばす再開発が進められているというが、具体的にはどういったプロジェクトがあるのだろうか。

渋谷を変える、7つのプロジェクト

再開発事業を行う7つのプロジェクトがこちら

画像提供:東急電鉄

今回の再開発には、上図のような7つのプロジェクトがある。その中でも、再開発のキーとなりそうな建物について紹介したい。

2018年秋開業予定の渋谷ストリーム外観。STREAMは流れ、小川、絶え間なく続く、流れ込むという意味を持ち、施設の前を心地よく流れる渋谷川や、旧東横線渋谷駅の線路跡地の緩やかなストリートなど、多様な流れを表現している

画像提供:東急電鉄

「2018年秋に開業する【3】『渋谷ストリーム』は、オフィスやホテル、商業施設のほか、イベントホールなどが内包される予定です。そのコンセプトは『クリエイティブワーカーの聖地』。最近、渋谷ストリームにグーグルさんが入居することが発表されましたが、グーグルさんはもともと渋谷のセルリアンタワーで日本での事業を開始されたんです。その後、急成長されて床面積が足りなくなったことで六本木にオフィスを移設し、今回また渋谷に戻って来てくれました。

先ほどお話ししたように、渋谷にはハイグレードオフィスが不足しているという課題があります。そこで、それをカバーするために、今回の再開発では約27万平方メートルのオフィスを増床する予定です。一度渋谷を出て行ってしまった企業はもちろん、これから成長するような企業にもぜひ入ってほしいですね」

渋谷ストリームにはホテルも入るので、渋谷のホテル不足解消にも大きな意味を持つ。また、南側に建つので、南側地区の活性化にも一役買いそうだ。さらに、渋谷川の再生も官民で連携して取り組んでいるという。

渋谷川の再生イメージ。渋谷ストリームを起点に約600m代官山方面が生まれ変わる予定。清流復活水を活用した「壁泉(へきせん/水景施設)」により再生し、緑豊かな潤いある水辺空間を創出する

画像提供:東急電鉄

「川の周りには緑を植えて緑道にします。歩いて代官山まで行けますし、景観がきれいになって、駅前がだいぶ快適になるのではないかと思います」

観光のシンボルが誕生

2019年度に開業を予定しているのが、渋谷駅の真上に建つ【1】「渋谷スクランブルスクエア」の東棟だ。

これは今回のプロジェクトで一番高いビルで、渋谷ヒカリエより約50m高い、約230mとなる。

渋谷駅街区 東棟屋外展望施設俯瞰

画像提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

渋谷随一の高さからは、代々木公園後方にある新宿の超高層ビル群、六本木・都心方面、そして富士山に至るまで、素晴らしい眺望が広がる予定

画像提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

「『渋谷スクランブルスクエア』は東棟、中央棟、西棟を合わせたものの総称で、2019年度に最初に完成する予定の東棟の最上階には、屋外展望施設ができます。これまで、渋谷駅前には観光地と呼べる場所があまりなかったのですが、この展望施設を目当てに国内外から観光客が来てくれるのでは、と考えています。ここからは富士山を望むことができ、スクランブル交差点を上から見下ろすこともできます」

まさに渋谷のシンボルとなりそうな「東棟」。その下層部には、渋谷の地形のデメリットを解消する仕掛けも施されている。

すり鉢状の地形をフラットにつなぐ

「渋谷スクランブルスクエアと渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、道玄坂一丁目駅前地区、渋谷マークシティはそれぞれデッキでフラットにつながる予定で、将来的には渋谷駅桜丘口地区もつながります。このデッキと一緒に『アーバン・コア』と呼ばれる、エスカレーターとエレベーターを配置した縦軸空間も生まれます。

渋谷駅周辺動線 立面図。渋谷の快適性を高めるアーバン・コアは、地下やデッキから上下に人々を誘導する、街に開かれた縦軸空間

画像提供:渋谷駅街区共同ビル事業者

アーバン・コアは、渋谷ヒカリエをイメージしていただければと思います。地下3階から地上4階までのエスカレーターがあり、ヒカリエの場合は1階で降りれば明治通り、2階で降りれば宮益坂の上、青山通りの方に出られるので、坂を全く感じずに移動ができるんです。アーバン・コアは、この再開発エリアに合計で9カ所設置される予定です」

すり鉢状の谷地形のデメリットをうまく解消することで、縦にも横にも移動がしやすくなり、渋谷の街をフラットに回遊することができるようになる。さらに、地形の課題を解決するための整備はほかにも進められているようだ。

「ゲリラ豪雨対策としては、渋谷駅東口広場の地下に約4000トンの雨水を一時的に貯水できる貯留槽を整備しています。そして、東口地下広場という新しい広場も造られます。さらにハチ公前広場も現在の1.5倍ぐらいの広さになります。これによって、ハチ公前広場の滞留空間が狭くて危ないという問題を解消することができます」

渋谷駅東口側 地下工事断面図。すり鉢地形の最も低い位置に駅があるが、この貯留槽の整備によって、安全安心な街づくりが実現する

画像提供:渋谷駅街区土地区画整理施行事業共同施行者

さまざまな課題を解決するプロジェクトが進み、変貌を遂げていく渋谷。

100年に一度といわれる大規模な再開発は、混沌とした“渋谷らしさ”をも変えてしまうのだろうか。

渋谷ならではの魅力は、変わらない

携帯電話がそこまで普及していなかったころ、ハチ公前で待ち合わせして、なかなか会えないもどかしさを体験した人も多いだろう。そんな雑多な渋谷の思い出を想起させる場所はなくなってしまうのだろうか。

「ハチ公前広場は中央棟と西棟が開業する2027年度に合わせて整備が進められ、きれいになります。ハチ公像がどこに設置されるかはまだ分からないんです。ただ、いわゆるスペイン坂やのんべい横丁など、渋谷のストリートカルチャーが生まれたといわれるような雑多な場所は今回の開発の区画には入っていないので、そういった渋谷らしさというのは残ると思います。

われわれは渋谷の良いところをさらに活性化させるような開発を考えています。元々ベンチャー企業が生まれたり、文化が発祥したり、エネルギーが集まるのが渋谷なんですね。ですからわれわれとしても、若手の人たちが活躍できる場所を設けたり、もともと渋谷が持っているエンタテインメントの素質を伸ばせる場所をつくったり、クリエイティブな人がどんどん渋谷に来て、渋谷で活躍してもらって、渋谷から世界へ飛び立ってほしい。そういう強い思いを持って、活動を支援しているんです」

未来の渋谷を担う子どもたちも街づくりに参加

渋谷の街が刻々と変化していく中、1月末に渋谷ヒカリエで小学生向けの参加型イベント「渋谷の街をレゴ(R)ブロックでつくろう!」が渋谷駅前エリアマネジメント主催で開催された。日本人初のレゴ(R)認定プロビルダーの三井淳平氏と小学生で渋谷の街並みをレゴでつくるというものだ。

「このイベントは、未来の渋谷を担う小学生に、街づくりそのものに興味を持ってほしい、工事中の渋谷にマイナスイメージを持つことなく、他人事ではなく街づくりに参加してもらいたい、という気持ちで開催しました」

変わりつつある渋谷の街を切り取ったレゴ(R)ブロックの街並み。実際の街が変化したら、それに合わせてレゴの街並みも変えていく予定だそうだ。

プロビルダー・三井淳平氏の手元に注目する参加者

画像提供:渋谷駅前エリアマネジメント

真剣な表情でレゴ(R)ブロックを組み立てていく子供たち

画像提供:渋谷駅前エリアマネジメント

完成した作品は渋谷ヒカリエ11階に展示されている

画像提供:渋谷駅前エリアマネジメント

渋谷の未来を変える、再開発。

この大きなプロジェクトの広報を担当する亀田さんは、生き生きとした表情でインタビューに答えてくれた。

「(仕事が)楽しいです! 二十数年前に立ち上げられたこのプロジェクトで、開業のタイミングに立ち会える私たちはとてもラッキーですね。プレッシャーは大きいですが、実現できる環境は整っています。われわれが開発しているハードと渋谷で活躍するクリエイターの方たちのアイデアを合わせて面白い街をつくっていこうと考えています。当社はビル造りではなく街づくりをしている会社なので、ビルを建てて終わりということはありません。誰が来ても楽しい街。ここで何か楽しいことをして、快適だと感じられる、そういった街づくりをしているんです。“日本一訪れたい街、渋谷”。これを実現するための開発を進めていきます」

工事が進む渋谷では、きのう通れた道がきょうは通れないということもしばしばある。そんな刻々と変わる渋谷の街並みを楽しみながら、プロジェクトの成功を心待ちにしたい。

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