未来シティ予想図

横浜・みなとみらいエリアが“音楽の聖地”に!3施設の新たな建設計画進行中

横浜市が企業の連携を支援!平日も休日も人が集まる魅力的な街づくりを目指す

戦後の復興が遅れて東京のベッドタウン化を余儀なくされた横浜は、個性ある自立都市を目指すために1965(昭和40)年に「六大事業」を発表。そのうちの「都心部強化事業」の一つとして1981(昭和58)年に「みなとみらい21事業」に着手して37年が経過した今、企業集積都市、さらには観光都市としてもにぎわいを見せつつある同地区。2023年までに3つの音楽施設が新設されるこの地区の未来像について、横浜市都市整備局 都心再生部 みなとみらい21推進課長の白井正和氏に話を聞いた。

“観光・エンターテイメント”という方針が生んだ3つの音楽アリーナ計画

“みなとみらい21”と聞いて、どのような街を思い浮かべるだろうか──。

この地区は意外に広く、だからこそそのイメージは人それぞれ。今、観光とビジネスの両面で注目を集める同地区。まずはエリアの詳細・特性を聞いた。

「われわれが定義しているみなとみらい21と呼ばれるエリアは、スカイビルやそごうがある横浜駅東口地区のところから中央の横浜ランドマークタワーやパシフィコ横浜がある中央地区、横浜赤レンガ倉庫などがある橋を渡った島状の新港地区です」

横浜市都市整備局 都心再生部 みなとみらい21推進課の白井正和課長

この中央地区に元々あったパシフィコ横浜の「国立大ホール」「横浜みなとみらいホール」という公設ホールに加えて、今回新たに3つの音楽施設が建設される予定だという。これは何か意図があってのことなのだろうか。
※同市内の別エリア・新横浜には約1万7000人収容の「横浜アリーナ」もある

株式会社ケン・コーポレーションが2022年に完成させる予定の、2万人規模の音楽アリーナやホテルなどのイメージパース

画像提供:株式会社ケン・コーポレーション

ぴあ株式会社が2020年春に完成させる予定の1万人規模のコンサートアリーナ「ぴあMMアリーナ」(仮称)のイメージパース

画像提供:ぴあ株式会社

画像提供:ぴあ株式会社

赤い部分が建設予定地となる

画像提供:ぴあ株式会社

株式会社コーエーテクモゲームスが2020年に完成予定の新本社オフィス(収容規模約1600人)、ライブハウス型ホール(収容規模約2000人)、ホテルなどの複合施設のイメージパース

画像提供:三菱地所株式会社

「今回の音楽アリーナに限らず、基本的には地区の中の開発は市が発意・整備するのではなく、民間事業者さんに実施していただいています。ですから3つの音楽アリーナは、市が計画したものではないのです」

みなとみらい21地区の土地は、横浜市が持っている土地と民間事業者が持っている土地の2種類に分けられる。そして市が持っている土地については公募売却という形をとり、各事業者から提案を募って、より良い提案をした事業者を選んで開発を進めているという。

「地区の開発が進み、残りの土地が少なくなってきた中で、その残りの地区をどのように使用したら良いか事業者さんへのサウンディングなどを踏まえた結果、“観光・エンターテイメント”というテーマが世の中で求められているということが分かりました。そこで、2015年2月にみなとみらい21の比較的大きなエリアにおいて“観光・エンターテイメント”を軸とした街づくりを進めていく、という開発方針を初めて打ち出したのです。

実際は“観光・エンターテイメント”施設というのは、開発事業として事業性の良い部類には入らないらしく、オフィスなどを入れた方がリターンは良いようです。ただわれわれとしては、最後に残った大きな街区でそういった普通の開発はしたくないという思いがありました。『都市計画は百年の計』という言葉もあるように、やはり百年先を考えると、この街をただのビジネス街にしたくなかったのです」

そうして採択されたのが、ケン・コーポレーションの2万人規模の音楽アリーナだった。そして別の街区でも、ぴあの1万人規模の音楽アリーナ、コーエーテクモゲームスの2000人規模のライブハウス型ホールの建設が決まった。音楽に関する施設の提案が3つもあったことは、単なる偶然だったのだろうか。

モノ消費からコト消費への転換で音楽の街に

「われわれは“観光・エンターテイメント”という方針は定めたものの、音楽アリーナを集約したいとった具体的なことは打ち出しておりません。この方針のもと、民間事業者からアイデアや事業として成立するご提案をいただいた結果、音楽施設が3つできることになったのです。大規模な音楽アリーナが2つと、比較的小規模なライブハウスが1つということで、うまくすみ分けもされながら集約できたと思います」

驚くことに、今回決まった3つの音楽施設だけでなく、別の企業からも音楽施設の提案があったのだという。

「ご提案いただいた事業者さんが口をそろえて言われていたのは、消費者の行動特性が『モノ消費からコト消費に変わってきている』ということ。音楽業界は特にそれが端的に表れているようで、CDを買う人が減ってダウンロードする人が増え、さらには“ライブに行く”ことが、お客さんの好みとして増えてきているらしいのです。しかし、その傾向と相反するように、ライブ会場が足りていない、と。既存のライブ会場は老朽化し、建て替えや改修の時期に入ってしまっているところが多く、アーティストの方が困っているという話をよく聞きます。

このように、全国的にコンサートやライブができる会場が不足しているという課題があるということと、東京とは違った街の雰囲気を持っている横浜の特性を評価いただきました」

こうして、需要の高まりと共に複数の音楽施設ができることになったみなとみらい21地区。その結果、この街に新しい未来の姿が浮かび上がってきたようだ。

「今回進出していただく事業者さんからは、みなとみらい21を“音楽の聖地”にできるのではないかと言われています。地区の中にこれだけいろいろな規模の音楽施設が集約されてくると、従来から音楽イベントにも使われている『パシフィコ横浜』などの施設をはじめ、さまざまな施設との連携も考えられます。そうして音楽の聖地としての位置付けやブランドを作っていくことができるのではないかということです。これはわれわれ地区を所轄する部署としては、ありがたいご提案だと思っています」

新しい音楽アリーナができることで、これまでこの街に足を運ぶことがなかったような人も訪れることになるだろう。

「今回ライブハウスや音楽アリーナができることで、街を訪れる方の数や質もかなり変わってくるでしょう。そのことにより、新たなにぎわいが生まれてくることを期待しています。中央地区はオフィスが集積しているビジネス街で、平日の日中に人が多いエリアですが、今後は夜や休日も今まで以上にいろいろな方に多く訪れていただける、非常に大きなチャンスだと考えています。ライブの行き帰りに地区内でショッピングや観光スポットを回ってもらうなど、街全体の回遊性も上がると思っています」

今回、ライブハウス型ホールを新設するコーエーテクモゲームスは、本社ビルもこの地区に移設する予定だ。観光地としてだけではなく、ビジネス街としてもさらなる発展が期待されるみなとみらい21。その動向についても話を聞いた。

開発状況図

画像提供:横浜市都市整備局

ビジネス街としてもテーマ性のある企業集積を

「市としては、この地区に企業の本社機能や研究開発部門を集めたいと思っています。そこで、そのような機能をこの地区で構える企業に対して助成金や税の減免といった制度を用意していて、その成果が徐々に表れ始めています。

例えば、既に立地しているものでは、日産自動車グローバル本社や富士ゼロックス R&D(リサーチ&ディベロップメント)スクエアといった研究開発の拠点があります。それに資生堂の「グローバルイノベーションセンター」、こちらも研究開発施設ですね。『みなとみらいのような感度の高い地域で研究開発をすることに意味がある』とここに立地していただくことになりました。あとは村田製作所のイノベーションセンター進出も決まっていますし、LG電子の研究施設も建設中です。

今は自社だけで研究開発をするのではなく、他企業とディスカッションして新たなアイデアを生み出したり、共同で研究したりする流れやニーズがあるようです。せっかく複数の研究施設がこの地区に集まってきたので、各企業が連携し、触発し合うことができるよう、市ではプラットフォームのようなものを作ることで後押ししようと考えています。そうして横浜市の価値向上を目指し、“オフィスを構えるなら横浜”と言っていただけるように取り組んでいきたいですね」

アクセスの良さもみなとみらいに研究施設が集まる要因の一つ。最近の研究施設は郊外ではなく、都市部の方が人材確保に有利だという

画像提供:横浜市都市整備局

魅力あふれる街として新たなステージへ

「今までは空き地を埋めていくという段階でしたが、今後は『ここで何をやるのか』という街の魅力を考えるステージになっていきます。しかしこれは、われわれ行政だけでは担えない部分。民間事業者さんや街を訪れる人に何かをやってみようと発意していただくためには、その元になる街の魅力を高めていく必要があります。われわれとしてはそういった下地作りをコツコツと進めていって、この地区にブランド価値を見いだしていただけるように小さなことを積み上げていく、それだけです」

自治体としては柔らかいイメージを感じる横浜市。その中でも特に先進的なみなとみらい21地区では、地球環境に配慮した未来都市としての試みも進められている。

「みなとみらい21地区では地域冷暖房システムを地区全体で取り入れています。普通、冷暖房は個別のビルで設備を設置し管理しますが、この地区はエネルギープラントで集中的につくった熱を、道路下に設置したパイプラインで各ビルに供給しています。みなとみらい21熱供給株式会社という地域冷暖房の会社が桜木町駅の近くにあり、そのプラントで作った温熱と冷熱をそれぞれのビルの空調で使っていただくという取り決めになっています。地域冷暖房システムによって、熱効率が個別の空調と比べて15%有利になると言われています。

エネルギープラントからパイプラインを通してそれぞれのビルに温熱や冷熱が送られる

画像提供:横浜市都市整備局

この地域冷暖房自体はいろいろなところで実施されていますが、みなとみらい21地区の利用面積、利用している施設数は日本でも最大規模だと思います。また、市の温暖化対策統括本部という部署では「スマートシティ」にも取り組んでいます。横浜市は広いので、全域で実施するというのは難しい。そこで、先進的なみなとみらい地区でスマートシティを標榜(ひょうぼう)できるような取り組みを検討しているところです」
 
新しいことに挑戦する姿勢を見せる横浜市。複数の音楽施設や研究施設は、このみなとみらい21地区にあるからこそ共存し、連携して地域全体を盛り上げていくことができるのだろう。

平日も休日も、さまざまな人がそれぞれの時間を有意義に過ごす。みなとみらい21はそんな場所になるに違いない。

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