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空想未来研究所2.0

工事期間20京年超!?地球からつながるケタ違いの銀河鉄道計画

銀河鉄道999号が走る鉄道網の規模を考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「銀河鉄道の線路」。地球からアンドロメダ大星雲を目指した999号。実は見えない線路の上を走っていたことを知っていますか?

228万光年先までたどり着いた鉄道

『銀河鉄道999』は、主人公・星野哲郎が、謎の美女メーテルと一緒に宇宙を旅する物語である。まことにうらやましい。

また、少年が青春の旅に出て、さまざまな経験を重ね、大人になっていく物語でもある。もう、胸が熱くなる!

その目的地は、アンドロメダ銀河で、鉄郎とメーテルの旅の手段は、宇宙超特急999号。アッと驚くスケール感だ!

このように、いくつもの魅力を持つ『銀河鉄道999』だが、やはり筆者が語るべきは、科学的にビックリするそのスケール感であろう。

松本零士先生の原作マンガ(1977~81年)に登場する「銀河鉄道地図」によれば、地球からアンドロメダ大星雲までの距離は228万3856光年。それはあまりにも遠大な道のりだ。いったいどんな鉄道なのだろうか。

工事期間は20京9683兆年!?

銀河鉄道については、マンガの第1話で「この時代、全宇宙の空間鉄道網は無限にのびていた」と説明されていた。

また、第5話には「銀河鉄道の軌道は 宇宙空間に半永久的に敷設され 肉眼で見ることはできないが 列車がそれをはずれて走ることはない」ともある。

「無限」という表現からは具体的な総延長が分からないので、ここでは地球~アンドロメダ間に限定して考えよう。

現実の世界において、地球からアンドロメダ銀河までは230万光年とも、250万光年とも言われるが、劇中の設定では前述の通り228万3856光年。

これは「km」で表現すると、2160京5278兆kmである。これだけの鉄道を宇宙に敷設するとは、想像を絶する大工事だったに違いない。

例えば、東海道新幹線は1959年4月20日に着工して、1964年10月1日に開業した。全長515.4kmの工事に1899日かかっている。これと同じペースで228万3856光年の工事をしていったら、完成するのは20京9683兆年後。

この物語の舞台は2221年(テレビアニメ版第1話)であり、宇宙が始まったのは138億年前だから、とても間に合わない!

そこで228万3856光年の距離を1億工区に分割して、同時に敷設工事をしていったと考えると、100年で開通させるには…、うわっ、各工区で軌道を秒速68kmで延ばしていかなければならない。秒速68kmとはマッハ200!

さらに細かいことをいえば(実際には細かくないけど)、銀河も運動しているため、アンドロメダ銀河は、地球に向かって秒速300kmで近づいてきている。せっかく造った宇宙軌道を、それと同じペースで短くしなければならないのだ。秒速300kmとは、マッハ880である!

なぜ停車時間は、その星の1日間?

想像を絶する難工事を経て、無事に銀河鉄道網が敷設されたと考えよう。そこを走る999号の旅は、どのようなものになるのか。

アンドロメダ行き999号は、地球のメガロポリス駅から、1年に1本だけ、夜中の0時に発車する。

また、この列車は途中の星にたびたび停車する。停車時間は、その星の1日。最初に止まった火星では、地球時間で24.37226時間、次に止まった土星の衛星タイタンでは16日だった。

科学的に考えると、この「出発は夜中の0時」と「停車時間は、その星の1日」というルールがまことに興味深い。

地球は1日に1回の自転をしながら、1年に1回の公転をしている。自転の速度は赤道上で秒速460m、公転の速度は秒速29.89kmだ。そして回転の方向は、どちらも北極から見て反時計回り。すると、どうなるか?

上の図にあるように、真夜中の0時は、自転の向きと公転の向きが同じになる。この結果、地面は太陽に対して、秒速29.89km+秒速0.46km=秒速30.35kmで動いている。駅の線路も同じ速度で動いているから、999号はそのアシストを受けて宇宙に飛び立つことになる。

これに対して、真昼の12時は、自転の向きと公転の向きが正反対なので、地面の速度=999号をアシストする速度は、秒速29.89km-秒速0.46km=秒速29.43km。つまり、真夜中に発車した方が、エネルギーを節約できるわけだ。

これは、停車するときも同じである。太陽系外から地球にやって来る物体は、推進力を持っていなくても、太陽の重力に引かれて秒速42kmに加速される。自力で走る999号の速度は、これを超えているだろう。

そのスピードで走ってきた999号が地上に停止するには、地面と同じ速度にまでブレーキをかける必要がある。この場合も、地面がより速く動いている「真夜中」に停車する方が、減速の幅は少なくてすむ。

つまり、宇宙へ飛び立つにも、宇宙から帰ってくるにも、夜中の0時が最適。銀河鉄道999号はとってもエコな列車なのである。

同じように、途中の星でも、真夜中の0時に停車して、真夜中の0時に発車するのが、最も効率的だろう。停車時間が「その星の1日」なのは、まことに理にかなったダイヤなのだ。

窓を開けても大丈夫!?

宇宙には隕石が飛び交っているし、小惑星帯もある。危険な宇宙線も降り注ぐ。そんな宇宙を走るだけあって、銀河鉄道の軌道は透明なチューブによって守られているという。

鉄郎や車掌さんは、宇宙を走行中にしばしば窓やドアを開けていた。それができるのは、チューブの中に空気があるからだろう。

しかしこれ、人間にとっては快適だが、科学的には一大事だ。

宇宙を行くロケットはエンジンの噴射を停止しても、一定の速度で進み続けるが、それは宇宙に空気がないから。そのおかげで、エネルギーを全く消費せずに、どこでも飛んでいける。

このありがたい宇宙空間で、バリヤーを空気で満たしたら、進むのに莫大なエネルギーが必要だ。全然エコじゃない!

その空気の量も半端ではないだろう。マンガのコマで確認すると、透明なチューブは直径5mほどと見て取れる。

これで全長228万3856光年ということは、そこに詰められた空気は、地球に存在する空気の10万倍!銀河鉄道株式会社は、これほどの空気をいったいどこから…まさか、10万個の星から集めてきたのか!?そんなことをしたら、その星が滅亡してしまいます。

銀河鉄道株式会社には、改善を求めたい点もあるが、まぶたを閉じて思い浮かべていただきたい。さまざまな星を巡りながら、はるかアンドロメダを目指す宇宙列車。しかも、謎を漂わせる美女と一緒に。ああ、人間の想像力は、まことに素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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