空想未来研究所

なぜ浮く?なぜ動く?海上都市が成立する知られざる条件

海上に浮かぶ都市の構造を考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「海上都市」。『ONE PIECE』のサンジが生まれた故郷「ジェルマ」や海を動く町の元祖「ひょうたん島」がどんな国土なのかを考えてみました。

テクノロジーを駆使した悪の海上国家

現在、海上都市の建設が現実世界で計画されている。

海上に人工島を浮かべ、エネルギーは太陽光発電で賄うという。土地の狭さ、温暖化による海水面の上昇、エネルギー問題を解決する壮大な構想だ。

マンガやアニメの世界にも、海の都市が登場するが、どちらかというと「海底都市」の方が多いかもしれない。1万2000年前、一夜にして海没したアトランティス大陸やムー大陸では、一部の人々が海底に都市を築いて現代まで生き残った…。そういう設定の物語はたくさんある。

とはいえ、「海上都市」が登場する作品にも興味深いものはあって、例えば最近では『ONE PIECE』(1997年~)にも出てくる。

主要キャラクターの一人であるサンジの生まれ故郷「ジェルマ」がそれで、劇中では次のように説明されていた。

●「ジェルマ」とは 世界でも唯一無二の国土を持たない海遊国家の名前である
●何十隻もの船がそれぞれ移動し――また集結することで国の形を成している

劇中の「移動し、集結する船」は、巨大なカタツムリの殻に、正方形の甲板が載った帆船である。単独航行するときは、カタツムリが顔を出して帆が上げられ、合体するときは、カタツムリは殻に引っ込み、殻と殻、甲板と甲板が連結される。

ジェルマは科学が発達し、中でもバイオテクノロジーが目覚ましく進んだ国だから、この船は、カタツムリと風を動力とするハイブリッドシップなのかもしれない。

それにしても、船が離合集散して国土になるとは、一体どんな国なのだろう。

海上国家に地下資源はない!

マンガのコマを見ると、個々の船はかなり大きい。描かれた人間の大きさと比較すれば、甲板の高さは10mを超え、足場となる正方形の一辺は100mぐらいありそうだ。

その場合、甲板の面積は1ha(ヘクタール)。世界最大の軍用艦船・ニミッツ級原子力空母の飛行甲板は1.8haだから、その半分強。かなり大きな船である。

そして「何十隻もの」というのが「50隻」のことだとしたら、王国の面積は50ha。国土としてはかなり狭いが、現実の世界のバチカン市国は、総面積が44haだから、それよりも広い。国として十分に成立するはずだ。

では、このような環境の国で、人々はどうやって暮らしているのだろうか。

実は、ジェルマの基幹産業は「戦争」である。国民のほとんどが男で、兵士だという。彼らは猛烈に強く、2年間続いた戦争を4時間で終わらせたこともある。

この軍事力を背景に、戦争をしている国があれば、金を払った方を勝たせてやる。こうして、国が回っているらしい。

ジェルマの場合、国土の実体が船だから、農業はできないだろう。すると、食べ物も衣服の材料も手に入らない。また、自然の水源は雨水しかなく、山林もないので、船を修理するための木材も、燃料もない。当然のことながら、地下資源が一切ない。

海上都市を「国家」として運営しようと思ったら、食べ物や水や生活資材をどうやって入手するか…という問題が極めて重大なのだ。軍事力を基盤とすることは非常に危ういと思うが、天然資源のない海上国家としてやっていくためには、これも一つの方法なのかもしれない。

ひょうたん島はなぜ浮かぶ?

もう一つ、注目したい海上国家は、グッと古い作品になるが、かつて大ヒットした人形劇『ひょっこりひょうたん島』(1964~69年)である。

「あの島、国家なの?」と驚く人もいるかもしれないが、ドン・ガバチョが「初代大統領」に就任していた。大統領がいる以上、やはり国家といえる(のではないかなあ)。

見たことのない読者も多いだろうから、どんな物語か説明しよう。

ある国に、陸地と橋でつながった「ひょうたん島」という島があった。サンデー先生が5人の子供たちとピクニックに訪れると、ひょうたん火山が爆発。橋が壊れて、陸から切り離されたひょうたん島は、波をチャプチャプかき分けて漂流を始める。なんと、ひょうたん島は、海に浮かんでいたのだ!そこへ、海賊のトラヒゲ、政治家のドン・ガバチョ、指名手配犯のマシンガン・ダンディ、ライオンという名前のライオンなどがやって来て、ひょうたん島は大騒ぎ…という話が楽しく続く。

海に浮かんだ島の火山が爆発するとは、実に不思議である。火山の爆発は、地下からマグマが供給されることによって起こるからだ。

そもそも島が浮かぶことがモーレツに不思議だ。その理由は、劇中で「内部が空洞になっているから」と説明されていたが、どんな空洞があれば島が浮かぶのだろうか。

ひょうたん島は、その名の通り“ひょうたんの形”をしていて、差し渡しは8000mだという。また、写真で測ると、ひょうたん火山の標高は2900m。かなりもっこりした島なのだ。

物語の終盤で、誰かがひょうたん島に穴を開けたため、空気が漏れて沈み始めるという騒ぎがあった。こういうことになるのは、内部の空洞に底がなく、おわんを伏せたような形になっていた場合である。これは、かなり不安定だ。

島が浮かぶ理由を簡単実験

試しに、台所の洗いおけに水をためて、陶器のおわんを逆さにして浮かべてみてほしい。

おわんはたちまちひっくり返る。これは、以下の【図1】のように、おわんの重心が海面より上にあり、浮力は海面下にある空気に働くからだ。持ち上げる力が、重心より低い位置に働くため、バランスが崩れやすい。

では、どうすれば安定するのか。方法は2つある。

上の実験で、おわんの底を下にすると、船のように安定して浮かぶ。つまり、ひょうたん島も、裏返しになったほうが浮かびやすい!

もちろん、実態はそうではないから、第2の方法。おわんを傾けながら沈めて、中の空気を出してもらいたい。出す空気の量が適切なら、おわんは水面ギリギリに浮かぶはずだ。以下の【図2】のように、おわんが水没することで、重心が海面下の空気より低くる結果、安定するのだ。

ひょうたん島も、同じようになっているのではないだろうか。つまり、海面から下に岩盤が伸びていて、重心が海面下の空気より低くなり、それで安定して浮かんでいる…。

その場合、岩盤はどんな深さにまで伸びているのだろう。最大標高2900mのひょうたん島の平均標高を500mと考えよう。岩盤の厚さが100m、密度が通常の岩石と同じ1立方メートルあたり2.7tとすれば、水面下に伸びる岩盤は1880m!

これは大変だ。陸地の周りは大陸棚という深さ200mほどの海底になっている。その周りは大陸斜面という斜面になっていて、平均水深3800mの大洋底に続いている。

海面下1880mまで岩盤が伸びるひょうたん島は、大陸斜面にぶつかって陸地に近づけない。永遠に海を漂うばかり…。でも劇中では、ひょうたん島はあちこちの陸地に立ち寄っていた。一体どうなっていたのか、もうさっぱり分かりません。

ハッキリしていたのは、ひょうたん島の人々が楽しそうに暮らしていたことである。仲間と一緒に、海上都市(村?)でのんびり生きていくのは、確かに幸せかも。人間の想像力は素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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