空想未来研究所

水を凍らせる超能力が奪った膨大な熱量の行き先

アニメ&特撮で描かれた氷雪系超能力について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「氷雪系超能力」。ヒーロー、怪獣、モンスターなど、さまざまなキャラクターが駆使してきた必殺技が、どれほどの“超”能力だったのか考えてみました。

空想世界のマスト能力

この冬は、全国的に大雪に見舞われ、大変なことになっておりますなあ。

こんなとき、絶対に出現してほしくないのが、アニメや特撮番組など空想科学の世界で活躍する「氷雪系」のキャラクターたちだ。

古くは『ウルトラQ』(1966年)で、ペギラが真夏の東京をシベリアのように凍らせた! 映画『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年)では、バルゴンが冷凍液で大阪を凍らせた!

平成に入っても、氷雪系のキャラは続々と登場している。

『ポケットモンスター』(1996年~)には、フリーザー、オニゴーリ、レジアイス、バニプッチなど、氷や雪を操るポケモンがめじろ押し。『ONE PIECE』(1997年~)の元海軍大将・青キジは、見渡す限りの大海原を凍らせる。

『BLEACH』(2001~2016年)の日番谷冬獅郎は、空中の水蒸気から氷の竜などを出現させて敵を攻撃し、『戦国BASARA』(2005年~)の鶴姫は、地面に自分が進める幅の氷の道を作り、スケートのように滑りながら弓矢を放ちまくるし、『TIGER & BUNNY』(2011年)のブルーローズは、港の海水を凍らせて巨大な氷の腕を出現させ、豪華客船にぶつかりそうな飛行船をキャッチ、『妖怪ウォッチ』(2013年~)のふぶき姫は、真夏に体から雪を降らせて他の妖怪を凍りつかせる、などなど。他にもたくさんいる。

真冬のさなか、こんなヒトたちが出てきたら、もうどうしていいんだか…。

今回は、彼らがどれほどすごいことをやっているのかを考えよう。

氷雪系能力の大分類

氷雪系のキャラクターは、大きく2つのグループに分類できる。

第1グループ:水を凍らせて氷にする(青キジ、ブルーローズなど)
第2グループ:空気中の水蒸気から氷や雪を作る(日番谷冬獅郎、ふぶき姫など)

中でも日番谷は、「俺の武器は、この大気に在る全ての水だ」と、氷を出現させる方法を明言していた。

両グループがやっていることは、エネルギーの観点から見ると大きく違う。

例えば、20℃の水をマイナス10℃の氷にするためには、水1kgあたり、下の図にあるそれぞれの熱エネルギー(kcal)を奪う必要がある。

注意したいのは、「0℃の水を0℃の氷にする」にも、熱を奪わなければならないことだ。これが「融解熱」で、水の場合は上記のとおり1kgあたり80kcalとなる。

そして、水蒸気から氷を作るには、これに加えて「20℃の水蒸気を20℃の水にする」という過程が必要になる。このとき奪わねばならない「気化熱」は、1㎏あたりなんと540kcalだ。

つまり、20℃の水蒸気をマイナス10℃の氷にするには、「水を氷にするための105kcal」に「水蒸気を水にするための540kcal」を加えた645kcalの熱を奪わなければならない。

水は気化熱が極めて大きいため、スタートとゴールの温度が同じでも、水蒸気を氷にするには、水を氷にするときの6倍以上もの熱エネルギーを奪わなければならないということだ。

凍結能力が一番高いのは?

では、「水蒸気から」の日番谷やふぶき姫の方が、「水から」の青キジやブルーローズより、凍結能力は高いのだろうか。

必ずしもそうとは言えない。先ほど示したのは氷1kgあたりの熱エネルギーだからだ。

例えば、日番谷が作った巨大な氷の牢獄・千年氷牢(せんねんひょうろう)の場合、作中の日番谷本人の身長と比較すると、それは直径18m、高さ25mほどもある。

円筒形だとすれば、氷の重量は7200t。すると、7200tの水蒸気から、46億kcalの熱エネルギーを奪った計算になる。

それに対して青キジは、ヒエヒエの実の能力を駆使した技「氷河時代(アイス・エイジ)」で見渡す限りの海を凍らせた。

人間の目の高さからは、5km彼方までの海が見渡せるので、ここでは青キジが半径5kmの海域を、水深10mまで凍らせたとしよう。その場合、凍らせた水は7億9000万t。奪った熱エネルギーは、なんと82兆kcal。

つまり青キジは、水1kgあたりから奪った熱は日番谷の6分の1に過ぎないが、作った氷が10万倍も多いため、奪った熱は2万倍ほども上回る。氷の量が違えば、こうした大逆転も起こるわけだ。

奪った熱はどこへいく?

だが、どのような形や能力にせよ、氷雪系の人々には、決して避けては通れない問題がある。それは、奪った熱をどうするのかということ。

冷蔵庫でいえば側面や背面から熱を庫外に捨てているし、クーラーでいえば室外機からの熱風として屋外に捨てている。「冷やす」とは「熱を奪う」ことなので、奪った熱は何らかの方法で処理しなければならないのだ。

氷雪系のキャラたちは、この問題をどうやって解決しているのだろう?

自分の体にためておくと体温が上がり、氷雪系の技も出せなくなってしまうはずだから、科学的に考えれば、どこかに捨てているのではないだろうか。すると、周囲は大迷惑である。青キジが82兆kcalの熱を東京に捨てたりしたら、気温は16℃も上がってしまう。真夏なら、50℃近くになる!

地球のどこに捨てても、環境を大きく破壊するので、ぜひとも宇宙に捨ててもらいたい。

この問題について、解決方法を明らかにしている人たちがいる。

『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』(1989~1996年)の氷炎将軍・フレイザードと、『僕のヒーローアカデミア』(2014年~)の轟 焦凍(とどろきしょうと)だ。フレイザードは、魔王軍司令ハドラーが生み出した魔物で、左半身が炎をまとった石、右半身が氷の岩でできている。轟 焦凍は、炎で戦う父親と氷を操る母親の間に生まれた。劇中で“個性”と呼ばれる超能力を持っており、右手で凍らせ、左手で燃やす。

フレイザードも、轟 焦凍も、熱の収支がハッキリしている。冷やす方=熱を奪う方の手から奪った熱を、反対側の手から放出する仕組みになっているのだろう。まさに、クーラーの室内機と室外機の関係である。

轟 焦凍は3600tほどの氷を作ったことがあるが、このとき空気中から奪った23億kcalの熱で攻撃すれば、爆薬2300t分の破壊力となる。科学的にも極めてナットクできる話なのだ。

自然界で、雪や氷は生物の活動を大きく制限する。それらを自在に操ることができれば、戦闘においては大いに有利だろう。科学的には「奪った熱をどうするか」という問題も発生するが、その解決法を示したキャラもいるのだから、人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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