空想未来研究所2.0

キカイダーは笛の音で遠隔操作!ヒーローたちの通信手段進化論

アニメや特撮で描かれた通信手段について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、このたび2年目となってイラストがよりコミカルに進化。Ver.2.0として、さらなる空想に突き進みます!今回取り上げるテーマは「通信手段」。特撮ヒーローたちが、交信や変身のため使っていた驚異的な通信方法が、どれだけ超科学だったのかを考えてみました。

ヒーローたちの通信手段も進化する

情報通信の世界では、いよいよ5G(第5世代)の実現化が見えてきた。3Gのガラケーから、4Gのスマホへの進歩を思えば、どんなことが可能になるか期待は高まる。

空想の世界でも、情報伝達の手段は大きく進歩してきた。

「ウルトラマン」(1966~67年)では、科学特捜隊隊員は胸のバッジで交信していたが、送れるのは音声だけだった。続く「ウルトラセブン」(1967~68年)では、腕時計型の通信機で映像も送れるようになった。「ビデオシーバー」という名前で、子供のころは憧れたものだが、今や実現しているのだから驚く。

「攻殻機動隊」(劇場用アニメ映画/1995年)で描かれた未来は、現実を引き離している。そこでは、脳に電子デバイスを接続する「電脳化技術」によって、多くの人間が脳から直接インターネットにアクセスできるようになっている。

現実の情報伝達も日進月歩だが、そんな一歩先を進んできた空想の世界を振り返り、未来を占ってみよう。

笛で操れるヒーロー!

空想の世界では、音がしばしば通信手段として用いられてきた。

例えば、手塚治虫先生の原作を実写化した古典的名作「マグマ大使」(1966~67年)。そこでは、笛を鳴らす回数によって、違うヒーローが駆けつけた。1回鳴らすと子供のガムが、2回鳴らすと奥さんのモルが、3回鳴らすと家族の長・マグマ大使本人がやって来る!非常にシンプルなシステムだ。

同じ笛の音を使いながら、さらにメロディを奏でて情報を伝えたのが、「人造人間キカイダー」(1972年)の悪の天才科学者、プロフェッサー・ギル。

ロボットで世界征服を狙う彼は、ロボットを凶暴にする笛を吹いた。主人公のジロー(キカイダー)もロボットなのだが、不完全ではあるものの良心回路が内蔵されているため、ギルが怪しい旋律を奏でると、凶暴化の命令と良心がせめぎ合い、苦痛にさいなまれる。

ギルは笛の音でロボットを操作できるわけだが、これはかなり驚きだ。

音や電波は、他の条件が同じならば、周波数が大きければ大きいほど、同じ時間で大量の情報が送れる。例えば、スマホに使われるマイクロ波は0.7~3.5GHz(ギガヘルツ)。ギガは10億のことだから、7億~35億Hzということだ。

これに対して、実在の楽器であるバスクラリネットが出せる音は80~800Hz。ギルの笛がこれと同じだとしたら、送れる情報量はスマホの数千万分の1でしかない。この情報量でロボットを遠隔操作できるのは、送信するのが「凶暴化」という単純な情報だからであろう。

家族と電話しているうちに地球が滅びる

現実世界同様、空想の世界でも通信には電波が使われることが多い。電波が伝わる速度は、光と同じ秒速30万km。音の88万倍で、これより速く伝わるものは、この宇宙には存在しない。だがこの電波も、通信手段としては困る場合がある。

「宇宙戦艦ヤマト」(1974~75年)では、ヤマトが冥王星を出発した後、これ以上は電波が届かなくなるという理由で、乗組員が家族とテレビ電話で話して、別れを告げた。

地球から冥王星までの平均距離は60億km。秒速30万kmを誇る電波でも、片道2万秒=5時間30分かかる距離だ。

クルーの1人、森雪の「お父さん、元気でね」という言葉が地球に届くまで5時間30分。父親の「雪、元気でな」がヤマトに届くのに、また5時間30分。会話の1往復に11時間もかかってしまうが、もちろん劇中では普通に会話していた。

この「届くのに時間がかかる」という問題を、豪快にクリアしていたのが、ウルトラマンシリーズの「ウルトラサイン」だ。300万光年離れたウルトラの星から、リアルタイムで地球に届く。宇宙最速の電波でも300万光年かかるはずなのに!

このウルトラサイン、情報が届くと空にウルトラの文字が輝く。その点はメールに似ているが、直後に消えてしまうという問題があった。

「ウルトラマンタロウ」(1973~74年)で、タロウに変身する東光太郎が、近所の少年の自転車の練習に付き合っていて、ウルトラサインを見逃すという大失態を犯した。その内容は、「宇宙怪獣タイラントが、ウルトラ兄弟を次々に倒して地球に向かっている」という超緊急重大情報!

メールが便利なのは、履歴が残るからだ。ウルトラの星は、ウルトラサインを保存できる方向で改善してもらいたい。

失敗できない超高精度のエネルギー送受信

空想の世界では、情報だけでなく、エネルギーも伝達される。

宇宙をテーマにした「仮面ライダーフォーゼ」(2011~12年)では、変身に必要なエネルギーを宇宙から送っていた。

天ノ川学園高校2年の朔田流星(さくたりゅうせい)は、変身の必要が生じると、地球を周回する人工衛星M-BUS(エムバス)にいるタチバナに連絡する。タチバナが「コズミックエナジー」を流星の変身ベルトに送ることで、流星は仮面ライダーメテオに変身できるのだ。

宇宙から地上にエネルギーを送るという構想は、宇宙太陽光発電として現実世界にもある。宇宙で太陽光発電を行い、電力をマイクロ波に変えて地上に送る。地上ではそれをアンテナで受けて、電力に戻す。

両者の大きな違いは、宇宙太陽光発電では巨大なアンテナ(100万kWで10km四方)に向けてマイクロ波を送るのに対し、仮面ライダーメテオの変身では、腰のベルトにピンポイントで当てなければならないことだ。

その困難さは、ベルトの大きさと、M-BUSの周回高度にもよる。

ベルトの幅は40cm、コズミックエナジーのビームの幅は60cmほど。「ビームがベルトをかすれば変身可能」という最もユルイ前提だとしても、許される誤差は「ベルトの幅の半分+ビームの幅の半分=50cm」ということになる。

M-BUSの周回高度は不明だが、周回速度は時速2万7850.8kmと分かっている。ここから周回高度を計算すると、地上281km。つまり、東京から名古屋に置かれた直径1mの的を狙って、確実に命中させる精度が求められる。もし外れたら、変身に失敗し、ゾディアーツ(怪人)にボコられる!

空想の世界では、さまざまな手段で、情報やエネルギーが送られてきた。現実の世界の情報&エネルギー伝達の未来を指し示すものが、その中にあるに違いない。今日の夢は、いつか常識になる。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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