空想未来研究所2.0

夢のマシン地底戦車が実現しない理由が判明!ドリルの先にある悲しい結末

特撮で描かれた地底戦車について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「地底戦車」。巨大ドリルで地中を掘り進んでいく夢のマシンだが、現実世界でなかなか実現できない理由について考えてみました。

夢のマシン!ドリルで地底を掘り進む地底戦車

北海道から九州まで数時間で行けて、ロボットが活躍し、一人一人が電話にもカメラにもテレビにもなる小型コンピューターを持つ。かつて「未来」として夢想されたさまざまなことが、今や現実になっている。

だが、これほど科学技術が躍進しても、いまだ実現に至らない「未来」がある。それは、地底戦車だ。

巨大なドリルで岩盤を砕きながら、地底をガンガン突き進む。「サンダーバード」(1966~1967年)のジェット・モグラ、「ウルトラセブン」(1967~1968年)のマグマライザー、「ウルトラマンタロウ」(1973~1974年)のベルミダーⅡ世など、昭和の特撮には地底戦車が多数登場した。

しかも、スピードがハンパではない。特撮映画「海底軍艦」(1963年)に登場した轟天号は時速20km、マグマライザーは時速25km、ペルミダーⅡ世は時速60km、ジェット・モグラに至っては時速198km(時速123マイル)!

現実世界でトンネルを掘るシールドマシン(掘削機)は、世界最速のもので時速3m。トンネルを1時間に3mずつ延ばしていくのだから驚くべき技術だが、地底戦車に比べると圧倒的に遅い。

このスバラシイ地底戦車は、なぜ実現できないのだろう。実現を阻む重大な問題があるのだろうか?

地底戦車の行く手を阻む硬い壁

現実の世界のシールドマシンは、円筒形をした車体の前面に「バイト」という切削工具が放射状に付いている。これを回転させて、以下の作業を同時進行で進めている。

掘削:バイトで岩盤を円筒形に掘削する
残土の搬出:土砂を内部に落とし込み、ベルトコンベヤーなどで地上に運び出す
壁面の構築:穴の内側に「セグメント」と呼ばれる部材を固定してトンネルの壁を造る。セグメントを後方に押す力の反作用で、前面を岩盤に押し付ける

こうして断面が自分自身と同じサイズ・形状のトンネルを建設し、工事が終わると、円筒形の外殻はトンネルの一部になる。このためシールドマシンは、建設するトンネルに合わせてオーダーメイドで作られている。

これに対して、空想の世界の地底戦車は、とがったドリルを回して単独で地底を掘り進む。シールドマシンとあまりに違うが、これを実際にやったら大変なことになる。

ウルトラ警備隊のマグマライザーは、全長24m、全幅11m、重量180t。この巨大な車体の前方に円すい形のドリルが付いているのだが、ドリルの直径が車体の半分くらいしかない。ドリルで掘った穴に、車体が入らない!

サンダーバードのジェット・モグラは、「ドリル+車体」の下にキャタピラが付いているが、このキャタピラごと潜るわけではない。サンダーバード2号で現場に運ばれると、キャタピラの部分から外れて「ドリル+車体」だけが潜っていくのだ。

そのドリルと車体は、直径がほぼ同じ。だったら地面に潜っていけそうな気もするが、これはこれで新たな問題に直面する。

スタート時はキャタピラが車体を固定しているが、地中潜行が始まって車体がキャタピラから離れると、車体を固定するものはなくなってしまう。その一方で、ドリルは地面に食い込んで、ガッチリ固定される。つまり、ドリルだけが地面に潜った状態で、車体の方は空中で激しく逆回転!

回転の速度は、車体の半径が小さいほど速くなる。地底潜行を可能にするかに見えた車体の小ささが、ここではアダになる。乗務員の安否がヒジョ~に気掛かりだ。

地底戦車は莫大な出力が必要!

では、これらの問題が解決されたとしたら、地底戦車は実現できるのだろうか。

問題はエネルギーである。ここでは、マグマライザー(全長24m、全幅11m、重量180t)を例に考えよう。

全幅11mの車体が潜るには、少なくとも直径11mの穴を掘る必要があるだろう。

これで時速25km=秒速6.9mを出すには、毎秒660m3の岩石を破壊する必要がある。岩石の密度は1m3あたり2.7tほどなので、1秒間に1800t、自重の10倍もの岩石を砕かなければならない。

これに必要な出力は、18万kW。史上最大の戦艦、基準排水量6万4000tの「大和」でさえ、出力は15万馬力=11万kWだったのに。

しかもこれは、岩石を破砕するための力学的なエネルギー。「セメント工場などにある粉砕機では、消費した電気エネルギーのうち、粉砕のエネルギーに変わるのは、0.1~3%である」(『粉体の科学-最先端技術を支える「粉」と「粒」』神保元二/講談社より抜粋・要約)。物を砕くには、多大なエネルギーが必要なのだ。

それでも、地底戦車は岩石を粉末にするわけではないから、ここでは消費したエネルギーのうち、10%が岩の破砕に使われると考えよう。その場合、マグマライザーのエンジンには、先ほど求めた18万kWの10倍、すなわち180万kWが要求される。これはもう大型の火力発電プラントを超える。

地底戦車には驚異の大パワーが要求されるということだが、それより問題は、180万kWのうち、使われなかった180万kW-18万kW=162万kWは、どうなるのかということだ。

答えは「熱に変わる」。そして地下では、熱の逃げ場はどこにもない。

この結果、180tのマグマライザーが鉄でできているとしたら、温度は1秒に20℃ずつ上がっていく。地上の気温が20℃なら、1秒後に40℃、2秒後に60℃、4秒後に100℃となり、1分16秒後に鉄の融点1536℃に達し、マグマライザーはドロドロに溶けてしまう……!

地底戦車とは、地獄行きの溶鉱炉なのだ。

現実となった数々の「未来」も、かつては夢物語であり、絵空事だった。それを科学という名の「努力」で少しずつ実現に近づけてきたのが、われら人類の歴史だ。その歴史を推し進めてきた原動力は、常に科学に先行する夢である。中でも地底戦車は、はるかなる夢。実現困難な夢を見る力こそが、未来を豊かに切り開いていくだろう。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

※外環全通を目指して東京の地下40mで活躍する日本最大規模のシールドマシンについてはこちら

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