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空想未来研究所2.0

1秒でフルマラソン×2に匹敵!ケンシロウが放つ百裂拳が本当にすごい理由

『北斗の拳』の北斗百裂拳について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「パンチ」。名作マンガ『北斗の拳』ケンシロウの必殺技「北斗百裂拳」。一瞬で拳の連打をあびせる奥義だが、実際どれだけのエネルギーを秘めているのか考えてみました。

奇跡の技術、北斗神拳のすごさ

人間の生活は、さまざまな技術の積み重ねの上に成り立っている。

火や道具を使うことはもちろん、言葉や文字も技術だし、ものづくり、運輸、発電・送電、コンピューター、携帯電話など、無数の技術がわれわれを支えている。

さて、マンガやアニメにも技術を描いた作品は数多いが、筆者はここで『北斗の拳』について考えたい。「どこに技術との接点があるんだ!?」と思われるかもしれないが、あの作品は、“一つの「技術」が作品の根幹となっていた”と思うのだ。

その技術とは、北斗神拳。

北斗神拳は、1800年にわたって一子相伝で受け継がれてきた暗殺拳。全身に“七百八ある経絡秘孔(けいらくひこう)”を突くことで、体を内部から破壊する。その一方で、病気の人々を救うこともできる。

記憶に残るのは、その伝承者であるケンシロウの「あたたたたたた!」と、その拳で経絡秘孔を突いた相手に対する「お前はすでに死んでいる」という宣告だ。

「何を……」などと言いかけた相手の言葉は「ひでぶっ!」といった断末魔の声に変わり、体が大爆発。あまりにオソロシイ必殺拳であった。

物語は、この驚異の技術を軸に展開した。その焦点は、一子相伝。どれほど優れた使い手が何人現れようと、その奥義を受け継げるのはたった一人なのだ。

このおきてゆえに、ケンシロウはかつて共に修業し、兄と慕ったラオウとも決着をつけなければならなくなった……。

では、一つの技術として見たとき、北斗神拳はどんな存在なのだろうか。

パンチでなぜ体が爆発する?

経絡秘孔を突くと、体が内部から爆発する。

あまりに不思議な現象だが、こういうことが起きるとしたら、どんなメカニズムが考えられるだろう。

中国医学では、全身を「経脈」と「絡脈」が走り、体の調和を保っているとされる。両者を合わせて「経絡」と呼び、それが皮膚の近くを通る場所が「経穴(ツボ)」だ。

解剖学的には経絡の存在は確認できていないが、ツボへの刺激が体調改善に効果のあることは、西洋医学でも認められていて、神経や血管へ刺激によるものと考えられている。このツボが、北斗神拳においては「経絡秘孔」と呼ばれているわけである。

体調をよくするツボがあるのだから、おそらく体調を悪化させるツボもあるのだろう。とはいえ、いくら何でも、体が爆発することがあるのか。

細胞が破裂することは、実は現実にも起こる。

よく知られているのは、赤血球の「溶血」で、赤血球を真水に浸すと、水を吸収して膨満し、ついには破裂に至る。

その原因は、浸透圧。細胞膜の両側に濃度の差があると、濃度を同じにしようとして、薄い方から濃い方へ水が移動する現象だ。キュウリに塩をかけるとシナシナになり、レタスを水につけるパリッとするのも、浸透圧のためである。

浸透圧による膨満や破裂は、赤血球以外の動物細胞でも起こる。

すると! ある経絡秘孔を突くことによって、神経が「脳に水分が足りない」という誤った情報を送り、全身の細胞がそれに応えたらどうなるか。全身の水分が頭蓋骨内に集まって、脳細胞がその水を吸って膨満し、ついに破裂に至って「あべし!」ということに……。

なるかどうかは今後の研究を待ちたいが、いずれにしても、北斗神拳が恐るべき技術であることは間違いない。

北斗百裂拳の破壊力に迫る

この北斗神拳を振るい、ケンシロウは暴虐の輩を数多く葬ってきた。最も有名な技は「北斗百裂拳」であろう。

ケンシロウが「あたたたたたたたたたたたたたたた!」と叫びつつ連打するとき、彼の腕は何本にも見える!

これは、おそらく残像のためだろう。

人間の目は、それまで見えていたものが視界から消えても、その像がしばらく網膜に残る。動いているものは見えにくく、止まっているものは見えやすいから、相手に当たる瞬間に静止する腕が、いくつもの残像を残すのではないだろうか。

このように考えると、オソロシイ話になる。たくさんの腕が同時に見えるからには、初めの残像が消える前に、いくつものパンチを放ったということになる!

具体的に計算してみよう。

人間の網膜に残像が残る時間は0.1秒前後といわれる。ケンシロウが初めて「あたたたた」を披露した場面で、マンガの1コマに描かれたケンシロウの腕は11本。

するとケンシロウは、わずか0.1秒で11発のパンチを放っていることになる。1秒に110発というハイペースであり、マシンガン(毎分1000発=毎秒17発)をはるかにしのぐ!

ケンシロウは身長185cm、体重100kg。パンチの動作で拳が動く距離を65cmと仮定すると、敵の体に当たる瞬間のパンチのスピードは、時速515km!

現実のボクサーのストレートは時速40km前後であり、ケンシロウのパンチはその13倍も速い。破壊力はパンチの速度の2乗に比例するから、体重100kgのボクサーに全力で殴られたときの170倍!

こんなパンチ、経絡秘孔を突かなくても、一発でオシマイだろうに、これを連打するうえ、ことごとく秘孔を突くのだろうから、もうどうしていいんだか。

時間を計れるアニメ版で測定すると、同じシーンで、ケンシロウは北斗百裂拳を3秒にわたって放ち続けていた。すると相手は、即死確実のパンチで330穴もの秘孔を突かれたことになる!

げに恐ろしきは北斗神拳。

北斗神拳の消費エネルギー、半端ないって

これほどの破壊力となると、ケンシロウもかなりのエネルギーを消費するはずだ。

ケンシロウの体格から計算すると、パンチ1発で消費するエネルギーは75kcal(キロカロリー)。これを1秒で110発も放つのだから、わずか1秒で8250kcalも消費する!

ジョギングでは、1km走るごとに、体重1kgあたり1kcalを消費するから、体重100kgのケンシロウの場合、82.5km走ったのと同じエネルギーを消費したわけである。

これによって、燃焼したと思われる体脂肪は、900g。なんて効果抜群な北斗百裂拳ダイエット!

などという計算をするうちに、思いついた。北斗百裂拳の打てないわれわれも、パンチの連打によって、それなりのダイエットができるはずだ。それを求める公式は、次の通り。

※係数は、より正確には0.0000181です

どうかお役立てください。

などという副産物を生むほどに、北斗神拳は奥深い。驚くのが、これほどの技術が一子相伝で受け継がれてきたことだ。一般の技術のように、広くたくさんの人に受け継がれていたら、いったいどうなっていたことか。想像を絶するオソロシイ世の中になっていたかも……。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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