エネルキーワード

あらゆる生物資源が燃料に!バイオマス発電に注目集まる

エネルキーワード第7回「バイオマス発電」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第7回は「バイオマス発電」。再生可能エネルギーの一つであるバイオマス発電は、日本の総発電量のわずか1.6%に過ぎません。今後、伸びるためのカギは何か?そのメリットと課題を踏まえて探ってもらいました。

バイオマスとは

さて今回は、またまた聞き慣れない「バイオマス発電」なるものについて説明しましょう。

バイオマス(Biomass)とは、再生可能エネルギーの一つで、動植物などから生まれた生物資源の総称です(石炭や石油などの化石燃料を除く)。木質系なら、森林から切り出された丸太、枝葉、木材加工の残廃材や建築廃材などで、これらを燃焼しやすいようにチップに成形して使います。(図1)

「バイオマス発電」は、これらの生物資源を「直接燃焼」したり「ガス化」したりして発電します。技術開発が進んだ現在では、さまざまな生物資源が有効活用されています。

(図1)木質チップ

その種類は多岐にわたります。木質系、農業・畜産・水産系、建築廃材系があり、さらにそれらも乾燥系、湿潤系などと分類されます。(図2)

燃えるものなら何でも燃料として使えるのですからこんな効率がいいことはありませんね。

(図2)バイオマスの分類

出典:経済産業省 再生可能エネルギーの種類と特徴

バイオマス発電の種類

次に「バイオマス発電」にどのような種類があるのか見てみましょう。

1.直接燃焼方式
バイオマス燃料を直接燃焼して蒸気タービンを回す方式で、木くずや間伐材(森林の育成のために間引いた木材)、可燃性ごみ、精製した廃油などを燃料として使います。木くずなどは「木質ペレット」(図3)という小さい固形状の燃焼物に、間伐材などは粉砕して「木質チップ」等に加工することで、輸送しやすくするとともに燃焼効率を高め、エネルギー変換効率を高める。

(図3)木質ペレット

2.熱分解ガス化方式
燃料を熱処理することでガス化し、ガスタービンを使って燃焼させることで発電を行う方式で、1と同様の材料を用います。
 
3.生物化学的ガス化方式
燃料を発酵させて生物化学的にガスを発生させ、それを燃焼させてガスタービンで発電する方式です。家畜のふん尿や生ごみ、下水汚泥などを原料としたメタンなどのバイオガスを使用します。

日本のバイオマス発電量

ではわが国の総発電量のうち、バイオマス発電の占める割合はどのくらいなのでしょうか?それが意外と小さく、 2015年度でわずか1.6%しかありません。まだまだ存在感は小さいですね。

世界では自然エネルギー(再生可能エネルギー)の比率は日本より大きく、全発電量の約24%を占めています。(図5)

そのうちバイオマス発電は2%ですが、伸び率を見ると2005年からの10年で2倍以上増加しています。

(図4)2015年度のエネルギーミックス(発電量の比率)

出所:資源エネルギー庁電力調査統計等よりISEP作成

日本国内の自然エネルギーおよび原子力の発電量の推移 (出所:ISP調査)

出典:環境エネルギー政策研究所 自然エネルギー白書2016

(図5)世界での自然エネルギーによる発電量

出典:環境エネルギー政策研究所 自然エネルギー白書2016

(図6)世界のバイオマス発電の発電量

日本のバイオマス発電所

まずは私も数年前取材したことのある、神奈川県川崎市にある、川崎バイオマス発電株式会社(国内初の都市型バイオマス発電所:2011年2月運転開始)です。(図7)

(図7)川崎バイオマス発電株式会社

出典:川崎バイオマス発電会社HP

木質の廃材をチップ化したものと、購入した木製チップ製品で、年間18万tの木質チップを使用し、現在発電出力3万3000kWを誇ります。この電力量は一般家庭で言えば約3万8000世帯が1年間使用する量に相当するそうです。
 
次から次へとトラックで運び込まれる建設廃材にはくぎや金具がそのまま付いていたりしますが、木質燃料リサイクル工場(図8)の中でいくつかの工程を経て取り除かれ、最後は木材だけに仕分けされ木質チップに成形されます。1日に約200tの廃材が粉砕されています。

(図8)木質燃料リサイクル工場

出典:経済産業省資源エネルギー庁 再生可能エネルギー導入事例

そして、チップヤード(図9)には最大6000t(約10日分)のチップ燃料を保管できます。圧巻ですね。

(図9)チップヤード

出典:川崎バイオマス発電会社HP

これ以外にも、

 
【飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所(出力181.5kW)
国内初FIT制度を利用した小型高効率木質ペレットガス化熱電併給。
運転開始:2017年4月

出典:株式会社洸陽電気 ニュースリリース

【ミツウロコ岩国発電所(出力1万500kW )】
山口県岩国市。わが国初の木質チップ専焼の1万kW級発電所。
運転開始:2006年1月

出典:ミツウロコグリーンパワーHP

【エフオン日田(出力1万2000kW)】
大分県日田市にある木質バイオマス発電所。
運転開始:2006年11月

出典:株式会社エフオンHP

【くずまき高原牧場 畜ふんバイオマスシステム(出力37kW)】
くずまき高原牧場内の牛の排せつ物を発酵させてメタンガスを抽出し、発電ならびに熱回収を行うシステム。
運転開始:2003年

左の白い丸い建物がガスホルダー、右の赤い建物がメタン発酵槽

出典:経済産業省資源エネルギー庁 岩手県葛巻町の取り組み「エネルギー自給率100%」のまちづくりを目指す」

【横浜市環境創造局北部汚泥資源化センター(出力 ガスエンジン920kW×4基 1100kW×1基)】
下水処理過程で発生する消化ガスを燃料にして、ガスエンジンで電気を発電。
運転開始:1987年

【コープこうべ 廃棄物処理施設(出力60kW)】
直営の食品工場で生産する豆腐、麺、パンなどの製造過程で生ずる生ゴミ5tと排水処理施設から排出される汚泥1tをメタンガスに変換し、電気や熱エネルギーとして工場内で再利用。
運転開始:2003年12月

そのほか、
【吾妻木質バイオマス発電所】
【別海バイオガス発電所】
【糸魚川バイオマス発電所】などが国内にあります。

メリットと今後の課題

「バイオマス発電」のメリットには以下の4点が挙げられます。
 
1.地球温暖化対策
2.循環型社会の構築
3.農山漁村の活性化
4.地域環境の改善
 
木質バイオマス燃料を発電所で燃焼させることでCO2が排出されますが、このCO2はもともと大気中から樹木が吸収していた炭素が大気中に戻るだけなので、大気中のCO2が増加するものではありません。この考え方を「カーボンニュートラル」といい、地球温暖化防止に資するものとされています。
 
課題としては
 
1.資源が広い地域に分散しているため、収集・運搬・管理にコストがかかる
2.小規模分散型の設備になりがち
3.需要が急増し、木質チップの供給が不足しつつある
4.未利用木材と製材・合板用丸太との競合
5.材料運搬時にCO2を排出する
6.固定価格買取制度の煩雑な手続き。(例:燃料の出所証明書。燃料種類ごとの発電利用分量報告書)
 
などが挙げられます。私としては2の「小規模分散型になりがちである」、という点に着目したいと思います。確かに「バイオマス発電」は、発電量において、火力発電所や原子力発電所などの大規模発電所と比較すべくもありません。しかし、地域に密着し、町の地域熱供給システムとしての利活用が可能だという点も忘れてはなりません。

(図10)株式会社北海道熱供給公社

出典:一般社団法人日本熱供給事業協会HP

例えば札幌市では、熱供給事業を営む地域としては全国的にも広域な106haで熱供給を展開しています。分散型熱併給(CHP: combined heat and power)とも言いますが、地域でエネルギーを自給自足できる、優れたシステムだと感じています。

海外に比べまだまだ日本での普及には課題も多いようですが、太陽光や風力と違って24時間稼働が可能な再生可能エネルギーである「バイオマス発電」がもっと注目されてもいいのではないでしょうか。

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