エネルキーワード

地上に太陽を!「核融合炉」が開くエネルギー新時代

エネルキーワード 第13回「核融合」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第13回は「核融合」。太陽のエネルギー放射と同じ原理である「核融合」反応。安全性は?実現性は?現在の状況をまとめてもらいました。

トップ写真:ITER(イーター)模式図

出典:ITER機構HP

「人工の太陽」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「核融合」という技術がそれを可能にします。
 
「核融合」反応とは、太陽がエネルギーを放射しているのと同じ原理です。1930年代にアメリカの物理学者らが発見しました。原子核同士が衝突し融合して別の原子核ができる反応からエネルギーを取り出します。具体的には、
 
「水素の同位体である重水素と三重水素(トリチウム)の原子核を融合させると、ヘリウムと中性子ができます。このとき、反応前の重水素と三重水素の重さの合計より、反応後にできたヘリウムと中性子の重さの合計の方が軽くなり、この軽くなった分のエネルギーが放出される」
 
のです(図1)。

(図1)核融合の原理

上記、本文内引用と図1の出典:文部科学省HP「核融合について」

現在運転されている原子炉は、ウランやプルトニウムなどの重い原子核が中性子を吸収して軽い原子核に分裂する際に発生するエネルギーを取り出して発電していますが、その核分裂とは全く別のものです。

この「核融合」反応では、少量の燃料から膨大なエネルギーが生まれます。たった1グラムの重水素−三重水素燃料からタンクローリー1台分の石油(約8トン)に相当するエネルギーを得ることができるといいますから、そのエネルギーがいかに膨大か分かるでしょう。
 
さらに「核融合」エネルギーは以下の特徴を持っています。
 
①燃料が枯渇しない
燃料となる重水素と三重水素は海中に豊富に存在するため、地域的な偏在がなく、資源の枯渇の恐れがありません。

②安全性が高い
核融合反応は暴走せず、核分裂と比べて安全対策が比較的容易です。

③環境にやさしい
発電の過程で、地球温暖化の原因となるCO2を発生しません。また、高レベル放射性廃棄物も発生しません。

出典:文部科学省HP「核融合について」

この「核融合」技術の研究の歴史は古く、発端は今から32年前1985年の米ソ首脳会談にさかのぼります。その後、「核融合」エネルギー研究の国際協力構想が持ち上がり、国際熱核融合実験炉(ITER:以下、「イーター」)を研究・開発するための「イーター協定」(注1)が2006年11月に署名、2007年10月24日に発効しました。 本格稼働を18年後の2035年12月に目指しています。そう遠い未来の話ではないのです。
 
さて、そのイーター計画、「実験炉」はフランスで建設中です。地中海に面した都市マルセイユから北西に車で小1時間(約70㎞)、カダラッシュという町がその場所です(写真1、2)。機構には、日米欧、ロシア、中国、韓国、インドの7カ国・地域が参加しており、日本人職員も駐在しています。現場の作業員は1500人にも及びます。

(写真1) ITER(イーター)建設現場(仏:カダラッシュ)

出典:ITER機構HP

(写真2) ITER(イーター)建設現場(仏:カダラッシュ)

出典:ITER機構HP

この壮大なプロジェクト、本格稼働までの総事業費は約200億ユーロ(約2兆6000億円:1ユーロ=130円で計算)と巨額で、人件費高騰などから当初計画より50億ユーロ(約6500億円)近く膨らみました。日本の負担は建設段階で9.1%、運転期には13%となる予定です。
 
現在建設しているのはあくまで「実験炉」、発電はしません。まずは核融合エネルギー利用の科学的・技術的実証を行い、その後、「原型炉」で発電実証段階になります(図2)。

(図2) ITER(イーター)模式図

出典:文部科学省HP「ITER計画の概要」

着々と進んでいるかに見えるイーター計画ですが、向かい風が吹き始めました。英国の欧州連合(EU)離脱や、米トランプ政権の単独主義によるリスクです。特にトランプ政権は、2018年度予算案でイーター関連経費を前年から半分近く減らし衝撃が走りました。イーター計画の将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。
 
そして、日本です。文部科学省の核融合科学技術委員会は今年7月14日、「原型炉」を国内に建設するかどうかを2030年代に政府に判断を求める基本指針案をまとめました。
 
確かに夢の技術ではありますが、私たちにとって未知の部分も多いだけに、政府は国民の不安や疑問に丁寧に答える必要があるでしょう。将来、エネルギーをどう確保するかは、私たちの子供や孫の世代にとって重要な問題です。だからこそ、現役世代の私たちが関心を持ち続けることが今、求められています。

(注1)イーター協定  正式名称は「イーター事業の共同による実施のためのイーター国際核融合エネルギー機構の設立に関する協定」

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