エネルキーワード

夢の国産天然ガス?メタンハイドレートの可能性

エネルキーワード 第16回「メタンハイドレート」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第16回は「メタンハイドレート」。自国の領海内にある新たなエネルギー源として期待を集める「燃える氷」、研究開発の現状とその可能性に迫りました。

TOP写真:第二渥美海丘におけるメタンガス生産確認実験

出典:JOGMEC

埋蔵量12.6兆立方メートル、日本人が使う天然ガスの100年分以上の資源が海底に眠っている。そんな話を耳にしたことはありませんか?それが「メタンハイドレート」です。(「メタンハイドレー」ではありません、念のため)
 
さてその「メタンハイドレート(methane hydrate)」とは、メタン(天然ガスの主成分)と水が低温かつ高圧の状態で結晶化した物質です。新たなエネルギー源として期待を集めています。火を近づけると燃えるため、「燃える氷」とも呼ばれています。実際は氷ではないのですが見た目からその呼び名が付きました。

写真:メタンハイドレート

出典:経済産業省

固体であるメタンハイドレート1立方メートルから、メタンガスがなんと約160立方メートルも取り出せることから(0℃、1気圧)、「夢の国産天然ガス資源」とも呼ばれています。
 
加えてメタンハイドレートは、燃やしたときのCO2排出量が石炭や石油よりも約30%少なく、次世代のエネルギー資源として期待されているのです。
 
既存の火力発電所の隣にメタンハイドレートをガスに変換する施設を持つだけで、そのまま天然ガスを燃やす火力発電所ができるとも考えられています。

メタンハイドレートをめぐる日本の現状

そのメタンハイドレートの分布について、経済産業省を中心に、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)などが調査を続けています。
 
その方法は海中で音波を発生させ、その反射で海底の地層の状態を推定するというものです。この音波によって「BSR(海底疑似反射面)」という特殊な面を見つけることができます。この反射面の上にメタンハイドレートは存在しており、日本の近海でBSRを検出できた海域は12万平方キロメートルにも及びます。少し古いデータですが以下の図は2009年の調査で分かったBSRの分布です。

図:メタンハイドレートの存在可能性を示すBSR(海底疑似反射面)分布状況

出典:JOGMEC

実際に、2013年3月には渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)で、地球深部探査船「ちきゅう」を用いて第1回海洋産出試験を実施し、世界で初めて海底下のメタンハイドレートを分解して天然ガスを取り出す成果を挙げました。

写真:地球深部探査船「ちきゅう」

出典:国立研究開発法人海洋研究開発機構HP

そして、2回目の試験が、今年(2017年)4~6月に行われました。経済産業省は「一定の成果を得られた」としています。しかし、2本の井戸で生産量の増加を明確に確認できず、生産技術を確立する上で課題を残しました。

図:第2回メタンハイドレート海洋産出試験実施地点

出典:経済産業省「第2回メタンハイドレート海洋産出試験に着手」

今後の見通しと課題

日本のエネルギー自給率はわずか7%です(下図)。これはOECD加盟34カ国中、最低水準です。また、エネルギー国内供給に占める、天然ガス・石炭・石油などのいわゆる化石燃料の依存度は実に94.7%に上ります(2014年度)。そのほとんどは海外からの輸入です。

図:日本の1次エネルギー国内供給構成及び自給率の推移

出典:経済産業省「エネルギー白書2017」

これは、東日本大震災以降の火力発電の増加のためで、日本はCO2排出量削減の国際公約(2030 年目標:2013 年比 26%削減)を守ることが難しくなっています。
 
政府は2030年までに、再生可能エネルギーの比率を22~24%にまで引き上げる目標を掲げていますが(下図)、そのハードルは決して低くはありません。自国の領海内にある資源、メタンハイドレートは貴重な存在といえます。

図:2030年の電源構成

出典:経済産業省「長期エネルギー需給見通し」(2017年7月)

ところで、日本には2つのタイプのメタンハイドレートが存在しています。

日本海側には海底の表面や真下に「表層型」と呼ばれる塊状態のものがあります。一方、太平洋側(主に南海トラフ)には海底下の地層の中に砂と混じり合った「砂層型」と呼ばれるものがあります。これは海底から100~400mほどのところに水平的に広がって分布すると確認されました。「表層型」と「砂層型」は分けて研究開発されています。

図:メタンハイドレートの種類「表層型」「砂層型」

出典:JOGMEC

その「砂層型」に関して政府は、平成30年(2018年)ごろまでに商業化に向けた技術を整備し、同年後半には民間が主導するプロジェクトが開始されることを目標にしています。表層型については、継続して調査・研究開発していく方針です。
 
一方、課題としては以下の4点を挙げています。
 
①安定生産技術の確立
②資源量把握(大規模濃集帯の存在の確認)
③生産システム開発
④商業化に向けた実証および商業生産
 
これらはどれも時間がかかるものです。期待の商業化について政府は、早くても2030年代前半になると予測しており、まだまだ先になりそうです。

いずれにしてもエネルギーをほとんど輸入に頼っている日本にとって、メタンハイドレートは重要な資源であることは間違いありません。引き続き、開発の進捗(しんちょく)を見守りたいと思います。

図:メタンハイドレートの商業化に向けた工程表 

出典:経済産業省資源エネルギー庁「表層型メタンハイドレート資源調査及び回収技術開発調査研究について」

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