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「ソーラーシェアリング」で日本の農業活性化?

エネルキーワード 第17回「ソーラーシェアリング」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第17回は「ソーラーシェアリング」。農業を営みながら同時に太陽光を利用して発電も行う効率の良い仕組み、知っておいて損はないかもしれません。

写真:「ソーラーシェアリング」の例(パネルの隙間から太陽光が降り注ぐ様子)

出典:一般社団法人ソーラーシェアリング協会HP

農業しながら電気を売る!?

「ソーラーシェアリング」と初めて聞いたとき、「えっ?『太陽』を『シェア』するってどういうこと?」って思ってしまいました。ちょっとピンとこない人もいるかもしれませんが、「ソーラー」と聞いて、すぐに「太陽光発電」をイメージした人はかなりのエネルギー通です。
 
さてその「ソーラーシェアリング」とは、営農を継続しながら、農地の上部空間に太陽光発電設備を設置することです。「営農型発電」ともいいます。つまり、農業を営みながら同時に太陽光を利用して発電もやってしまおうという効率の良い仕組みなのです。
 
震災後、さまざまな再生可能エネルギーが注目されていますが、この「ソーラーシェアリング」は、技術的には太陽光パネルを農地の上に設置するだけなので比較的コストが安いため、導入が進んでいます。

写真:ソーラーシェアリング施工例(俯瞰図)

出典:神奈川県公式HP  

写真:下から見たソーラーシェアリング施工例

出典:神奈川県公式HP  

ところで、農地の上にソーラーパネルを設置したら、日光が遮られて作物が育たないのでは、と心配になりませんか?しかし、これが目からうろこ。
 
実は農作物の栽培には日光が降り注げば降り注ぐほどいいとは限らないのです。植物の成長を促すのに必要な光の強さには限界があり、それを「光飽和点(ひかりほうわてん)」といいます。「ソーラーシェアリング」にはその「光飽和点」が低い作物が栽培に向いているといわれています。
 
具体的にはお茶、稲、サトイモ、サツマイモ、キャベツ、ハクサイ、レタス、ミツバ、ブドウ、モモ、ナシ、イチゴ、ネギ、アスパラ、ナス、エンドウ豆、ミョウガなどです。かなりの種類がありますね。

ソーラーシェアリングの現状

現在、「ソーラーシェアリング」は、主に農林水産省が関わり、全国各地に展開しています。農水省による営農型発電設備を設置するための「農地一時転用許可」は、平成25年度には97件だったのが、26年度には304件、27年度には374件と年々増加傾向にあります。(農水省調べ
 
「農地一時転用許可」とは、「ソーラーシェアリング」を始めるにあたり必要な手続きの一つです。発電設備を設置するには、農地法に基づきこの手続きが必要です。ちなみに、小型の風力発電も同じく一時転用許可の対象となっています。
 
この農地一時転用許可は期限があり、最長3年間です。問題がなければ再許可されます。当初3年間は、年に1回の報告が義務付けられ、収量や品質が確保されているか、営農の適切な継続が確実か、周辺の営農上支障がないか等がチェックされます。その上で、再許可の判断が下されるのですが、設備が原因で2割以上減収となった場合などは許可が下りない可能性もあります。ただし、天災等の事情には配慮されます。
 
農地転用を許可する権利を持っている人は、基本的に、「都道府県知事又は指定市町村の長」となっています。「ソーラーシェアリング」を始めるにはまず、「農業委員会」(農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村に設置されている)に問い合わせ、手続き申請を行わねばなりません。
 
また、太陽光発電事業を開始するにあたり、固定価格買い取り制度を利用して売電する場合は、経済産業省や電力会社への申請手続き等が必要となります。

図:ソーラーシェアリングを実施するまでの流れ(神奈川県HP)

具体的事例と今後の展望

「ソーラーシェアリング」は、営農と発電をどう両立するかがカギとなります。発電した電気を売ることで収入を得られるので、収入の安定化につながります。収入が安定すれば若者が農業に従事しやすくなることが期待されます。
 
千葉県いすみ市でブルーベリーやイチジクなどを栽培している「いすみ農園」は、建設費約1500万円で発電設備を建設、平成27年3月に運転を開始しました。

写真:いすみ農園ソーラーシェアリング(ブルーベリー+発電49.5kW+スマートターン機能搭載)千葉県いすみ市

出典:いすみ自然エネルギー推進協議会HP YouTubeより

設備の支柱が除草作業の邪魔になるといったデメリットもありますが、それより日影ができたことで真夏の収穫作業が楽になったり、乾燥が抑えられ散水作業が以前より少なくなったりする、といったメリットが上回ったそうです。
 
また何といっても年間の発電収入約200万円というのは天候などに収入が左右される農家にとって魅力でしょう。近隣の農家の皆さんも関心を寄せているとのことです。
 
また、兵庫県宝塚市のケースでは、市民農園に「ソーラーシェアリング」を導入しました。売電収入の一部を農園利用料割引として市民に還元することで、市民農園としても空き区画の発生を防いでいます。(市民農園使用料は年・5000円/1区画)「ソーラーシェアリング」は市民協働による農地の利用促進にもつながっているのです。

写真:宝塚すみれ発電所第4号

出典:非営利型株式会社宝塚すみれ発電HP

このように、「ソーラーシェアリング」は、新規就農者支援や荒廃農地解消に役立つと期待されています。
 
一方、設備の設置費用、設置後もメンテナンスが必要なため、ある程度コストがかかります。また設備により、空間的に農作業に多少の支障が出ることがあります。
 
また、集団的にまとまりのある農地の真ん中などで設備が設置される場合、農地集積、圃場(ほじょう)整備(農地の区画整理、農道の整備のこと)等による規模拡大、農業用排水施設等の管理に支障が生じるおそれがあります。
 
いずれにしても、日本の農業には効率化の波が押し寄せてきています。海外の安い農産物に日本の農産物はとても太刀打ちできません。また、就農者の高齢化も進んでいます。このままでは日本の農業は衰退の一途です。
 
そうした中での、「ソーラーシェアリング」。私たちの暮らしに必要不可欠な電気を売ることで収入を安定させることができるこの考え方は、農業の経営改革の一つの指標となるでしょう。さまざまな規制などで「ソーラーシェアリング」の可能性を摘まないように強く願います。

参考:農林水産省「営農型発電について」

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