エネルキーワード

あらためて問われる「グリーンな電力」の意味

エネルキーワード 第20回「グリーン電力」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第20回は「グリーン電力」。温室効果ガスなどの発生が極めて少ないため、環境への負荷が小さく地球に優しいエネルギーといえるグリーン電力。その普及の壁とは何か、一緒に考えてみましょう。

TOP画像:Pixbay

「グリーン電力」とは、風力、太陽光、水力、地熱などのいわゆる「自然エネルギー」によって発電された電力のことをいいます。「自然エネルギー」は「再生可能エネルギー(再エネ)」とか、「新エネルギー」などと呼ばれることもあります。
 
石油や石炭などの化石燃料による発電では地球温暖化の原因となる温室効果ガスや有害ガスが発生します。一方、自然エネルギーによる「グリーン発電」は、温室効果ガスなどの発生が極めて少ないため、環境への負荷が小さく地球に優しいエネルギーといえます。

グリーン電力のコスト

現在日本は化石燃料のほとんどを輸入に頼っているため、「グリーン電力」の必要性は今後ますます高まってくるものと思われます。しかし、その際問題になるのは、「グリーン電力」の発電設備の建設コストです。

米国の「国立再生可能エネルギー研究所(NREL)」が公開した発電技術ごとの設備投資の調査「2016 Annual Technology Baseline(ATB)」によると、2015年の数値では

メガソーラー(大規模太陽光発電)/1942ドル/kW
陸上風力発電/1723ドル~2186ドル/kW
天然ガスコンバインドサイクル(天然ガスCC)/1056ドル/kW

となっており、「グリーン発電」のコストが火力発電より大幅に高くなっています。
しかし、本調査によると2030年の時点では、

メガソーラー/1041ドル/kW
陸上風力発電/1567ドル~2578ドル/kW
天然ガスCC/983ドル/kW

2050年になると、

メガソーラー/852ドル/kW
陸上風力/1558ドル~2618ドル/kW
天然ガスCC/913ドル/kW

となりメガソーラーは天然ガスCCとほぼ同レベルとなると予測しています。いずれにしても「グリーン電力」のコスト競争力が火力発電並みになるにはまだまだ時間がかかりそうです。

グリーン電力証書とは?

従来の発電よりもコストがかかるグリーン電力発電業者と、グリーン電力を使いたいという企業のニーズが一致することに着目しグリーン電力を支えるシステムとして生まれたのが「グリーン電力証書」と呼ばれるものです。
 
「グリーン電力」は「電気そのものの価値」の他に、省エネルギーやCO2排出抑制といった「環境価値」を持った電力と考えることができます。
 
その「環境価値」を「電気そのもの」と切り離して、「グリーン電力証書」という形で企業などが購入し、通常使っている電気と組み合わせることで、購入者は「自然エネルギーによって発電されたグリーン電力」を使用している、とみなすことができます(図1)。

(図1)「環境価値」と「電気そのもの」

出典:環境省

「グリーン電力証書」発行のシステム(注1)は複雑なのでまずは下の(図2)を見てください。

(図2)グリーン電力証書の仕組み

出典:グリーンエネルギー認証センター

(注1)グリーン電力証書発行のプロセス・購入者は、グリーン電力証書発行事業者とグリーン電力証書発行に関する契約をします。 ・事業者はグリーンエネルギー認証センターの設備認定を得た後、グリーンエネルギー発電事業者に発電を委託します。 ・グリーンエネルギー発電事業者は、発電の実績を事業者に報告し、事業者は発電事業者より自然エネルギーの環境付加価値を購入します。 ・事業者は発電実績をとりまとめ、グリーンエネルギー認証センターに、電力量の申請を行い認証を受けます。 ・事業者は、認証された電力量を契約料に応じて購入者に配分し、「グリーン電力証書」を発行します。 ・購入者は「グリーン電力証書」の費用を支払います。

参考:日本自然エネルギー株式会社

国内のグリーン電力証書の発行は、16年前の2001年度に開始されました。その後、年々認証量が上がり、2007年度から2008年度にかけて2.7倍になりましたが、2011年度以降若干減少しています。

背景には2012年の再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)開始があります。証書発行以外にも民間企業が「グリーン電力」事業に参入するインセンティブが生まれたからだといえそうです(図3)。

(図3)電源種別グリーン電力証書認証量推移

出典:自然エネルギー白書2016(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)

グリーン電力の分類と販売先

グリーン電力制度により認証された電力量を発電種別に見ると、バイオマス発電および風力発電が全体の約 9 割を占めています(図4)。

(図4)電源種別累計グリーン電力証書認証量(2001年から2013年)

出典:平成26年度グリーンエネルギー証書制度基盤整備事業 (グリーンエネルギー証書に関する市場動向等に関する調査) 報告書 (三菱総合研究所 環境・エネルギー研究本部) グリーン電力証書の販売状況については、2006 年~2013 年の累計で約 7 割が企業に販売されています。

(図5)購入事業者別累計グリーン電力証書(2001~2013 年度)

出典:平成26年度グリーンエネルギー証書制度基盤整備事業 (グリーンエネルギー証書に関する市場動向等に関する調査) 報告書 (三菱総合研究所 環境・エネルギー研究本部)

グリーン電力を使う企業のメリットとしては、商品を開発する際、環境対策に取り組み、グリーン電力を使っているとアピールすることで、環境意識の高い消費者から高い評価を得ることができることが挙げられます。
 
また事業者にとっては、グリーン電力証書を販売することにより、その利益を次の発電所建設の投資に使うことができます。こうしたグリーン電力を使って製造した製品であることを示す一種の証明として、「グリーンエネルギーマーク」があります(図6)。

(図6)グリーンエネルギーマーク

出典:国税庁

企業がマークの使用料を負担し、グリーン発電を支援する仕組みです。発電された電力は地元の電力会社に販売され、製品を製造する企業には対象製品に「グリーンエネルギーマーク」を記載できる権利が付与されます。
 
有名な商品では、飲料メーカーのアサヒビールから発売されているアサヒスーパードライがあります。アサヒビールはこの取り組みを2009年から開始し、2016年までのグリーン電力を日本で一番多く活用している商品として企業の大きなアピールポイントにしています(写真1)。

(写真1)アサヒスーパードライの缶に印刷されたグリーンエネルギーマーク

出典:アサヒビールHP

環境保全への取り組みをアピールすることにより企業イメージの向上を図るとともに、その趣旨に賛同する消費者の購買を期待することができるというわけです。
 
グリーン電力証書の購入は国内の自然エネルギーの発電事業の支援につながる仕組みであることは間違いありません。しかし、FIT(固定価格買取制度)が開始されてから、「グリーン電力」の定義があらためて問われることになりました。
 
しかし、「自然エネルギーによって発電されたグリーン電力」を使用していることを証明してくれる「グリーン電力証書」の必要性はすぐになくなるものではないでしょう。
 
FITの下、太陽光バブルが起きて買取価格の見直しなどが行われている現状で、「グリーン電力証書」の持つ意味をあらためて考えるタイミングに来ているといえそうです。

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