理系女子の履歴書

新たなモノを生み出して社会貢献できる研究者に

東京工業大学 環境・社会理工学院 融合理工学系 地球環境共創コース 修士課程2年 中山美織【後編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第4回は、東京工業大学の修士課程2年の中山美織さん。後編では、理系女子のプライベートから将来の夢にまで話を広げる。モデル活動や一人旅を通して、自分の知らない世界と接してきた彼女。歩むべき人生の方向が大きく変わっていったという。

【前編】海洋環境問題に対策を!サンゴ礁生態系の普遍的なモデルをつくりたい

モデル活動と一人旅は自分への投資

サンゴ礁生物群集をテーマに、海洋環境や沿岸生態系について研究するクールな理系女子、中山美織さん。もっぱら研究、勉学に勤しむため普段はインドア派なものの、プライベートになれば一転、アクティブ。そんな彼女の個性をひもとくキーワードは「新しいことへの挑戦」。というのも、自分の将来への投資に対して、とても積極的なのだ。

「大学1年生の終わりごろから、友人の誘いでモデルの仕事を始めました。勉強などに追われて時間がない理系女子の中では珍しいかもしれません。でも、中途半端にアルバイトに時間を割くよりも、モデルならいろんな分野の人と出会うことができて、世界が広がるかもしれないと思ったんです」

中山さんのもくろみは見事に功を奏した。ファッションショーや写真作品のモデル、ひいては司会業まで幅広く仕事をこなす中で他分野の人と多く出会い、自分の視野が大きく広がるきっかけになったという。学業との両立が大変だったことは容易に想像できるが、それでもモデルを続けたことは、彼女の人生において貴重な経験となったようだ。

「死ぬこと以外はすべて経験値になるので、いつ死んでしまってもいいように、やりたいことをやっています」

また、大学2年生の春休みには「おいしい抹茶を飲みたい」と思い立ち、突然、京都へ一人旅に出かけたこともある。それが引き金となり、日本各地を一人で旅することが趣味になったのだとか。

「モデルの活動も続けていましたが、学業がメインという姿勢は貫いていました。だから、課題や研究で忙しくなると、やっぱり部屋にこもる毎日。そうしていると、どうしても視野が狭くなってしまうので、一区切りついたら旅へ出るようになったんです。旅先ではよくゲストハウスに泊まっていたんですが、日本のゲストハウスに日本人が泊まることなんてほぼないそうで、周りは外国人ばかり。初めて身近に外国の方を感じることができて、とても楽しかったですね」

休日は全く外に出ず、インドアな日もあるそう。そんなときにはアニメや漫画を見て過ごすのだとか

環境意識の低さを痛感させられたカナダでの1年間

そうして徐々に自分の世界を広げてきた中山さん。大学4年生に進級する前には海外へと興味が向く。1年間休学し、ワーキングホリデーを利用してカナダ・バンクーバーに飛んだ。

「もともと3年生が終わったら一度休学しようと決めていたんです。日本中を旅するか、海外へ行くか悩んでいて。でも、どうせなら英語を話せるようにもなりたいのでカナダへ行くことを決めました。最初の20週間は語学学校に通って、最低限の英語を話せるようになったところで仕事を探していたら、運良く1軒目に受けたコーヒーショップに採用されたんです。そこからは自分で稼いだお金で家賃などを払って生活していました」

カナダで生活しながら、アメリカなどにも旅をしたそう

そんな生活の中で、日本との違いを感じたのが、環境への意識の差だった。

「働いていたコーヒーショップでは、食器を洗うのに洗剤を使わず、高温高圧の食洗機を使っていたんです。カナダではかなり有名なチェーン店だったので、全店舗でそれをやっていると思うと、環境負荷は圧倒的に低いですよね。カナダの友人との会話には環境問題が話題に上ることが当たり前にありますし、エコバッグは持っていて当然の国です。日本と比べると意識が高く見えますが、むしろ逆で、日本は先進国なのに意識が低過ぎる。そこにショックを受けたんです」

その気付きがきっかけで環境に興味を持ち、現在の東京工業大学の修士課程に進むことになった。しかし興味を持ったからといって、これまで専攻してきた分野から切り替えるのは容易なことではない。それでも諦めなかったのは、中山さんの負けず嫌いな性格がゆえ。

「そのころの自分はまだ、新しいことを学べる立場にありました。大学院に進むことを家族も応援してくれていましたし、それならチャレンジしたいじゃないですか」

理想の彼氏像を尋ねてみると、「自分と似た分野の人は絶対嫌です!自分のバカさが露呈すると、悔しいじゃないですか(笑)。それに違う分野の人の方が、会話をしていて楽しいですしね」

自分が新しく生み出したモノで世の中に貢献したい

少しさかのぼって高校生のころ、幅広い道に進めるようにと自分の進路を選択したことが、ここでようやく実を結ぶことになる。というのも、高校2年生時に文理選択をするとき、文系か理系かだけでなく、理系の中でも生物と物理のどちらを選択するかも決めなければいけなった。

「生物を選択すると、薬学系や医学系に進むことがほとんどで、より選択肢が広がるのは物理だったんです。物理は正直苦手だったんですが、物理を選択していて良かったと今になって思います」

忙しい毎日でも精力的に動き続ける彼女。「後悔はしたくないですからね」と夕日に未来を見つめる姿が印象的だった

物理は苦手だからと生物を選択していたら、今の中山さんの人生は少し違った形になっていたかもしれない。

「新しいところに足を踏み入れて行動しないと、何も始まらないんです」。これまでの歩みを振り返り、中山さんは言う。現在は修士2年。研究だけでなく就職活動にも力を入れなければならない時期だ。目指す職業はもちろん、研究者。

「上司はイケメンがいいですね(笑)」と女子らしい一面も

「自分の手で作り出した新しいモノで、たくさんの人にいい影響を与えられるような研究者になりたいです。そのモノが化粧品なのか、食べ物なのか、システムなのかはまだ分かりませんが、自分の手で何かを生み出したいと思っています」

まだ世に存在しないモノを生み出したいという夢。そのエネルギーとなっているのは、環境問題解決の糸口を探す、現在進めている研究なのだろう。そして就職活動を始めたことがきっかけになり、自身の研究の意義についてあらためて言語化できたという。

「人生100年時代と言われていますが、環境がボロボロだと長生きしても何も楽しくないんじゃないかと思うんです。人間が生きるためには、地球も健康じゃないと意味がありません。自分の体と同じように、環境のこともしっかり一緒に考えていかないといけないんです。日本と欧米では同じ先進国でも環境に対する意識のボトムラインに大きな差があります。今後、自分の研究によって環境に興味を持つ人が少しでも増えて、日本のスタンダードをもっと高めていけたらうれしいですね」

中山さんは現在、研究と就職活動に追われる毎日を忙しく送る

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitterでフォローしよう

この記事をシェア

  • Facebook
  • Twitter
  • はてぶ!
  • LINE