理系女子の履歴書

ミクロな世界が面白い!微生物を駆使して人にも環境にも優しい食品を作りたい

日本大学 生物資源科学部 応用生物科学科3年 浅野かおり【前編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第9回は日本大学の応用生物科学科に通う浅野かおりさん。昔から自然や生き物が身近だったという彼女が現在勉強しているのは、食品と微生物のつながりについて。将来を模索する中で彼女が見つけた「やりたいこと」とは。

微生物のすごさを知って上京を決意

日本大学 応用生物科学科3年の浅野かおりさんは、北海道札幌市出身。札幌市とはいえ、市街地から少し離れれば自然豊かな景色が広がり、通っていた高校は、近くに川が流れ、周りにはコンビニくらいしかないのどかな場所だった。彼女は、小さなころから生き物への興味が強く、ダンゴ虫などを捕まえてはつぶさに観察するなど探究心を発揮する子供だったそうだ。

「動物図鑑や人体図鑑、宇宙の本などを父に買ってもらって、よく読んでいました。今思えばそのころから科学は身近な存在でしたし、周りは自然豊かな環境だったから、生き物との距離も近かったですね。そういう体験があったからか、勉強は理科が得意でした」

浅野さんが通っていた高校のグラウンドには野生のシカやタヌキ、キツネが迷い込んでくることもあったとか

高校生になると自然と環境問題への意識が高まっていき、その中で将来の夢へとつながる、ある生き物との出合いがあった。

「タンカーの座礁や衝突による原油流出事故がたびたび起こりますが、その石油を浄化するために“微生物”の力を利用しているということを知って、すごく興味を引かれたんです。そんなにすごいことができるなら、他にも微生物を活用して、人や環境の役に立つものが作れるんじゃないかって。今の大学と学部を選んだのも、それがきっかけだったんです」

浅野さんが興味を持ったのは、微生物や植物などが持つ化学物質を分解する能力を利用して、土壌や地下水などの汚染浄化を図る「バイオレメディエーション」という技術。浄化に伴う環境負荷が小さく、コストも安く済むことから、多分野で活用されている。

「普段はインドア派で、予定がない日はひたすら布団でゴロゴロするのが好きです(笑)」

「例えば、合成洗剤って海や川にどういう影響があるんだろうとか、そういうことが気になってしょうがないタイプなんです。だから原油流出事故のニュースが目に留まったのかもしれませんね」

「将来は社会や環境に直接役に立つことがしたい」。漠然とそう考えていた浅野さんにとって、一つの道を示してくれたのが微生物だったのだ。

人に役立つ「食と微生物」の世界に夢中

そんな浅野さんが現在大学で学んでいるのは、植物や微生物、動物における生命現象の仕組みだ。生き物がどのような構造、機能で生きているのか、細胞やDNA、分子レベルのミクロの世界から、幅広く勉強しているところだという。

「今は3年生なので専門的なことはこれから学んでいくところですが、これまでの学生実験などから、肉眼では見えない“ミクロの世界”の面白さにとにかくハマっています」

映画やアニメが好きで、最近はまっているのはアニメ「あらいぐまラスカル」。「涙もろい性格なので、何回も泣いちゃいます」

学生実験は、目的や方法に従って結果が明らかになっている実験を行うというもの。将来専門分野を学ぶために幅広い知識を吸収し、科学の考え方を身に付ける場でもある。自分の興味がある分野が明確な学生には遠回りに思えることもあるが、興味のない分野にも触れることで、新たな気付きがあるのが面白いところだ。

「私の場合、もともと興味があったのは環境と微生物ですが、実は今一番興味があるのが、食品と微生物の世界なんです。微生物バイオテクノロジーという授業では、食品において微生物がどういう働きをしているのかを学んでいて、ウイスキーやビールにも微生物が深く関係していることを知ったときは驚きました。他にも、普段何げなく食べているものも、ひも解いていくと実は微生物が関わっていたりして。そういうことをたくさん知るうちに、より自分に身近な“食べ物”に興味が出てきたんです」

その気付きから、将来は食品会社に就職し、微生物を用いた健康食品の企画などに携わりたいと考えているという。人にとって一番身近な“食”という分野は、誰かの役に立っているという貢献感もひとしおだろう。

根っからの理系だという浅野さん。「例えば、レンジでご飯を温めるときなど、分子が今活発に動いているんだろうな、とか、いちいちミクロの世界を想像してしまうんです(笑)」

人の免疫を高める健康食品を作りたい!

大学3年生の浅野さんは、間もなく所属する研究室を決める時期になる。そろそろ自分の希望を決めなければならないが、微生物と一口に言ってもその内容は多岐にわたるという。

「一番興味があるのが、人の健康に直接関わる免疫の分野です。この分野では腸内細菌を扱うのですが、腸内の微生物によってどのような作用がもたらされるのか、例えば病気とのつながりや、より健康になるための方法などを今後研究していきたいんです。それを通じて腸内バランスをより簡単に、よりよい方向へ改善する食品や、腸内細菌によって引き起こされる病気を予防するような食品を、将来作れたらいいなと思っています」

「これを食べたら体内でどういう作用が起こるかとか、ミクロの世界の研究は本当に面白いです!」

ただ、その免疫に関する研究を行っている研究室(ゼミ)が、学内で「第一の就職活動」と言われるほどの“難関ゼミ”なのだそう。

「私の学科のゼミは、入るために面接を突破しないといけないんです。しかも、希望しているゼミはとにかく倍率が高くて、かなり厳しいそうなんですよ。なので、今は研究分野について調べたり、どうアピールをしていこうか模索したりしています。正直、受かるかどうか不安なんですけど……」

そう言って少しうつむくが、彼女が語る言葉からは、強い気持ちが伝わってくる。内に秘めた熱量は相当なものがあるのだろう。このモチベーションはどこから来るのか、最後に尋ねてみた。

「微生物のことを勉強していると、その奥深さや複雑さにロマンを感じるんです。壮大なミクロの世界が自分の体の中にも広がっていると思うと、ちょっとムズムズすることもあるんですけど(笑)。でも、それ以上に『もっと知りたい!』っていう気持ちが湧き上がってくるんですよね。それに、微生物を利用した、人にも環境にも優しい食品を作って、もっともっと身近になるように広めたいという思いがあります。いつか、それが当たり前になるような世界を目指していけたらいいなと思っています」

「将来は食品会社などで商品企画などに携わりたいです!」


<2018年9月21日(金)配信の【後編】に続く>
つい最近まで引っ込み思案だった浅野さんが外に向けて自分を発信できるようになった転機とは?

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