特集

技術の応用で光明が射す再エネ関連ビジネス

ちりも積もれば山となる――次なるチャンスは“無駄”の活用

再生可能エネルギーのビジネス展開について見てきた今回の特集。本稿では、大型発電所を建設して電力を売る直接的な発電事業ではなく、再エネ発電の技術を応用したビジネス展開をする株式会社レオパレス21(以下、レオパレス21)と株式会社神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)の取り組みを基に、再エネビジネスの未来を占っていきたい。

“打ち出の小づち”化した屋根借りビジネス

建物所有者が自費で太陽光発電設備を設置して売電収益を得る一方で、発電事業者が建物所有者から屋根を賃借して売電収益を得る再生可能エネルギーのビジネスモデル、いわゆる「屋根借り」をご存じだろうか。

全国で約3万6000棟の物件を管理するレオパレス21は、「ルーフメガソーラープロジェクト」と銘打ってこのビジネスモデルを展開した先駆者として知られている。

「実は、このプロジェクトは派生的に始まった事業なんです。当初は、賃貸アパートのオーナーに対する追加付加価値の提案と、それに付随した太陽光パネルを施工することでの増収が目的でした」

そう語るのは、レオパレス21の事業企画部長・蘆田(あしだ)茂氏だ。

「そもそもは弊社が太陽光パネルを設置して、オーナーが売電で収益を得るという事業を始めたことが発端です。東日本大震災を経てエネルギーや環境についてのオーナーの意識が変化したことと、固定買取制度(FIT制度)が導入されたことが背景となり、太陽光パネルの設置が一挙に進みました」

管理物件の屋根にソーラーパネルを設置。設置費用は物件のオーナーたちがまかなっている

写真提供:レオパレス21

その後、レオパレス21と富士通が共同で提案したICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を活用した仮想型太陽光発電所の実証検証が福島県の「福島実証モデル事業」に採択されたことを契機に、同社はオーナーから屋根を借りて太陽光による発電事業を営むルーフメガソーラープロジェクトを展開。

太陽光発電を軸とした2つの事業を進めてきたが、前者の設置営業事業は現在も行っているものの、後者のルーフメガソーラープロジェクトは、FIT価格の下落に伴い新規の展開は行っていないという。

FIT制度見直しが再生可能エネルギービジネスの拡大に大きな影を落としたことで、レオパレス21もまた、「屋根借り」というビジネスモデルに見切りをつけたということだろうか。

「いえ、見切りをつけたわけではないです。2013年にスタートしたメガソーラープロジェクトは、毎年27億円の収入を生み出す安定した事業に成長しました。想定以上に発電量が多いこともあり、当初の目標よりも早い、10期目での投資回収が見込めるまでになっています。ただ、現在のFIT価格と今後の趨勢(すうせい)からは、新たにソーラーパネルを設置・事業展開しても投資分の回収が難しいだろうという判断です」

発電事業を手掛けるグループ会社の株式会社レオパレス・パワーの代表も務めている蘆田茂氏は「社会貢献につながる再エネ事業への参画は、とても有意義なものになった」と話す

レオパレス21では、自社の管理物件約3万6000棟のうち屋根借り太陽光発電事業で7000棟にソーラーパネルを設置することを目標に事業を展開してきたが、最終的に設置したのは約5750棟。目標には届かなかった。

「広大な敷地に太陽光パネルを敷き詰めるメガソーラーと異なり、弊社のプロジェクトは全国に点在する小規模の発電所をICTでつなげて仮想メガソーラーとするもの。普通のメガソーラーよりも設置コストがかかります。その点を踏まえれば、設置数は目標には届きませんでしたが、事業としては成功と考えています」

今後の新規展開はないものの、FIT制度の固定買取期間が20年であることを考えれば、投資回収後の10年間はひたすら利益を生み出す“打ち出の小づち”であるとも言えるだろう。

この点は前回で紹介した「安定・着実」をキーワードとする太陽光発電ビジネスの収益構造と一致するが、レオパレス21はキャピタルゲイン(資産の売買差益)ではなくインカムゲイン(資産を保有することでの利益)を選択している点が異なる。

「今回のプロジェクトによって再生可能エネルギーで安定収益を得られるモデルができたので、今後はその収益を社会貢献にもつながるような、新たな再生可能エネルギービジネスに投資していこうと検討している段階です」

バイナリー発電の技術が船舶業界を救う!

レオパレス21のプロジェクトは、それまで無価値であった屋根に着目し、ICTとFIT制度を組み合わせて「ちりも積もれば山となる」的に利益を生み出すビジネスモデルと言えるだろう。

一方で、制度に苦しめられ、にっちもさっちもいかなかくなった分野に再生可能エネルギー技術を応用することで、前途に光明を見いだそうとしているビジネスモデルがある。

それが、神戸製鋼が開発を進める舶用バイナリー発電システムだ。開発を担当する同社マーケティンググループリーダー・荒平一也氏は、「陸用バイナリーを船舶に応用した日本独自の技術が海運・造船業界で注目されている」と語る。

陸用のバイナリー発電とはそもそも、地熱発電に利用されている技術。従来の地熱発電は地下から取り出した蒸気で直接タービンを回して発電させるのに対し、バイナリー発電は地下から取り出した蒸気や熱水で、水よりも沸点の低い液体を加熱・蒸発させ、そこから発生した蒸気でタービンを回す。このため、従来の方式では利用できなかった中低温度の蒸気や熱水も発電に利用することができる。

では、この技術を船舶にどのように応用し、何をもたらしたのだろうか。

「船舶はエンジンで重油を燃やすことで推進力を得ていますが、そこから発生するエネルギーの半分は熱として排出されています。この熱を再利用して燃費を改善することが、今、海運会社と造船会社の急務なのです」

2013年1月、IMO/MEPC(国際海事機関/海洋環境保護委員会)によって、これまで二酸化炭素(CO₂)の排出規制を定めた京都議定書の適用外だった船舶に対して、2020年までに現行の20%減、2025年までに30%減というCO₂排出制限が課せられた。

「20年目標は船体の形状を改善するなどで達成できましたが、25年目標はこのままではどうしても達成が困難な状況です。そこで目をつけたのが、陸用バイナリー発電の応用だったんですよ。排熱を再利用することで燃費を改善し、CO₂排出制限の目標達成を目指しています」

舶用バイナリー発電システムの開発を担当する荒平一也氏

「船舶の機関は、推進力を生むエンジンと船内で使用する電気を作る発電機で構成され、エンジンと発電機は共に重油を燃料としています。このため、発電機が生み出す電力を少なくすることが消費燃料の削減、つまり燃費改善につながるんです」

エンジンに送り込む前の空気は高温になる。そのままエンジンに送り込むわけにはいかないため、冷却器で冷やす必要があり、その部分で捨てられていた圧縮熱を利用して発電しているという。

「この排熱は船舶が生み出す推進力を含む全エネルギーの16.5%に相当しています。これまで捨てるしかなかった熱源を再利用することで、発電機の燃料消費が20~25%削減し、エンジン出力7500kW時に125kWを発電することを確認しました。船舶における排熱を利用した発電量としては最大規模となります」

再エネビジネスは次なるステージへ

神戸製鋼は2017年1月、共同開発する旭海運株式会社所有の大型石炭運搬船「旭丸」(全長225m、載貨重量トン7万3914t)に同システムを搭載しての海上試験を完了。2019年から販売開始を目指しているという。

「大きさは一辺2mの立方体に収まるサイズで、船をドック入りさせることなく、岸壁に横付けした状態で設置可能です。機関室のスペースさえあれば、就航中の商船にも取り付けることが可能なんですよ」

開発された舶用バイナリー発電システム。価格設定はこれからだが、数千万円単位となる「ユーザーにとって現実的な価格」(荒平氏)の実現を目指している

写真提供:神戸製鋼

同システムが対象としているのは、5000kW以上の発電機を搭載する商船。まずは新造船に絞ると、年間で約1200~1300隻が売り込み先となるそう。

「近年厳しくなった環境規制のために、新造船ですと建造費に加えてさらに2~3億円をプラスして環境対策機器を搭載しなければならず、しかも国際競争が激しいため運賃に転嫁することもできない船主は悲鳴を上げていました。そこに燃費を改善し、CO₂排出制限もクリアできるシステムが初めて登場するわけですから、大きな需要があると考えています」

神戸製鋼の発電システムは、バイナリー発電という地熱発電の関連技術を応用したもの。再生可能エネルギー発電の一技術が新たな可能性を示唆する例だろう。

日本のみならず世界が再生可能エネルギーを導入する意義は、新興国の経済発展を背景とする世界的なエネルギー需要の増大から来る、エネルギー市場の不安定化への対策と化石燃料の利用に伴って発生する温室効果ガスの削減にある。

とは言え、エネルギー・ポートフォリオの全てを再生可能エネルギーとすることは現実的な選択ではない。依然として化石燃料への依存が続くことを見越せば、再生可能エネルギーから生まれた技術を各所で応用することで、「ちりも積もれば山となる」的に環境を改善することは可能だろう。そして、そこには星の数ほどのビジネスチャンスが埋まっているはずなのだ。

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