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年間光熱費が半額!土塗り壁のネット・ゼロ・エネルギー・ハウス

省エネ大賞受賞の土塗り壁高断熱木造住宅「ZETH」の実力とは?

土塗り壁の伝統的な日本家屋が、実は最新の省エネルギー化住宅になる――。1月23日に発表された「平成28年度省エネ大賞」で、地方の住宅工務店が製品・ビジネスモデル部門の中小企業庁長官賞を受賞した。伝統と革新を融合させた住まいの未来とは?

エネルギー消費量をゼロ以下に

近年、住宅を購入するうえで「家で消費するエネルギー量」は大きな思案事項になっている。

中でも省エネを徹底し、1年間に家庭で使うエネルギーと同等かそれ以上の発電を行う「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH、ゼッチ)」は、2016年度から経済産業省が本格的に普及を推進。同年11月までに、全国のハウスメーカーや工務店など3000社以上が賛同、販売に努めている状況だ。

その中の1社である金子建築工業株式会社(岐阜県・恵那市)が、ZEHの観点も踏まえて考案し、施工しているのが、年間の光熱費を半分にすることができるという土塗り壁高断熱木造住宅「ZETH(ゼッツ、Zero Energy Timber House)」だ。

「ZETH」のモデルハウス

温度と湿度を自然に調節する土壁

「ZETH」の最大の特長は、日本の伝統的な木造住宅に用いられてきた「土塗り壁」を採用したこと。

土塗り壁は特に「蓄熱性」と「調湿性」に優れている。

「蓄熱性」は冬季に効果を発揮し、日中の太陽熱が壁中に蓄えられ、気温が下がり始めるとゆっくりと放熱。空調設備を必要以上に使用せず室内環境を快適に保つことができるというもの。

また、夏季に効果を発揮するのが「調湿性」。人間が暮らすうえで適当な湿度は、50~60%とされているが、土壁が室内の湿気を吸収することで湿度を安定的にコントロール。家の中で土蔵に入ったときのような涼しさを感じられるという。

断熱性と気密性の高い構造を持った住宅を、この土塗り壁で覆うことで、夏季、冬季を通じて、42坪(約140平方メートル)の広さを6帖用エアコン1台で室温21~25℃に維持することが可能。光熱費にかかるランニングコストは、年間でおよそ50%削減できると試算されている。

温度と湿度によって人が感じる快適と不快を示す指数表。土塗り壁の調湿性能は、快適ゾーンに自然と調整してくれる

大手ハウスメーカーに勝つためのアイデア

構想は2010年にさかのぼる。大手ハウスメーカーに対抗し得る住宅商品の考案からスタートした。当初から蓄熱・断熱の観点で建材を検討していたが上手くいかず、思案の末にたどり着いたのが「土塗り壁」だった。

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の前真之准教授と共同して、土塗り壁を用いたモデルハウスの性能を実測評価。蓄熱効果をシュミレーションしたところ、室温を快適に保つ時間の割合は約150%増加、暖房機器へのエネルギー負荷は約3割削減できることが推定された。

単に太陽光発電といった発電・蓄電・給電のための管理システムを付加するだけでなく、住宅自体の省エネ化によって、より効率的にエネルギー・ゼロを目指せるところまで辿り着いた。

2011年に「ZETH」のモデルハウスを建て、販売を開始。同時に、興味を持った他地域の工務店にノウハウを伝える講習・研修会も実施。現在までに自社で28棟、他社が16棟を建設。同社の受注数のうち30%ほどが「ZETH」で建てられているという。

エネルギーに自立した住宅へ

土塗り壁は、住宅を解体する際にもその真価を発揮する。

通常の住宅に用いられる壁材は、廃材処理のコストなど解体時に所有者にかかる課題が多い。また、リサイクルするためには加工処理するための新たなエネルギーが必要になる。

土塗り壁の場合、壁の土や内部に設置した断熱材などの分解が容易で、それらは再利用が可能。壁に用いる土は製造時のエネルギー消費量もコンクリートなどに比べて大幅に小さいと言われており、住宅自体の省エネルギー化や製造過程を含めると総合的にCO2の排出削減にもつながるそうだ。

古くからの建築技術を再活用した高性能木造住宅。エネルギーを作り、溜めて、使うというシステムの構築からではなく、住宅の構造を変えることからゼロ・エネルギーを目指したのは工務店だからこその発想だろう。

同社は今後、発電・蓄電・給電システムもパッケージ化した住宅の販売を目指している。

「ZETH」で建てられたモデルハウスの内部。土塗り壁で造ることで、「あらわし」と呼ばれる木材の構造部分を露出させた仕上げにできる

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