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地球内部に潜む“第三の生命圏”がカギ!微生物の活動がメタンガス生成に関与

“超スローライフな微生物”の培養で地球資源の生産も可能になる?

海底下に生息する、陸上や海洋の生命圏とは特性が多く異なる“第三の生命圏”を形成する微生物群。石炭の熟成や天然ガス(メタン)の生成において重要な役割を果たしている可能性が示唆されるも、その生態は謎に包まれているところも多い。今回は私たちの暮らしを支えるエネルギー資源の形成に迫る最新研究内容の詳細をお届けする。

日米の研究グループが海底下の微生物の謎に迫る!

国立研究開発法人 海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)は10月4日、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた統合国際深海掘削計画(IODP) 米国カリフォルニア大学と共同の研究航海「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査」レポートを発表。

採掘した海底下約1.6kmの泥岩層(頁岩:けつがん/粘土が固まってできた水成岩)と、約2.0 km付近の石炭層(褐炭)のコアサンプル(柱状の地質試料)に生息する地下微生物の代謝活性について、超高空間分解能二次イオン質量分析器(以下、NanoSIMS)を用いた分析結果は以下の通りだ。

泥岩層や石炭層に含まれるメチル化合物(メタノールやメチルアミンなどのメチル基を持つ有機化合物)を代謝し、メタンや二酸化炭素を排出する地下微生物生態系の機能を確認するとともに、それらの微生物の生育の速さ(倍加時間)が少なくとも数十年から数百年以上であると明らかにした。

細胞全ての元素が置き換わる倍加時間を算出したプロット図

画像提供:JAMSTEC

地球表面の約7割を占める海。

その下には約1029細胞の微生物が生息する広大な“海底下生命圏”の存在が知られており、これまでにも国際的な科学掘削調査が行われている。

例えば、海底下に生息する微生物の多くが地球表層の生命(微生物を含む)と系統的に大きく異なり、特異な進化を遂げた性状未知の微生物種から構成されること(2006年2月)、有機物に富む大陸沿岸域の海底堆積物に生息する微生物の多くが“生細胞”(せいさいぼう/生きた細胞)であること(2011年10月)、外洋の堆積物環境に酸素が豊富に存在する好気的な生命圏が広がっていること(2015年3月)などが既報の通りだ。

「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査」で採取された海底下2466mまでのコアサンプルの特徴を示す模式図

画像提供:JAMSTEC

そして、2012年に行われた「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査」では、当時の海洋科学掘削における世界最高到達深度を更新する海底下2466mまでの掘削コアサンプルの採取に成功。世界最深の海底下微生物群集の存在が確認された。

これらの研究成果は、まずは地球内部の地下環境に陸域や海洋等の地球表層の生命圏とは特性が大きく異なる「第三の生命圏」の存在の証明だ。

また、そこに生息する微生物の代謝活動が有機物の分解や、天然ガス(メタン)の生成など、地球規模の元素循環に重要な役割を果たしていることを示した。しかし一方で、海底下深部の堆積物環境に存在する微生物の栄養源や生育の速さについては分かっていなかった。

地質学的時間スケールをかけて海底下の炭素循環を担う

そこで同研究グループは、採取されたコアサンプルを用いて、単一細胞レベルのより詳細な分析研究を実施した。

採取された泥岩層と石炭層のサンプルを、無酸素環境下で滅菌したガラス瓶に入れて、そこに炭素・窒素・水素にわずかに含まれる放射壊変しない安定同位体で標識されたメタノール、メチルアミン、アンモニウムイオン、重水を基質(酵素によって化学反応を起こす物質)としてそれぞれ少量ずつ添加。

「ちきゅう」船上にて封入された泥岩層や石炭層のサンプル

画像提供:JAMSTEC

このサンプルを採掘現場環境に近い温度(泥岩層サンプルは37℃、石炭層サンプルは45℃)で暗所に静置する。

そして30カ月後に、NanoSIMSを用いて、ガラス瓶の中に含まれるメタンや二酸化炭素の炭素・水素などの量を測定。

加えて、それらの細胞からゲノムDNAを抽出し、遺伝子構造の塩基配列を解読することによって生育した微生物の種類の同定を行った。

海底下2kmの石炭層から検出された微生物細胞のNanoSIMSを用いた元素組成イメージ

画像提供:JAMSTEC

今回の分析研究で、ガラス瓶の中に含まれるメタンや二酸化炭素が“重い物質への変化”が確認された。

この結果は、地層中に生息する微生物群がメタノールやメチルアミンといった石炭層に多く含まれるメチル化合物を分解・消費し、最終的にメタンや二酸化炭素を産生する代謝のサイクルが起きていることを示しているのだ。

さらに、泥岩層に生息する微生物群よりも石炭層に生息する微生物群の方がメチルアミンを同化しやすく、ガラス瓶に水素を加えた条件下では同化速度がやや抑制されるなどの新たな発見も。

サンプルの化学反応を分析したプロット図

画像提供:JAMSTEC

これは海底下深部の微生物群の多くが、泥岩や石炭層に含まれるメチル化合物から生育や生命機能の維持に必要な栄養・エネルギーを獲得する機能を持つと同時に、水素がそれらの代謝機能を抑制する働きを示すということである。

他にも、1細胞あたりの全窒素と全水素の量、30カ月間に固定された窒素と水素の量の割合から細胞の倍加時間を推定したところ、数十年~数百年の時間を要することなどが判明した。

今回の研究により、海底下微生物が地層中に含まれる有機成分を持続的に分解し、地質学的時間スケールと空間規模によって、石炭の熟成や天然ガスを生成する炭化水素資源の形成プロセスが示唆された形だ。

しかし、これらの微生物が海底下深部においてどのようなメカニズムで生命機能を長期間維持するのかなど、いまだ不明な点も多い。

JAMSTECの稲垣史生上席研究員は、「これらの地層に生息する“超スローライフな微生物”は実験室内で培養可能で、適切な条件であれば爆発的な増殖スピードを発揮する潜在的な能力を持っていると想定されます」と語っている。

今後全ての謎が解明され、これまで地球から搾取するだけであった資源を人間の手で生産することが可能になるかもしれない。

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