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急激な天候の変化を事前に察知!ボーイングとJAXAが目指す安全な空の旅

乱気流事故防止に向けた飛行試験を2018年に実施

飛行機の搭乗時、ごくまれに体験する突然の揺れ。これは晴天乱気流ともエアポケットとも呼ばれる乱気流の影響によるもので、実はかなり頻繁に起こっている。この乱気流は肉眼やレーダーでの発見が困難であり、長年、機内事故の原因になるなど飛行機の航行にとって危険な自然現象といえる。この脅威ともいえる自然エネルギーの早期発見、パイロットへの伝達を可能にする技術を確立し、快適な空の旅の実現に向けた取り組みを紹介する。

ボーイング777型貨物機に搭載し、2018年に飛行実験開始

2010年に乱気流事故防止機体技術の実証(SafeAvio)プロジェクトを立ち上げ、晴天乱気流による事故半減を目指した晴天乱気流検知システムの開発を行ってきた国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)。

SafeAvioの運用概念図。航行中に乱気流を検知したら機体動揺を低減し、着陸進入時に乱気流を検知したらパイロットに警報を出し着陸復行する

画像提供:JAXA

今回、2018年に航空宇宙機器の開発・製造を手がける世界的大手企業・ボーイング社のボーイング エコデモンストレーター・プログラムの一環として、JAXAが開発した航空機搭載用のドップラーライダーを実際に航空機に搭載して飛行試験を行うと発表した。

ボーイング エコデモンストレーター・プログラムは、航空機の安全飛行と環境性能の向上実現のため、さまざまなテクノロジーを実際の航空機に搭載して、飛行試験を行うもの。2012年にアメリカン航空のボーイング737-800型機を使った初めての飛行試験が行われ、その際には15種類のテクノロジーが実験対象となっている。以来、これまでに60種類以上のテクノロジーを対象とした飛行実験が行われている。

今回の発表に伴い、ボーイング社のライダー・プログラム・マネジャーであるチャーリー スウォボーダ氏は同プロジェクトについて、「JAXAとボーイング社は共に、乗客と乗組員の事故の最大の原因である晴天乱気流を解決したいと考えています。JAXAのセンサーと警告システムは、この問題に対処する潜在的なエネルギーを秘めています。今回のプロジェクトでは、主な飛行条件での飛行試験データを収集し、この技術の経験を深めたいと考えています。私たちの最終的な目標は、飛行中の乗客の安全をさらに向上させることなのです」と語っている。

なお、来年予定のエコデモンストレーター・プログラムにおける飛行試験では、ライダー技術を含む30種類以上のテクノロジーを、フェデックス エクスプレス社のボーイング777型機の貨物機に搭載して行われ、6週間の飛行試験を予定している。

安定した航行を実現する2つの技術

来年の飛行試験で実証が行われる技術ドップラーライダーは、レーザー光を照射し、大気中のエアロゾル(微細な水滴や塵など)より反射した信号から、航空機前方17.5kmにある晴天乱気流やウインドシア(風速や風向きの急激な変化)を検知。

これまで航空機に搭載されていた気象レーダーでは検知できなかった晴天乱気流やウインドシアの検知を可能にし、パイロットに伝えるというテクノロジーだ。

これはいわば“乱気流事故防止システム”であり、このシステムの17.5km先を検知する乱気流検知距離と83.7kgというシステム重量は、航空機搭載型としては世界トップクラスの数値であり、システムの小型化・高性能化を実現している。

機体動揺低減技術のシステム概念図。乱気流検知装置で検知した乱気流を制御計算機により解析し、揺れを低減するよう舵面を制御する

画像提供:JAXA

また、巡航飛行などにおける航空機の揺れを低減させる「機体動揺低減技術」の開発も進められている。

2つのレーザー光により検知した乱気流を、制御計算機で解析する。推定した気流ベクトルデータを基に航空機の姿勢をコントロールする制御舵面(補助翼など動翼)を自動で制御。これにより機体の揺れを低減させるというもので、こちらも乱気流の事故防止に有効なのだという。

これら技術が実用化された場合、パイロットは晴天乱気流や急激な天候の変化を約70秒前に察知することが可能となる。そのため、乗務員は乗客にシートベルト着用を促すなどさまざまな対応が時間に余裕をもって行えるように。その結果、気流の乱れを原因とする負傷者を、実に6割以上も減らすことが期待できると試算されている。

航行を脅かす自然エネルギーとの戦いに最新テクノロジーで挑むボーイング社とJAXA。その先には、より安心・安全な移動を享受した未来の人々の笑顔が待っているはずだ。

画像提供:ボーイングジャパン

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