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物体や空間を瞬時に判断!自動運転車実現を加速させるAIボードを国内メーカーが開発

自動運転アプリの他、ロボティクスや医療アプリなどの産業にも応用が期待

自動車業界で注目のトピックとして電気自動車(EV)と並ぶのが、自動で目的地まで運んでくれる自動運転車だ。現在、各国メーカーが技術開発にしのぎを削る中、OKIグループと技術商社大手のアヴネットが自動運転車向けのAI(人工知能)機能搭載コンピューターボード(車を電子制御するシステムを構成する一部品)を開発した。自動運転車の早期実現を期待させる注目の製品を紹介する。

自動運転車実現に向けて課題をクリア

OKIグループの設計受託事業会社である株式会社OKIアイディエスは、半導体や組み込み分野などで事業を展開する技術商社アヴネット株式会社と共同開発した、AI機能搭載の高度自動運転技術開発向け新型プラットフォーム(ハードとソフトの両ウェアなどの開発環境を一枚の基板にまとめたもの)を2017年12月12日に発表。2018年2月からアヴネットが国内販売を開始し、その後、アジアにも販売を広げていく予定だ。

今回発表されたコンピューターボードは開発用のため、車載仕様と比べると使用されているデバイスが異なる(そのまま市販車に搭載されることはない)が、車の自動運転化に向けた開発が進むことは間違いない。

※SAE(米国自動車技術会)によって定められた、レベル0~5までの6段階に区分されている自動運転の定義付けの詳細はこちら

従来のADAS(先進運転支援システム)開発プラットフォームでは、ASIL-C(車載電子システムの機能安全要求レベル)に対応する米国の半導体企業ザイリンクス社製の「Zynq(R) UltraScale+(TM)MPSoC」は1個のみ搭載していた。そのため、レベル4~5で要求される情報処理能力は有していなかった。また、インターフェースも汎用的なものが多く、開発目的に応じて拡張ボードを別に用意したり、独自に開発する必要があった。

新型プラットフォームに搭載されるA4サイズの開発ボード

そこで新型プラットフォームには、デバイスMPSoCを2個搭載(車載仕様には「XA Zynq (R) UltraScale+(TM)MPSoC」が搭載される)。

これにより、1つ目のMPSoC(下の画像左)が多数のセンサーから集めた情報を処理して人物、車両、障害物の検出を行い、2つ目のMPSoC(下の画像右)で地図データ、地形情報、風景情報の高速処理を可能にし、最適な走行ルートやエンジンコントロールを瞬時に選択できるようになった。

集められた大量のデータを瞬時に処理できるようになったことは、SAEが定義する高度な運転自動化、完全運転自動化の実現に向けて果たす役割は大きい。同時にレベル4~5の自動運転に必要なデータを高性能GPUと同等の処理速度を保ちつつ、約5分の1の消費電力(ザイリンクス社調べ)での稼働可能とエネルギーの高効率化も実現している。

また、この2つのMPSoCは完全に独立したシステム電源を持ち、かつ外付けのASIL-Dマイコンで監視されているため、一方が故障した場合でも、そのデバイスのみを安全に停止し、もう一方の正常な方で動作継続が可能だという。

新型プラットフォームの概念図

加えて、自動車メーカーやサプライヤーが開発した独自機能の搭載や、官民で進める次世代ITS(高度道路交通システム)との連携を可能にするオープンプラットフォーム設計が施されているのも見逃せないポイントだ。

高速走行時、安全に停止するために必要とされる約800m先の障害物情報の検知を可能にする、前方監視用8メガピクセル以上の高精細マルチカメラや、周囲監視カメラ、イメージセンサーなど、最大12個を接続できる高速インターフェースを搭載。これまで行われていた開発目的に応じた拡張ボードの用意や独自開発の必要もなくなり、開発にかかる費用や時間的コストも削減された。

なお、AI機能に関してはザイリンクス社の開発環境「reVISIONスタック」を用いて、AIの基礎技術となる機械学習をベースとした画像認識アルゴリズムを容易に活用することができる環境が提供されるという。

さらに、ターゲットを高度自動運転技術開発に絞ることで、必要な機能をA4サイズのコンパクトな開発ボードに集約したほか、車載バッテリー規格電圧と同じ12ボルト稼動としたことで、実車への搭載による評価・検証が可能になった。

これらは技術開発のスピードアップにもつながるため、今後、自動運転車の早期開発に向けて追い風となるのは間違いない。

また、コンパクトなサイズと省電力での稼働の実現可能により、自動運転アプリケーションの他にも、ロボットなどの自律制御、機械学習実装を目指す産業・医療アプリケーションなど幅広いターゲットをも視野に入れている。

2020年の夏季五輪・東京大会までに、自動車の自動運転技術の実用化と普及を首相が表明して以来、一気に注目を集めることとなった自動運転車。刻一刻とその年が迫るなか、新型プラットフォームの登場は、開発速度のギアをもう一段階上げる起爆剤となるかもしれない。

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