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最小の交通規制でOK!老朽化したトンネルを点検する新手法が誕生間近

ロボットによる作業で人手不足解消!高精度&エネルギーの効率化を実現

高度経済成長期に建設された建造物が老朽化し、一気に寿命を迎えつつある。それは道路やトンネルなどの交通インフラもしかり。もし大規模な事故が発生した場合、安全性はもちろん経済的にも大打撃となりかねない。利便性を損なわず、安全を維持する手法が切望される中、開発が進んでいる新たなトンネル点検システムの詳細とは?

老朽化する建造物の増加問題に救世主登場!

東急建設株式会社は、「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム) インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の一環として開発している、まったく新しい「トンネル全断面点検・診断システム」の実証実験を2月10日~16日にかけて実施。その詳細を4月10日に明らかにした。

これまで人の手で行われてきたトンネルの点検作業をロボットに代替するこのシステム。実験は、千葉県が発注した国道128号の「社会資本整備総合交付金工事(内浦・<仮称>新実入トンネル工)」(全長688m/鴨川市)で行われ、作業の手順や、取得した点検データの解析時間について検証がなされた。

これまで人の手で行われてきたトンネルの点検作業をロボットに代替し、効率化と交通規制による渋滞緩和を目指す

現在、日本全国に敷設されているトンネルや橋梁(きょうりょう)は高度成長期以降に造られたものが多く、今後、建設から50年以上経過する施設の割合が急激に増加する。国土交通省の発表によれば、国内の道路トンネル約1万本を対象に調査した結果、2023年に34%、2033年になると実に全体の50%が該当すると試算されている。

2012年12月に発生した中央道・笹子トンネル天井板落下事故もトンネルの老朽化が原因の一つに挙げられるなど、事態は差し迫っている。国も2014年7月には道路法施行規則の一部を改正し、トンネルや橋梁などは5年に1回の頻度で近接目視による点検を義務付けるなど対策に乗り出している状況だ。

中でも道路トンネルの定期点検は、高所作業車で点検箇所にできるだけ接近して行われるのが一般的。そして当然ながら近接目視や打音検査には高い技術と時間、コストを要する。

しかし、熟練の技術者が減少傾向にあることに加え、点検範囲が広いため定期点検は長時間に及び、それによる交通規制は利便性を悪化させる。また、点検員による目視や打音の判定、検査結果は個人の感覚によるところが大きいため、定量的な判断と過去の点検結果の単純比較が困難といった課題が存在していた。

スムーズかつ効率的な新点検システム

これらの課題を解決するべく、トンネル老朽化に対応する新たな点検方法が待ち望まれる中、東急建設が東京大学、湘南工科大学、東京理科大学、株式会社小川優機製作所、株式会社菊池製作所と共同開発を進めているのが「トンネル全断面点検システム」だ。

「トンネル全断面点検・診断システム」の概要図

同システムは、行き交う道路の両車線をまたぐ形でトンネル内を前後に走行し、車やバイクの通行を妨げずに点検を行うことを目標にしている。これを実現するために、フレキシブルガイドフレーム(VGF)、走行式防護フレーム、打音検査ユニット、ひび割れ検出ユニットという4つの機構を備えるのが特徴だ。

多様なトンネル形状に適合させるため、変形可能なフレーム構造を持つVGF

VGFを積載する走行式防護フレームはトンネル延長方向に走行し、目的の点検位置へスムーズに移動できる

VGFには、複雑な動きを可能にする可変形状トラスを応用した変形可能なフレーム構造を採用。点在する照明や標識などの坑内設備を回避し、かつ、さまざまなトンネル形状に対応する汎用性を高めることで作業の効率アップが図られている。このVGFを支える走行式防護フレームは電動モーターで駆動し、縦断勾配10%まで登坂可能。道路をまたぐ形でトンネル内を走行するため、車の往来を妨げることもない。加えて、天井部からの落下物は上面に設置した鋼板で受け止める構造になっている。

打音検査ユニットは遠隔操作によって覆工コンクリートをたたいて状態を検査。取得した打音データを解析し、浮きなどの変状位置を検出する

ひび割れ検出ユニットはカラー画像と距離画像を組み合わせ、ひび割れと汚れを自動識別する

点検を担う打音検査ユニットとひび割れ検出ユニットはVGF上を遠隔操作で移動し、覆工コンクリートの打音と画像を取得。ひび割れや浮きといった変状を自動で検出できる上、画像や点検データから変状箇所を特定し、トンネル展開図として迅速に出力することも可能だ。

変状展開画像の一例

また、取得した点検データを環境条件や施工条件、経過年数などの基本データと共に、独自に開発されたエキスパートシステムに入力すると、その場で最適な補修工法や時期を提案してくれる。点検データから帳票の作成までを本システムで行った場合は、人力と比較して所要時間を6割ほど削減できることが実験で確認された。

つまり、点検から帳簿作成までをシステムがパッケージで行うことで、構造物の生涯費用であるLCC(ライフサイクルコスト)の算出にかかる人的コストの省力化・省エネルギーも期待できるというわけだ。

ロボット技術やICTをはじめとしたさまざまな先端技術を活用して、インフラをはじめ、さまざまな社会課題の解決を目指していくという東急建設。今後、日本企業の底力を発揮し、私たちの暮らしを支える朗報が次々と飛び込んでくるのではないだろうか。

※インフラの維持管理法の概念を変える金属の疲労き裂を治癒する技術開発についてはこちら

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