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世界初の“水素ホテル”が川崎に誕生!

廃プラスチックから取り出した水素を燃料に発電

近隣工場が廃プラスチックから製造した水素を、パイプラインで受け取り発電に利用するホテルが先ごろ開業した。再生可能エネルギーを活用し、発電時にCO2を排出しない。すなわち環境に優しい仕組みを活用した、世界初の“水素ホテル”として注目を集めている。

ホテルで使用する電気・熱エネルギーの約3割を水素でまかなう

羽田空港から車で約10分。神奈川県川崎市の「キング スカイフロント」(正式名称「殿町国際戦略拠点 キング スカイフロント」)は、ライフサイエンス・環境分野の研究開発拠点として、“世界で一番ビジネスしやすい環境”を造ることを目的に開発が進められている国家戦略特区だ。このエリア内に、東急ホテルズが世界初の仕組みを導入した「川崎キング スカイフロント東急REIホテル」(以下、東急REIホテル)を2018年6月1日から開業した。

“The WAREHOUSE(ウェアハウス=倉庫の意)”というコンセプトにより、京浜工業地帯に昔からあった倉庫がホテルに生まれ変わったようなモダンなデザインの外観が目を引く。

東急REIホテル外観。同ホテルの企画プロデュースは、「TSUTAYA TOKYO ROPPONGI」の店舗プロデュースなどを手掛ける入川スタイル&ホールディングス株式会社が担当。大和ハウス工業が設計・施工を行った

東急REIホテルが開業したキング スカイフロント「A地区」の全体計画図。敷地面積は4.6haで、ホテルと研究棟5棟からなる地区となっている

最大の特徴は、ホテル全体の約3割の電気や熱などの消費エネルギーを、純水素燃料電池と水素で発電した電力で賄っていること。

発電を担う純水素燃料電池は、東芝エネルギーシステムズ株式会社製の「H2RexTM」の出力100kWモデルを採用。水素を直接用いるためCO2を発生させずに発電できるだけでなく、わずか5分弱という短時間で発電を開始することができるという。
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発電した電力は、ホテル内の照明などの設備に供給され、発電の過程で発生した熱も客室用の給湯設備にお湯として活用。実に効率の良い「スマート過ぎるホテル」なのである。

東急REIホテルに設置された東芝製の純水素燃料電池「H2RexTM」。同システムはコンビニエンスストアのセブン-イレブン向けにも提供されており、2018年1月25日より千代田二番町店で稼働中。水素社会の実現に貢献している

5km離れた工場から水素を供給!

発電するために利用する水素は、化学メーカーである昭和電工株式会社が供給している。川崎臨海部にある同社の事業所で、使用済みプラスチックから水素を精製。約5km離れた東急REIホテルにパイプラインで送り、発電を行う仕組みだ。

そもそも川崎市の同地区では、市が中心となり、工場から工場にガスを送るためのパイプラインや使用済みプラスチックから水素を製造できるプラントが整備されていた。つまり“地の利を生かした”仕組みなのである。

また、昭和電工にとって水素製造は得意分野。生産するアンモニアの製造工程で原料として利用する水素を、使用済みプラスチックから取り出す技術を2003年から導入している。化石燃料の消費を抑えるだけでなく、製造工程で発生する二酸化炭素をドライアイスにリサイクルするなど副生物を資源として有効活用しており、従来の製造方法に比べて環境負荷の低減に大幅に寄与しているのだ。

東急REIホテルでの水素活用イメージ図

ホテル業界ではハウステンボス(長崎県佐世保市)内の「変なホテル」が太陽光発電による電力で製造した水素を利用しているが、使用済みプラスチック由来の水素をホテルで利用するのは今回が世界初の試みだという。
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今後はホテルの宿泊者が使い終わった歯ブラシ、くしなどのアメニティも、昭和電工の工場で水素にしてホテルのエネルギーに使うことを検討している。2018年から中国が廃棄物輸入禁止策を打ち出したり、欧州が海洋生物への影響を抑えるために使い捨てプラスチック製品を減らす法案を策定しようとしている中で、日本でも地域での資源循環は重要なテーマ。東急REIホテルの取り組みが“良いお手本”になることを期待したい。

ちなみに、ホテルは5階建てで、客室は186室。ビジネスラウンジやカンファレンスルームも備えており、地区内の研究機関を訪れる国内外の研究者や医療関係者の利用を想定している。

最上階の5階に位置するレストランでは、多摩川&羽田空港という圧巻のビューを眺めながらグリル料理を中心としたメニューが味わえる

また、キング スカイフロントは羽田空港にほど近く、2020年度には空港とを結ぶ「羽田連絡道路」の開通でアクセスも向上予定。こうした立地の良さを生かし、今後はサイクリングやエクササイズなどのホテルアクティビティの充実も図り、インバウンドの利用需要増を見込んでいるという。

世界最先端の頭脳を持つ研究者が集えば、さまざまな産業が発展する仕組みが開発されるかもしれない。新しいエネルギーを生み出す可能性を持つ、発展が楽しみな特区に注目だ。

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