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次世代型の洋上風力発電システムの浮体が完成!今秋、北九州市沖で実証研究スタート

海上の安定した風力から再生可能エネルギーを生産

陸上風力・着床式洋上風力・浮体式洋上風力の3つに大別される風力発電システム。その中で、すでに本格的な導入が進められているのが陸上風力と着床式洋上風力である。一方で浮体式洋上風力においても、近年、国内外で2~7MW(メガワット)クラスの実証研究が開始されるなど、技術的な検証や低コスト化に向けた開発が進行中。諸外国と比較して設備利用率が約20%という低水準の日本において、風力発電設備の利用率向上の切り札となり得る、浮体式洋上風力発電システムの最新研究をご紹介する。

水深50mほどの浅い海域に設置可能なシステム

NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)と、環境装置や発電設備などの製造を手掛ける日立造船株式会社(Hitz)は、開発を進めていた次世代浮体式洋上風力発電システムのバージ型浮体「ひびき」の完成を6月8日に発表した。

長さ51×幅51×高さ10(m)、風車・バラスト(バランスを取るための重し)を除く重量3100tのバージ型浮体構造物「ひびき」

陸上と異なり、年間を通して比較的強く安定した風が得られるため、台風や落雷など日本特有の厳しい気象条件に適応した技術開発として注目が集まる“洋上”の風力発電。前述のとおり、“風力”発電システムとしては3つに大別されるが、“洋上”の発電システムは「海底に基礎を設置するため、基本的に水深の浅い沿岸部に限られる」“着床式”と、「基礎を海に浮かべることで、広範なエリアから適地の選定が可能」な“浮体式”の2タイプある。

2011年、NEDOは日本の海域で洋上風力が導入可能な海域範囲を離岸距離30km、水深200mと定め、浮体式洋上風力発電に係る基礎調査を実施。すると、着床式と浮体式の経済性が入れ替わる水深50mで区切った場合、導入可能海域面積が「浮体式」は7万7442km2と、1万4745km2の「着床式」に比べて実に約5倍という結果が得られた。

つまり、着床式洋上風力発電に加え、より広い海域で利用できる浮体式洋上風力発電を導入することが洋上風力発電システムの普及につながると考えられる。

そのためには、着床式洋上風力の発電コストと競合できる浮体式洋上風力の低コスト化が欠かせない。NEDOでは、2023年以降に発電コスト23円/kWhの次世代浮体式洋上風力発電の実現を目指し、先進技術の開発を進行中。こうした取り組みの中、今回発表されたのが「ひびき」なのである。

6月20~22日にかけて行われた「第13回 再生可能エネルギー世界展示会」(パシフィコ横浜)のNEDOブースには、1/300スケールの模型が展示された

「ひびき」は鋼製のバージ(「はしけ」の意)型浮体構造物。

これは、三角形や四角形を基本とした構造で下部半分が海面下に沈む潜水式のセミサブ型と比較して、小型かつ軽量という特徴を持つ。これにより、水面下に沈む構造物部分が約7.5mで済むため、水深50m程度の浅い海域でも設置可能となった。

浮体式タイプのあれこれ。バージ型はセミサブ型(中央)に近い形状ではあるものの、大きさや重さが異なる

出典:国土交通省

また、海上で船を係留させるチェーンは重量を抑えつつ浮体係留の安全性を確保するスタッドレスチェーン(係留チェーン)と、浮体の位置を保持する高把駐力(はちゅうりょく/錨が海底土質との間に生む抵抗力)アンカーを組み合わせた計9本の係留システムを採用。この設計により、高波や強風など、厳しい気象・海洋条件においてもシステムの安全性が確保されることとなった。

実証機の設置予定海域

「ひびき」は、日立造船株式会社堺工場(大阪府)から福岡県北九州港までの曳航が完了し、今後、北九州港響灘地区で2枚翼のアップウインド型3MW風車を搭載する。その後、ことしの夏ごろに同地区から約15km離れた響灘に係留および電気ケーブルを接続し、秋ごろから実際に発電を行う実証運転が開始される予定とのこと。

2013年以降、銚子沖や北九州市沖などでおよそ4年にわたり国内初の着床式洋上風力発電の実証研究が行われるなど、着実に研究が進んでいる洋上風力発電。四方を海に囲まれた海洋国家・日本におけるエネルギーの担い手として、さらなる開発のまい進に期待したい。

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