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送電ロスを限りなくゼロに!中央本線で世界初の超電導ケーブル送電試験を実施

低損失&大電流の新システムで送電を効率化

線路上を走行する電気車(電車と電気機関車)には変電所から電力が供給(き電)される。その際に発生する送電ロスを減らし、エネルギーの効率化と有効活用を目指す新しい技術が「超電導き電システム」だ。今回、実用化を目標にした送電試験が、JR中央本線の一部を実際に使用して行われた。国内外を通じて初めてとなる実証実験の詳細をお届けする。
TOP画像:(C)HAYABUSA / PIXTA(ピクスタ)

従来のき電システムが内包する課題解消に向けて期待大!

鉄道の研究機関である鉄道総合技術研究所(公益財団法人/以下、鉄道総研)は、かねてより研究開発を進めていた「超電導き電システム」による送電試験を実施したことを8月2日に発表した。

本試験は、JR東日本の協力のもと、実際に中央本線のき電系統に同システムを接続。電気抵抗削減による電圧降下の抑制効果を実証するために実路線を使って行われた世界初の試みだ。

試験概要図。中央本線の日野変電所から豊田方面へ延びる送電設備と超電導き電ケーブルへの電流の流れを示している

線路上を走行する電気車に必要な電力を供給するき電。

現在は、変電所の整流装置で交流から直流に変換して使用する「直流き電」と、変電所では周波数を変えず降圧のみを行い電気車側に変圧整流設備を配する「交流き電」という2つの方式を使い分けて送電している。

発電所から送られる電力は、主に銅線やアルミ線を用いたき電線を介して架線(電車線)へと運ばれるが、き電線では電気抵抗によって送電ロスが生じてしまう。そのため、直流き電の場合は車両が受ける電圧が低下しないように、変電所を密に(狭い間隔で)配置するなど対策が必要なのが現状だ。

また、電気車で使われるエネルギーの有効活用として、近年よく耳にする「回生ブレーキ」。これは車両がブレーキをかけたときに失われる運動エネルギーを発電機として作動させたモーターによって電力に変換・回収し、近くを走る車両に送電して利用するというもの。しかしこの場合も、対象の車両までの距離が長いと、き電線の電気抵抗が電車間の距離に比例して増加するため、エネルギーを効率的に活用できないという課題が存在している。

そこで、これらの課題を解決するために研究開発されているのが、実証実験が行われた「超電導き電システム」だ。


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ある種の金属や合金をきわめて低い温度に下げると電気抵抗がなくなるという“超電導”現象を応用する「超電導き電ケーブル」の構造

同システムで採用する“超電導き電ケーブル”は、低損失かつ大電流密度で電気を流すことが可能な特徴を備える。このケーブルを直流き電方式に用いた場合、回生効率の向上や電圧降下の低減、変電所の集約化などさまざまなメリットが期待できる。

今回の送電実験では、408mの超電導き電システムを鉄道総研の日野土木実験所に設置。発電所から既設き電線に送られた電気を、「超電導き電ケーブル」を通して再び既設き電線に接続し、豊田車両センターへと送電。

送られた電力は10両編成のE233系電車を10編成準備し、全車両の空調や照明などに利用された。

超電導き電システムと既設き電線の電圧降下を比較した図

E233系車両の内部イメージ

(C)IK / PIXTA(ピクスタ)

結果、超電導き電システム接続時にシステム両側(起点側と終点側)で測定された電圧差はほぼ一致(図上)。加えて、既設き電線に通電した際に見られた9.41Vの低下(図下)に対して送電ロスは 0.02V以下にまで抑制され、電力損失量が約7kW減少した成果が得られた。

今回の送電試験結果を受けて、鉄道総研では今後、実路線において試験列車を用いた走行試験を実施してその効果を確認すると共に、超電導き電システムの延長化、き電ケーブル内の超電導状態を維持するための冷却性能の向上など、実用化に向けた課題に取り組んでいく方針だという。

限りあるエネルギーのロスをなくし、効率的にたくさんの人や物資を輸送する──。クリーンな鉄道網の構築に向けて、世界に誇る日本の鉄道による技術力のさらなる発展に期待したい。

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