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水素エネルギーをもっと手軽に!宮城県で水素サプライチェーンの実証事業がスタート

製造、貯蔵・輸送から利用までを低コストで一気通貫

環境負荷が少ないエネルギーとして、本格導入や普及が日々進行している再生可能エネルギー。地球温暖化対策の一助としてはもちろん、資源に乏しい日本にとって有効活用はまさに至上命題といえる。その中で、官民一体となって始まった、低コストでの導入が見込める取り組みに注目が集まっている。

生協が低炭素水素を配達

株式会社日立製作所、丸紅株式会社、みやぎ生活協同組合、宮城県富谷市の4者は、同市内における低炭素水素サプライチェーン構築に向けた実証事業の開始を発表した。

2018年8月の設備完成によりスタートした本実証は、1年以上にわたって設備を運用。2020年3月までにその成果をまとめる予定だ。

東日本大震災以降、水素エネルギーの推進に向けてさまざまな取り組みが行われている宮城県。本実証事業も、環境省が水素の低炭素化と本格的な利活用を通じて、中長期的な地球温暖化対策の推進を目的に実施する「平成29年度 地域連携・低炭素水素技術実証事業」に採択され、その実施に向けて準備が進められてきた。

実証実験の概要イメージ図

次世代クリーンエネルギーの一つとして関心が高まる再生可能エネルギーから生産される水素は、利用時だけでなく生成過程においてもCO2をほとんど排出せず、かつ効率的に活用できるのがメリットだ。半面、気象条件などによる発電量変動と連動して生成量が安定しないというデメリットもある。

そこで、余剰電力で水を水素に変換して貯蔵する手法がかねてより注目されており、また、それを効率よく安定的に運用するサプライチェーンの早期構築が求められている。

富谷市内のみやぎ生協・物流センターに設置された実証設備

今回4者が行う実証事業ではまず、みやぎ生協・物流センターの太陽光発電システムで発電。

発電した電力は水電解装置で水を水素に変換し、冷却・加圧で吸収、加熱・減圧で放出する仕組みの水素吸蔵合金カセットに貯蔵する。その後、みやぎ生協の既存物流ネットワークを活用して、富谷市内にあるみやぎ生協組合員の家庭3軒、みやぎ生協の店舗や市立日吉台小学校児童クラブ棟に配送。

届けられた水素吸蔵合金カセットは、あらかじめ設置された純水素燃料電池に取り付け、電気や熱に再変換することでエネルギーとして利用できる仕組みだ。

今回の事業で最大のポイントは既存のネットワークを利用する点。これにより低コストでの水素輸送を可能にした。加えて、各家庭に供給する水素エネルギーは太陽光による発電量が減少する夕方から夜間にかけての利用を想定しているため、一日を通した効率的なエネルギー使用が期待されている。

運用開始式であいさつに立つ日立製作所の真鍋 靖常務

8月3日にみやぎ生協富谷共同購入物流センターで行われた運用開始式には、土井 亨復興副大臣や村井嘉浩宮城県知事、若生裕俊富谷市長をはじめ多くの関係者が列席。その中で、水素を充填(じゅうてん)した水素吸蔵合金カセットを富谷市立日吉台小学校児童クラブ棟に配送し、燃料電池に取り付けるまでの一連の工程が会場内のモニターで生中継された。

今回の実証事業について4者は、「地産地消型の水素需給体制のサプライチェーンの実証」と位置付け、今後、富谷市で構築したサプライチェーンを宮城県内全域から東北地方、やがては全国へと拡大を図っていくという。

既存の配送ネットワークを活用するため、全国の市区町村への展開が容易な点からも、その重要性をうかがい知ることができる本実証事業。将来的な水素の民生利用やCO2排出削減に向けたモデルケースになりうるか、その動向に注目したい。

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