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従来サイズより大幅なコンパクト化が可能!?風力発電や船舶用の画期的な超電導バルクモーターが誕生

MW(メガワット)級の大型機へそのまま応用できる設計構造が特徴

金属や合金を低い温度に下げると電気抵抗がなくなる「超電導」──。エネルギーの損失が抑えられるという利点を持つこの現象を起こす物質は、MRIや2027年に開業予定のリニア中央新幹線が採用するなど、現在では応用技術が幅広い分野で利活用されている。そんな中、発電の効率化を目指し、これまで利用が困難とされていた「超電導バルク材」を使った風力発電向け超電導モーターの実証試験結果が公表された。再生可能エネルギーの一層の普及に向けて新風が吹き込むのか、その仕組みに迫る。

超電導モーターの可能性が拡大

東京海洋大学と日本最大手の鉄鋼メーカー・新日鐵住金株式会社、スイスに本社を構えるグローバル企業ABB Corporate Researchの三者からなる研究チームは8月3日、新方式の超電導バルクモーターの開発を発表した。

今回、研究チームは新日鐵住金が開発した高品質な超電導バルク材「QMG(R)」を採用。

超電導バルク材とは、超電導材料の結晶の塊で永久磁石と同様の形状で10倍以上の磁場強度があるもの。これを複数枚合わせて成形した大型磁石を組み込んだ、出力30kW級の試作機を製作した。実証試験では、実用化に向けて有益なデータが確認できたという。

超電導バルク材を採用した新たな方式の超電導バルクモーター

現在、世界の用途別電力消費量のうち照明や家電品、熱変換機器などを抑えて、全体のおよそ半分をモーターが占めている。そこからも推察できるように、モーターが消費するエネルギー量は非常に膨大。そのため、もし0.1~0.2%程度でも効率改善を図ることができれば、省エネやCO2排出量削減などの効果は当然大きくなる。

そんな中、モーターの高効率化を実現する一つの方法として期待されているのが、電気抵抗がゼロになる超電導技術を取り入れた「超電導モーター」だ。

従来の超電導モーターは、超電導材料を電線に加工して巻いたコイルを使っていたのだが、電線が切れると電気の流れが止まり、磁場が急速に減少する結果、モーターが動かなくなるという大きな問題を抱えていた。

しかし、今回の試作機のモーター内部の磁石に用いた超電導バルク材では、従来のコイルと比較して小さいサイズ・寸法で、10テスラ(磁束密度の単位)以上の高い磁場の発生が可能となっている。

30kW級実証試験機のシステム概念図

これによって大型超電導機器のコンパクト化&高出力化が現実のものとなり、風力発電や電気推進船などの輸送システムへの応用が期待できるという。

開発したユニットはそのまま他の機器に流用可能

現状の問題を打破するべく、研究チームが開発したモーターの特徴は以下の3つ。

(1)モーターの回転子(ロータ)に組み込む超電導磁石(界磁極)として、成形した超電導バルク材を組み合わせて構成する、新しい界磁極ユニットを導入
(2)そのバルク界磁極ユニットをモーターに組み込んだ状態で、容易に励磁(れいじ/磁化していない強磁性体を磁化すること)できる新しい着磁方式の考案・採用
(3)小出力からメガワット級大出力まで、バルク界磁ユニットの標準化が可能

特に注目すべきなのが(3)。これまではそれぞれ専用設計が必要だったが、同一の規格・寸法のまま、高性能な界磁極ユニットを提供できるという。つまり、今回の実証で用いられた30 kW実証機の設計構造を用いて、MW(メガワット)級の大出力機まで容易にスケールアップが可能なのだ。

バルク界磁極ユニットのイメージイラスト。超電導バルク材を複数個収納して一つのユニットを構成する

30kW試作機の内部構造図。回転子の周りにバルク界磁極ユニットを配置する

実証実験では、最長360時間の連続負荷試験を含め、総計700時間にも及ぶ連続試験運転を実施。異なる回転数や負荷の状況などの実回転試験を行うことで、実用化に向けた懸念事項の一つである“減磁の問題を含めた超電導バルク材の挙動”について検証した。

結果、バルク材の超電導モーターへの応用で懸念されていた負荷運転中の界磁極ユニットの温度不安定性やバルク磁石の減磁の可能性に関しては、良好な温度安定性(±2℃以内の温度変動)を保ち、かつ磁場も十分持続的に安定(減少率は磁場センサの誤差範囲内である1%以下)していることが確認されたという。

なお、今回試作した実証機は、前出のバルク界磁ユニットを4極持つ小型のモーターであるが、その最大トルクは537Nm(ニュートンメートル)で、これは超電導バルク材を使用したモーターとしては世界最高値になるとのこと。

今回の成果により、風力発電や電気推進船、その他の輸送システムなどに導入できる新しい方式の大出力かつ高効率モーターの誕生が現実味を帯びてきた。

超電導になっても風力発電の風車の羽の直径が変わることはないものの、モーターや変速機部分を格納するナセルと呼ばれる部分が小型かつ軽量になる可能性がある。風からエネルギーを取るしくみは同じだが、超電導発電機によって変換効率を最大限、かつ風力発電のタワー(鉄塔)のトップが小さく軽くなるという利点も。

コンパクトなサイズで10テスラの磁場を発生させるということは、低速で高トルクの推進動力(船など)において、船内スペースが小さくなるため、さらに貨物を積載できるようになるほか、船の形を設計し直して船体抵抗を減らすなど、たくさんのメリットがあるという。そして陸上でも、大型トラックの推進動力として高馬力の性能・実力を遺憾なく発揮する日が来るかもしれない。

再生可能エネルギーの利用拡大、その先にある持続可能な社会の実現に向けて、待ったなしの開発に期待したい。

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