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農業に大革命の予感?電気も水も畑もいらないハイテクファーム

水がない砂漠地帯をはじめ、電気・水道など社会インフラの整っていない環境下への設置も可能

私たちの糧となる食べ物の多くは農業によって生産されている。そして、これまで農作物の安定供給には広大な農地に加えて大量の水(淡水)が必要とされてきた。しかし、その常識を打ち破る究極の農作物生産システムが誕生したという。食料危機、飢餓問題など私たちが抱えるさまざまな困難の克服を期待させる仕組みの詳細をご紹介する。

太陽光を動力に空気から水を生産し使用水量95%カット

人が活動するために必要なエネルギー源である食料──。

何万年も前の人類社会ができた時点で始まったとされる“農業”は進化を重ね、人類は食料を安定して手に入れることで繁栄を謳歌(おうか)してきた。

だが、日本をはじめ先進国では、スーパーやコンビニなどで簡単に食料が手に入る一方で、世界にはいまだ飢餓で苦しんでいる人々も多い。

国連食糧農業機関(FAO)によれば、現在、世界人口が約73億人といわれる中、2017年にはその11%の約8億人(およそ9人に1人)が飢えに苦しんでおり、今後その比率は更に増えると予測されている。

農業を行うには農地はもちろんだが、水も欠かせない。

人間が利用する淡水の約70%は農業用水である。近年の温暖化や砂漠化の影響により、飲み水よりも食料生産に用いる農業用水の確保がますます難しくなっているなど、世界的な食料危機が懸念されている。

もし仮に露地栽培でトマト1個を作ろうとした場合、必要な水量は約50L。牛丼一杯を作るとなると、米や牛の飼料の栽培生産で実に約2トンもの水が必要になるとされ、農業用水の枯渇が社会の存続すら危うくする。

故に、降雨量が少ない国での農業は必然的に厳しくなる。例えば、砂漠地帯では海水淡水化装置を用いて海水から淡水を作り出し、農業利用されている。しかし、この装置は大規模なプラント設備が必要なため莫大なコストがかかる。また、作り出した淡水の何倍も高濃度の塩水と化学物質を排出してしまうなどさまざまな課題が存在する。

こうした問題の解決策になり得ると目されているのが、空気中の水分を取り出すシステムだ。特に近年ではその進歩が著しく、海水淡水化装置に代わる高効率なシステムとして注目を集めている。株式会社HIPOWER及び同社のグループ会社(以下、HPグループ)が有するソーラー発電システムと水生成装置elixir(エリクサー)もその一つだ。

elixirの小型モデルelixir 100Lタイプは家庭用の小型冷蔵庫程度の大きさで、1日100リットル(消費電力1.3kWh)の水を生成する

しかし、仮にこのような水生成装置の抽出効率が何倍も高まったとしても、空気中の水分からのみでは農業生産をまかなうだけの水量確保は困難である。

また、水耕栽培や植物工場など人工的な施設栽培の進化で露地栽培よりも水が節約できるようになってきているとはいえ、水の節約以上に設備・運用コストがかかってしまうケースがほとんど。そのため、根本的な水不足や食料不足に対するソリューションとするにはまだまだ大きな課題を残していた。

そうした中、ネイチャーダイン株式会社が独自の革新的な栽培技術をベースに驚きの農業システムを発表した。

これまでに同社が提供していた農地や電気が不要の⾃動農業⽣産システムSoBiC(ソビック)に、前述のソーラー発電システムと⽔⽣成装置elixirを連結。これにより別途⽤意する必要があった⽔すらも、太陽光と空気からその場で⽔を作りだせるようになったという。

既存のシステムを組み合わせて農業生産効率を大幅UP

SoBiCは電気も機械も使わず、太陽の日射熱を動力源にしたシンプルなフリーエネルギー駆動の自律型自活駆動システム(特許取得済み)。植物の生態活性に準じた完全な水の循環構造で、水の利用にまったく無駄がなく、手間をかけずに効率良く育てられる仕組みになっている。

ちなみに実証実験では、中玉トマト一個を栽培するにあたり水を2L以下に抑えることに成功。これは理論値ではあるが、露地栽培との単純比較で実に95%以上もの水の節約ができている計算となり、設備コスト、運用コストいずれも大幅に抑えることが可能で、人工栽培システムとしては異次元の生産性を確立しているのが特徴だ。

SoBiCの機能サイクルイメージ

このように農業用水を節約できるシステムが普及すれば、水不足対策に大きな効果が期待できる。

加えて、今回発表されたシステムのように、水生成装置elixirとそれを稼働させるための電力をソーラー発電で補うシステムと組み合わせることで、周辺環境や設備に依存せず、その場で作った水を農業生産用に使用できる点も注目だ。

これはつまり、太陽の光さえあれば、農地でなくとも場所を選ばず、極めて高い効率性で安全な水と食料が安定的に生産できるということに他ならない。

SoBiCはシンプルな構成のため、利用用途や生産用途に応じでさまざまなシステムを組み込める

SoBiCによる自動水循環システムの動作検証

この点についてネイチャーダインは「現在栽培されているあらゆる農作物にSoBiCは展開可能です。また、農地を作るための自然資源や生産環境の構築から試算すれば“従来の農法や農業システムの数十倍”の農業生産効率にもなることから、世界が抱えている水不足の課題に対しても有効であると考えます。SoBiCのように少量の水でも農業生産用として十分に成り立つ仕組みにソーラー発電システムと水生成装置elixirのような水源を作りだせるシステムパッケージであれば、食料危機などの問題にも抜本的な解決策にもなります」と期待を寄せる。

また、「このような組み合わせをさらに簡素化・高精度化するパッケージの開発を進めるとともに、さまざまな国や地域の環境条件に応じてシステム構成などをカスタマイズすることで、より有用で高効率なソリューションの組み合わせパターンも無限に創り出せる」と展望している。

一方、HPグループは既に同社の小規模なテストプラントで、SoBiCシステムを設置して実証試験を開始。今後もネイチャーダインと協調してさらなる効率的なパッケージソリューションの開発を進め、世界展開を目指す方針だ。

HPグループが千葉県に保有する太陽光発電+水生成(elixir 100L)のテストプラント。ことしの4月よりSoBiC-PRO及びSoBiC果樹園システム数台を設置して、栽培実証試験を開始している

かつて18世紀のイギリスで起こった農業革命同様に、農業の可能性を切り拓く今回の発表。

飢餓問題はもちろん、今後予想される食料危機の解決に向けてさらなる発展に期待したい。

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