理系女子の履歴書

分子生物学に光を!よりよい研究環境を作るための理系女子流メソッド

東京大学 大学院理学系研究科 博士課程 Reina+Worldさん【後編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第15回は、東京大学 大学院理学系研究科の博士課程に通うReina+World(レイナワールド)さん。実は彼女、サイエンスコミュニケーターとして、科学の面白さを広める活動にも尽力している。そこには、これまでの自身の研究生活で感じた、ある危機感が関係していた。「科学の世界の風通しを良くしたい」と語る彼女の夢とは。

分子生物学を知ってもらうために音楽活動?

東京大学 大学院理学系研究科の博士課程で、ミツバチの脳で働く遺伝子に関する研究を行うReina+World(以下、レイナ)さん。多彩な顔を持っていることは前編でも触れたが、研究と並んで力を入れているのが、一般の人々と科学の世界をつなげるサイエンスコミュニケーターだ。

その内容は主に子供たちに向けたものだが、その活動をひもといてみると、科学業界に対する危機感が見え隠れしていた。

「そもそも、違和感を持ったのは大学2年生のころです。分子生物学の基礎研究を始めたとき、一般の人に向けた宣伝が足りないというか、工学部や医学部と比べて、どこかクローズドな雰囲気を感じたんです」

「年齢や性別を問わず、みんなにもっと知ってもらえたらいいのに、そういう機会が全然ないんですよね」

憧れていた研究現場のイメージとのギャップ。深く関わっていくほどに、その違和感は強くなっていったという。何かに追われているような余裕のなさ。特に若手の研究者は焦っているように見えた。その原因の一つが、研究資金不足だとレイナさんは考えている。

「ちょっと生々しい話ですが、一般の人に知ってもらって研究内容に人気が出れば、応援してもらえて、研究資金も増える。それってどの世界でも当たり前のことなんですけど、それができていないなと思ったんです」

この状況を何とかしなければ――。世間ではちょうど、“理系女子”という言葉がメディアをにぎわしていたころでもあり、「さかなクン」や「米村でんじろう」先生のような存在が、分子生物学の世界にも必要なんじゃないかと考えたそう。そのような使命感から、レイナさんはサイエンスコミュニケーターを目指すようになる。

その行動力は、彼女を別の方向にも進ませる。なんと分子生物学の専門用語を歌詞に織り交ぜた楽曲を作り、アイドル・シンガーソングライターとしてもデビューしたのだ。

「2歳半から高校生までヴァイオリンをやっていて、そのころは、ちょうど音楽が恋しくなっていた時期でもありました。普通に聴いているとアイドル曲やEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)だけど、いつの間にか分子生物学の専門用語を覚えてしまっている、みたいな曲を自分で作っています」

子供向け科学教室は一石三鳥!やるならとことんが「Reinaゼミ」

「自分が人前に出ることで、少しでも分子生物学の宣伝活動ができたら、そう思ったんです。でも、エンターテインメントを入り口にするには、当然売れないといけないので、少し荷が重いなぁ……と思うところもあって(笑)。かといって、他にアイデアも思いつかず、日々悶々としていました」

博士課程に進んでからも芸能活動を続けていたレイナさん。そんな彼女が子供向けの科学教室を始めるきっかけとなったのが、埼玉県ふじみ野市にある環境学習館「えこらぼ」からのオファーだった。

「科学の先生をやってほしいと言われて。それまで大人向けの活動はしていたものの、小さい子供向けのものは経験がなかったので最初は悩みました。でも、よく考えてみたら子供向けのイベントって、親御さんも一緒に来るじゃないですか。ということは、ご両親にも科学のことを知ってもらえる機会になる。それはきっと大きな影響力があるし、子供が将来、科学の世界に入るきっかけとしても、すごくいいなって思って引き受けることにしたんです」

「平日は研究、週末はイベント。イベントがなければ、家事をしたり作曲をしたりして過ごしています」

幸い、千葉大学在学中に高校科学の教員免許を取得していたレイナさん。難しいことをかみ砕いて教えることは得意だった。今では、百貨店などでも「Reinaゼミ」という科学教室を開くほど人気があり、未就学児から高校生まで幅広い年齢に科学の楽しさを広めている。

「学校では教えてくれないような、本格的なことも気軽に学べる。そういう場になるよう心掛けています。これは私自身が経験したことなんですけど、小学生のとき、学校ではまだひらがなしか習っていないのに、カタカナと漢字を書いて先生に怒られたことがあって、すごく悔しかったんです。だから私は、できるところまで精一杯教えてあげたいって思うんです」

伊勢丹 新宿店で「体験!発見!科学実験!Reinaゼミ」を開催。子供たちと一緒に、魚形の醤油差しを使って、ペットボトルの水の中を浮き沈みする「浮沈子(ふちんし)」という簡単な実験装置を作った

科学的に見えれば失敗ではなく条件の違い

そしてもう一つ、レイナさんがサイエンスコミュニケーターとして大切にしていることがあるという。それは「たとえ失敗しても、それは大事なことだと教えること」だ。

「最近、楽しく感じるのは、父と行く虫取りと、研究帰りにする筋トレです!」

「例えば、同じものをみんなで一斉に作っても、簡単にできる子もいれば苦戦してしまう子もいます。みんなと同じようにできないことが大半です。多くの子供と親御さんは、それをネガティブに捉えてしまいますよね。でも科学的に見ると、それは失敗ではなく、条件の違いでしかないんです。科学は、みんなと同じようにいかないことが面白い。そこに新しい発見があるんです。そういう意味で、失敗も大切なこと。そこから自然界の謎がひもとかれていくんだよっていうことを、ちゃんと伝えていきたいと思っています」

そうやって科学が正しく理解され、広まっていくことが、巡り巡って科学の世界に新しい風を吹き込むことにつながると、レイナさんは確信している。

「研究に興味を持ってくれる人が増えて研究資金が行き渡るようになれば、ゆとりを持って研究することができるようになる。そうすれば、若手研究者ものびのびと打ち込めるようになるはずです。いつか、それが当たり前な世界を目指したいですね。ニッチな研究でも、こんな世界があるんだって面白がってもらったり、知ってもらえたりすることで、いいサイクルが生まれていく。大変かもしれないけど、そういうプラットフォームを生み出すきっかけに、私がなれたら。それが最終目標です」

「理想の上司像は、理不尽じゃない人。合理的なアドバイスをくれる人がいいです」

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