理系女子の履歴書

【東工大・中塚星来】がん治療を研究したい!遺伝子組み換え技術でがんが治る世界へ

東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系 3年 中塚星来さん【後編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第18回は、東京工業大学で生命理工学を学ぶ中塚星来さん。前編では彼女の夢と、それを抱いたきっかけを紹介したが、後編では、その夢をどんな研究にぶつけていくのか、今のリアルな思いを聞いた。

病院で気づいたやるせなさ…自分にできることは何か?

「日本の健康寿命に貢献したい」という夢を掲げる、東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系3年の中塚星来さん。高校時代に「未病」(病気を発症してはいないが、健康とも言えない状態)の対策に興味を持った彼女だったが、大学に入学した当初は医学や農学といったさまざまな分野に興味があり、進みたい方向性が定まってはいなかった。しかし今、医療分野を深く知りたいと考えているという。

「きっかけは家庭教師のアルバイトです。生徒に開業医のお子さんがいて、いつもクリニックの2階で授業をしているんですが、そこは医学の本に囲まれていたり、看護師さんも忙しく働いていたりという環境で。そこに行くと、救急の患者さんを目にすることもあって、私も何か力になれたら…と感じることがあったんです。でも、今の自分では何もできないんですよね。お医者さんを助けられる研究をすれば、困っている人たちの役に立てるかもしれない。そこで、医療分野の研究に進もうと決心したんです」

「家庭教師をしている子とは仲が良くて、一緒に買い物に行くこともあります」

そんな中塚さんは、希望する研究室をそろそろ決めなければならない時期であることは前編でお伝えしたとおり。5つほどまで候補を絞ったというが、まだまだ悩んでいる真っ最中。その中でも、一番魅かれているテーマは「がん」だ。

「父方が代々、肺がんを患う家系なので、がんはとても身近な病気。そのがんを完治させられる日が来れば、きっと健康寿命は劇的に延びることになるはずだと思ったんです」

「好きなことは歌うこと。いつも小さな声で歌いながら歩いているんですが、駅のホームでは、電車が通過するときだけちょっと大きな声で歌います(笑)」

米国留学で未病の重要性を実感

少しずつやりたいことが定まってきた中塚さんだが、研究室を決めるにあたって「がん」の次のキーワードとなるのが「未病」だ。高校時代の修学旅行をきっかけに知ったことだが、今でも彼女の行動を決める核となっている。

「よくよく考えてみると、未病の考え方は昔から身近にあったんです。一番は、ずっと通っている地元の歯医者さん。治療では極力歯を削らないという考えの先生で、生活習慣を改善することで虫歯にかかりにくくしたり、食べ物で歯並びを良くしたり、まさに未病対策をいつも指導してくれていたんです。歯医者さんなのに、食事指導もしてくれて、牛乳じゃなくて豆乳を飲みなさい、肉じゃなくて魚を食べなさいとアドバイスしてくれます」

「自分が理系だと思うのは、例えばコーヒーを飲むときに『カフェインで、このホルモンが活性化されている!』っていつも考えちゃうことです」

その歯科医師との会話の中で、米国では「どうやったら病気にならない生活ができるのか」という未病研究が進んでいることを知る。そこで、ことし2月、シアトルのワシントン大学へ短期留学した。そこでは未病の考えの重要性を大きく実感する出来事があったという。

「日本の授業は、なってしまった病気をどう治療するかに重点を置いているイメージがあるんですが、アメリカの授業は、地域レベルで健康を維持するためには何に取り組むべきかというディスカッションがとても盛んだったんです。グループごとに話し合ってプレゼンする授業は、とても活気があって。未病の概念が広まっているんだなあ、と思うのと同時に、やっぱり未病対策は大切なんだと知った瞬間でした」

「短期留学で体験できたことがとても良かったので、次はアメリカへの長期留学も考えています」

本当は興味のある研究は全部やりたい!

今、中塚さんを悩ませているのは、がん研究の中で2つにまで絞った研究室の、どちらを志望するかということだ。一つはがん治療に関する研究室。がん細胞を光らせて見えやすくし、手術で切除しやすくするなど、がん治療の手法を研究している。もう一つは、遺伝子解析によってがんを早期発見し、未然に治療する術を研究している。

「どちらも魅力的なのですが、どちらかと言えば“早期発見”の方に傾いています。遺伝子組み換え技術を応用して、そもそも“がんにならないようにする”という内容なので、とても興味があるんです。まだ実用化には遠いでしょうけど、いずれそういうことができる時代が来たときに、役に立てる人間になっていたいなって思うので」

「理想の上司は、一方的に教えるのではなく、自分を信頼して仕事を任せてくれる人です」

それはまさに中塚さんが魅力を感じている未病の対策であり、理想的な研究だろう。しかし、これも彼女が触手を伸ばす興味の一端でしかない。まだまだ気になっている研究は他にもあるという。

「睡眠時計に、におい、2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典栄誉教授の研究室も気になっていて…。優柔不断と言えばそうなんですが、いつも興味が散漫で、一つに決められないんですよね」

「日本という国が大好きなので、日本に貢献できることがしたいんです」

いろいろなことに興味を抱けば、それだけ“何か”を知る機会も多い。中塚さんは、知識の収集だけで終わらせず、行動につなげられる力も備えている。パワフルに動く、そのエネルギーの源は何なのだろうか。

「友人だと思います。意識を高く持って勉強している人が多いですし、国際的な視野を持った人も周りにたくさんいます。そういう人たちと接していると、『私も埋もれないようにしなきゃ』と感じてしまうんですよね。切磋琢磨できる環境が、私のエネルギーになっていると思います」

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