理系女子の履歴書

【東工大 理学院・伴沙弥果】大学で気付いた化学の面白さ。彼女が描く理想の研究者像とは?

目指すは企業の研究職。たくさんの人に影響を与えられる製品開発を手掛けたい【後編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第19回は、東京工業大学 理学院 化学系 修士課程1年の伴沙弥果(ばんさやか)さん。有機半導体への応用が期待される基礎研究に力を注ぐ彼女。近い将来就きたい仕事は、企業の研究職。後編では、思い描く理想の研究者像について聞いた。

面白いのはメカニズム。化学に魅了された理由

炭化水素の一種であるルビセンを用いて、まだ世の中に存在しない新しい物質を合成するべく日々研究に励んでいる伴沙弥果さん。前編では夢中になっている研究の今を語ってもらったが、そもそも彼女が化学を好きになったのは小学生のころ。理科と算数が得意な女の子だった。中学受験を経て、地元では最難関の女子校に進学。そこで化学好きを決定づける出来事があった。
※【前編】の記事はこちら

「あるとき、教科別の成績分布表を見たら、学年で私だけが化学で10段階中10の評価を取ったことがあったんです。『私、もしかして化学ができるのかもしれない』と思って、一気に化学が好きになりました」

「両親は文系大学の出身なのですが、親戚には薬剤師や研究者もいて。親戚で集まったときに褒めてもらえるのが素直にうれしくて、勉強も頑張れました」

その後入学したのは上智大学。そこで、化学の本当の面白さに気付く。

「有機化学を専攻していたのですが、そこで初めて化学反応のメカニズムを学び、なぜその化学反応が起きるのか、その理由を自分で考える、という場に立ったんです。そのとき、高校生までの化学は学問じゃなく、ただの暗記だったんだなって気付かされました」

大学で化学反応のメカニズムを学んでいくうちに、初めて見る反応でも、「なぜそうなるのか?」が想像できるようになった。その面白さが、彼女を化学の道へと深く引き込む大きなきっかけになったという。

「かわいい食べ物が好きなので、休日はカフェに行ってパンケーキを食べたりして過ごしています」

学部時代に不完全燃焼…次は悔いを残したくない

そんな伴さんが学部時代に専門としていたのは、有機化学の中でも有機金属化学という分野。当時所属していた研究室では、ジルコニウムを用いた有機金属化合物の合成を主に行っていた。

「研究テーマは『五員環アレン錯体のヒドロメタル化反応』というもので、五員環アレン錯体(医薬品や農薬の合成に有用となる有機分子)とさまざまな試薬(試験研究用の薬品)を反応させて新しい有機分子を合成したり、新しい反応を見つけたりすることがミッションでした。ただ、当時はあまり思うように進まず、悶々とした日々を過ごしていました。だから研究自体がうまくいったかというと、はい、とは言えません。中途半端なところまでしか進められなかったのが心残りで……」

「中学、高校と女子校に通っていました」

大きな失敗をしたわけでもなかったが、かといって何かを発見できたわけでもない。しかし、そんな中でも伴さんは腐らず、卒業論文までには研究をなんとか形にした。

「楽しくなかったわけではないし、得たものがなかったわけでもありません。五員環アレン錯体というのは、現在私が扱っているルビセンよりも不安定な物質。全ての反応をアルゴンという気体の中で行わなければならない繊細なものなのですが、その扱い方や実験の操作をしっかりと身に付けることができたからこそ、今の研究室にも、すぐになじむことができたのかなと思います」

「怒られるのは好きではないけど、割と何を言われても平気な方。見返してやろうという気持ちになります」

不完全燃焼だったがゆえに、高い目標をもってその先に進んだかと思いきや、大学院進学を決めたのは、「理系の学生は大学院に行くものだと思っていた」から。東京工業大学を選んだのも、上智大学在学中に恩を受けた教授が東京工業大学出身だったからだとか。

「割と軽い気持ちで選んだのは確かです(苦笑)。でも、東京工業大学に入らなければ絶対に出会わなかったであろうレベルの高い人たちと一緒に研究をすることができているので、結果としては良かったなと思っています」

世界を豊かにできる研究者になりたい!

伴さんの将来の夢は研究者。特に企業の研究職に就きたいと考えている。そろそろ就職活動を始めなくてはならない時期で、既にインターン先も数社決まっているそうだ。

「学部に通っていたころは、個人経営の小さな居酒屋でアルバイトをしていました。普段の生活圏では出会わないような大人の方と話せる機会は貴重でしたね。研究室に所属してからは、研究ばっかりでしたけど」

「インターン先で研究者の方に話を聞く機会があったのですが、皆さんすごく生き生きとしているのが印象的でした。例えば目薬を作っている方は、被験者に使ってもらったら、実際に効果が出てすごくうれしかったとか。ガラスの研究をされている方は、現在世界中で使われているあるガラスは自分が作ったものだということに誇りを持っていらっしゃいました。企業研究者は商品を開発します。それが“世の中の人のため”になっていることが実感できることにすごく憧れます」

企業の研究職であれば、長くとも数年ごとに開発に関わった新しい製品が社会に発表される。少なくとも数年ごとに大きな達成感が得られる企業の研究職の方が、仕事は続けやすいし、自分にはきっと向いている。そんなふうに考えているそうだ。

「目の前にいる人だけでなく、開発した製品を通じて不特定多数の人に影響を与えられる研究者が理想です。世の中の人たちの生活を豊かにできるような製品開発に携わっていきたいと思っています」

「理想の上司は、足並みをそろえて一緒に歩んでくれる人。引っ張るタイプではなくて、支えになることで、個人の色を引き出してくれるような」

理想に近づくためにも、「今は自分の研究をしっかりとやっていきたい」と伴さんは意気込む。

「今進めているルビセンの研究がうまくいって、新規化合物を作ることができたとしても、それだけでは修士論文は書けません。その化合物が、どういう性質を持っているのかまで研究を深めていく必要があります。その道のりは……たぶん結構長いです。なので残りの1年間、さらにペースを上げていきたいと思います」

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