理系女子の履歴書

創薬研究者を目指す理系女子!母国ネパールに薬を届けたい

近畿大学 薬学部 創薬科学科 4年 サリタ・シュレスタさん【前編】

美しき理系女子学生の現在と、夢を実現するためのエネルギーに迫る「理系女子の履歴書」。第14回は、近畿大学 薬学部 創薬科学科 4年のサリタ・シュレスタさん。高校時代に決意した日本留学。若くして母国ネパールの社会問題を意識したその背景と、将来実現したいビジョンとは。

自国で薬を生産できるようにしてネパールに貢献したい!

ネパールの首都、カトマンズから日本に来て丸6年。現在、近畿大学 薬学部 創薬科学科 4年のサリタ・シュレスタさんは、製薬会社の研究者を目指す理系女子だ。そもそも彼女が薬学の世界に興味を持ったのは、母国の医療事情がきっかけだったという。

「ネパールはスパイスとハーブの国です。病気になったら、病院で診てもらうよりも先に、家にあるスパイスやハーブを煎じて飲むのが一般的なんです。私も小さいときから、カゼをひいたら漢方薬をよく飲んでいました。そんなこともあって、なぜ植物が病気に効くんだろうと不思議に思っていたんです」

「日本ではずっと大阪で暮らしているので、大阪弁が好き。標準語はしゃべれません」

一番興味があったのは「植物の種類によって効能が違うのはなぜ?」という点。幼いころから研究者的な視点を持っていたというサリタさんだが、高校生にもなると、より現実的な問題にも着目するようになる。

「ネパールは製薬会社がすごく少ないんです。だから大半の薬は海外からの輸入に頼っています。もしも自国で薬を作ることができたら、もっとたくさんの人に、もっと安く薬を届けることができるのにと思ったんです」

これはネパールに限ったことではなく、開発途上国では非常に重要な問題となっている。医薬品は人類共通の財産であるにもかかわらず、さまざまな理由から本当に必要としている人の元に届かないという現状があるのだ。

「薬を買うお金がない人たちはネパールにもたくさんいます。本当に薬を必要としている人に使ってもらいたいです」

「病院がそもそも少ないし、あってもほとんどが首都のカトマンズに集中しています。病院へ行くためには険しい山を越えないといけない居住エリアもあるので、そこからだと歩いて半日〜1日かかることも。そういう人たちにも買える漢方薬を、ネパールにあるスパイスやハーブから作ることができたらいいなと思っています」

日本留学の大チャンス!努力の末に夢の切符を勝ち取る

そんな使命感にあふれる夢を抱いたサリタさん。しかし、ネパールは教育面でも少なからず問題を抱えており、彼女が求めた薬学を学べる環境が整っていなかった。一度は諦めるしかないかと思われたが、たった一つだけ道があった。それが当時通っていた学校にできた近畿大学附属高等学校(以下、近高)への編入制度。ただ越える壁は高かった。

「親が医療関係者だったわけではないので、特に周りに薬学に触れるような環境があったわけではありません。両親は今も故郷で小さな飲食店を営んでいます」

「カトマンズにある『ニュー・ホライズン・アカデミー』(NPO団体などの支援によって、教育を受けられない子供たちのために運営されている私立学校)という学校に通っていたのですが、ここの校長先生の計らいで、近高へ編入できる奨学金制度が在学中に作られたんです。それで私は日本への留学を決意しました。でも、編入できるのは学年で成績が一番になった生徒たった1人。とにかく勉強を頑張りました」

ネパールでは当時、日本で言う幼稚園から高校1年生までの教育に相当する10年間を同じ学校で学ぶ教育システムが基本だった。この制度を利用した場合、ニュー・ホライズン・アカデミーを卒業した後の高校2年生から近高へ編入することになる。日本で薬学を学びたいサリタさんにとって、逃すわけにはいかない大チャンス。科目を問わず高い成績を求められたが、努力のかいあって見事、日本への切符を手にすることができた。

留学直後は、「科目によっては日本の方が進んでいたので、また頑張る必要がありました(笑)」と当時を振り返る。特に数学は、”インド式計算”などのように国によって思考のプロセスが違うため苦労したという。

「逆にネパールでは英語の教育が進んでいて、小さいころから英語の教科書を使っているほどです。なので、同じクラスの友達に、英語を教える代わりに数学を教えてもらったりして、何とか追い付こうと頑張りました」

「でも、やっぱり一番大変だったのは日本語でしたね。ネパールの学校には、日本人のボランティアさんが日本語を教えに来てくれていたこともあって、日常会話はある程度できる状態で来日したんですが、漢字が全く分からなくて。教科書が読めなかったんです。でも、クラスのみんなが優しくて、手分けして私の教科書の全ページに読み仮名を振ってくれたんです。すごくうれしかったし、そのおかげで日本語も覚えることができました」

ネパールの植物を生かした天然薬物の開発が目標

その後、近高から推薦入試をへて進学した近畿大学でも持ち前のポテンシャルを発揮し、1年生の後期から現在まで、成績は常に学年で3位以内という素晴らしい結果を収めている。

「勉強が得意というよりは、暗記が得意なんです。薬の名前とその効果とか、そういったことならすぐに覚えられます。いまだに計算は少し苦手ですが、薬学部で数字を扱うのは、データをまとめるとかグラフを作るとかくらいなので助かっています(笑)」

「自分を理系だなと思うのは、作文が苦手なこと。特に理系は使う単語も専門的なので、人に説明するのが難しいですね」

春からは同大大学院へ進む。進学を決めたのも、その後のビジョンが明確だからこそ。

「私のように、薬学を学ぶために留学をする人は、ネパールでも少しずつ増えてきています。ですが、そもそも国内に製薬会社自体が少なく、受け入れ先がない。なので、留学しても、その国から戻ってこなくなってしまい、結果的にネパールの製薬技術がなかなか進歩していきません。私も大学院の卒業後は日本の製薬会社に就職したいと考えていますが、経験を積んだら必ず帰国して、将来は研究者としてネパールの役に立ちたいです」

「大学でエネルギーをもらえるのは、構内にあるCNNカフェ。ずっとCNNのニュースが流れていて、世界中のことが分かるし、雰囲気が好きです」

「最低でもあと5年は日本で創薬研究を続けていきたい」というサリタさんは現在、所属する研究室で睡眠の質を改善する植物成分の探索研究を担当している。既に実現の可能性を示唆する発見をするなど、創薬研究者としての才覚を発揮しているようだ。それはもちろん才能だけでなく、ひたむきに努力するサリタさんだからこそできたことだろう。後編では、まさに今進めている研究について詳しく聞いていく。

<2019年3月22日(金)配信の【後編】に続く>
世紀の発見!?理系女子の創薬研究で実現するかもしれない睡眠の質の改善方法

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