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ドローンのビジネスチャンスは土木現場にある

テラドローン株式会社 最高執行責任者 関 鉄平

スポーツ中継や映画の撮影、無人宅配など輸送手段、さらに小型機を使ったスポーツ競技など、ドローン(無人航空機、UAV)に関する新しいビジネスが生まれる中、日本国内では測量や点検といった用途での活用が急速に進んでいる。その市場をけん引する企業の一つであるテラドローンの最高執行責任者・関鉄平氏に、日本におけるドローンビジネスの今を聞いた。

土木分野に商機あり

「GoPro(ゴープロ)などアクションカメラの普及と共に空撮用途から広がったドローンですが、カメラやレーザーセンサーなどを搭載すれば測量や観測が可能になるため、自然とその分野での活用が広がっています」

ドローンを使ったビジネスは、まず動画や写真の撮影から始まっている。それまでヘリや飛行機を手配しなければ難しかった上空からの俯瞰(ふかん)映像、特に映画やスポーツ中継などで利用されていった。

関氏は、もともとテラモーターズというEVバイクのベンチャー企業を創業したメンバーの一人。AIやIoTといったイノベーションに興味を持ち、常に新しいビジネスの模索を続けていた中で、同社がドローンビジネスを立ち上げるとなったとき、赴任していたインドから帰国した。その関氏が真っ先に目をつけたのが土木分野だ。

関氏が立ち上げメンバーとして参画したテラモーターズは現在、インド、バングラディッシュ、ベトナムなどでメイドインジャパンのEVメーカーとして人気を誇る

「とりわけ日本では、『i-Construction(アイ・コンストラクション、i-Con)』を政府が進めていることもあり、土木分野での広がりが加速しています」

i-Conは、土木分野においてICT技術を積極的に活用しようとする取り組みで、生産性を高めるとともに、人材不足や担い手問題の解消につながるとして注目されている。

大手デベロッパーや重機メーカーは、GPS、各種センサー、クラウド技術を使ったショベルカーやブルドーザーの自動運転やオペレーター支援技術を開発し、現場に投入。これらの重機を使えば、練度の低い若手のオペレーターでも、設計図通りに整地したり、穴を開けたり、崖を削ったりが可能になる。

そして、このときに欠かせないのが、現場の詳細な3D情報。それらに搭載されているコンピューターは、詳細なモデリングデータを基にGPSやセンサー情報を駆使することで図面通りの動きが実現できるからだ。

「以前なら、現場の3Dデータを作成するには、地上で人手による測量をひたすら行うか、カメラ画像や測定器データから行うしかありませんでした。ドローンを使えば空撮写真から現場全体の3Dデータを起すことができ、必要ならばカメラの代わりにレーザースキャナを搭載して、植生下でも詳細なデータを短時間で測定することが可能です」

インフラや構造物の点検にもドローンが利用されている

日本の規制はむしろ甘い?

これらの用途において、海外の状況はどうだろうか。

「映画撮影など動画撮影や、農業への利用などではアメリカやオーストラリアが進んでいる面がありますが、土木やインフラ点検では日本の方が進んでいると思います」

その理由の一つは、前述した政府肝入りのi-Constructionによる後押しがある。狭い国土の日本で住宅地でのドローン飛行は制限されているが、航空法の管轄官庁でもある国土交通省は、災害時の活用も含めてドローンの活用(自動化・ロボット化)には積極的だ。民間でも、オペレーターの育成やスキル認定の取り組みが活発化し、練度向上や機器試験などが行えるドローン飛行場の整備も進んでいる。

「ドローン技術は、実は軍事的な側面も持っているんです。そのため、アメリカ、中国、インドといった軍事大国ほど、規制が厳しいという現実があります」

軍用ドローンは日本も無関係というわけではないが、少なくとも日本において、ドローンの運用や飛行に関する規制や基準は、主に航空法での安全性、都市部・住宅地での安全性やプライバシー問題が優先されている。先ほどのi-Conのように産業等への展開、活用を推進しているぶん、日本はむしろ先を行っているとも言えるだろう。

しかし、問題がないわけではない。

「それは技術的なものより社会認知。いまだに『おもちゃではないのか』『落ちたりしないのか』といったイメージを持つ人が少なくないんです」

ドローン本体の制御技術、モーター出力、バッテリー性能など、ハードウェアの技術は年々向上している。オペレーターについても前述のように育成プログラムや練習場の整備が進んでいるが、それでもネガティブなイメージは払拭されていない。

「この問題に対しては、安全技術を向上させるのはもちろんのこと、やはり時間をかけて実績を重ねていくしかないですね」

実績は地道に積み重ねていくしかないが、技術の向上はイニシアティブをとって進められる部分でもある。テラドローンでは、ドローンの制御技術、ソフトウェアの改善も続けられている。

「例えば、テラドローンでは、 『Terra UTM』という管制ソフトウェアを開発しました。このソフトウェアを使えば、ドローンの飛行経路を画面の地図上で指定することで、自動航行を可能にしてくれます。ジオフェンス(地図上に飛行不可のエリアを設定し、GPS情報を使ってドローンが飛行可能エリアからそれないようにする仕組み)の設定もできるので、オペレーターは安心して飛行計画を立てられます」

オペレーターはどこを測定したい、何を測定したいといったことを画面上で指示すれば、ソフトウェアが飛行経路や計画を出してくれる。慣れないオペレーターでも操作ミスの可能性を下げることができる。簡単な測量や点検なら専門の業者に頼まなくても済む。そうなると、逆に同社のようなサービスを提供している会社は困らないのだろうか。

「本当に精度が要求される測量や点検は、やはり熟練者が行う必要があるんです。でもTerra UTMを提供することで、自分たちの事業のマイナスになるとは考えていません。むしろ、市場が活性化し、ビジネスチャンスが広がる効果の方が大きいでしょう」

Terra UTMの画面

Terra UTMで飛行ルートをプログラミングできる

あらゆる場面でドローンが空を飛ぶ

同社は今後、オーストラリアやEUといった海外展開を考えている。

「土木分野やインフラ点検で培ったノウハウは海外でも生かせるでしょう。それ以外の応用分野としては、物流や農業があります。物流はアマゾンなどがサービスの展開を進めていますし、EUでは農業利用が活発です。オーストラリアでは鉱業での活用が進んでいます」

鉱業においては、鉱山の外からドローンで観測する方法と、トンネルや坑道などの中をドローンで撮影、計測する方法がある。同社では、坑道内を測定し3Dモデル化するソフトを開発しているという。

さらに、インフラの点検・メンテナンスでは、新しいドローンの構想もあるという。

「送電線の至近距離でも飛べるガードのついたドローンも考えています。これは、ドローン本体を棒状の多面体構造でガードし、配管や鉄骨が入り組んだところも飛べるようにしたものです」

これまでドローンによるインフラ点検は、橋の裏側やダムサイトなど人が容易に近づけないところの撮影、リモート映像によるチェックが行われているが、その行動範囲がさらに広がりそうなアイデアだ。今後見えてくる市場の拡大・成熟は、コモディティ化(商品価値の一般化)と表裏一体ともいえる。この点については関氏はどのように考えているのだろうか。

「確かに、利活用が広がれば、同時にドローンのコモディティ化も進むと思います。ドローン単体での測量や点検といったサービスだけでなく、自動管制技術や運行ノウハウの提供などドローンを活用した包括的なサービスやソリューションを、ハード、ソフト、運行技術とともに提供していくことが重要だと思います」

人間を運んでくれるドローンや荷物を運んでくれるドローンなどはメディアの目を引きやすいが、実際には土木、建築、農業といった分野が市場をけん引していくことだろう。近い未来、あらゆる産業の現場で、ドローンを目にする日がやってくる。

ドローンにはカメラ以外にレーザーセンサーなども搭載可能

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