空想未来研究所2.0

怒りと悲しみで2550万kcal消費!ゴンの髪の毛に使われた膨大なエネルギー

ゴンやプリキュアの毛髪超活性について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「毛髪」。変身すると急激に髪が伸びるキャラクターは多いが、一瞬で伸ばすためにはどれだけエネルギーを消費していたのか。毛髪についていろいろ考えてみました。

髪はキャラクターの命

人間の体の中で、髪は自由に変化させられる部位だ。だから現実の世界でも、人々は髪の長さや形状、色などに工夫を凝らす。

それは空想の世界でも同じで、髪の特徴がキャラの個性やイメージに直結している。

『あしたのジョー』(1968~1973年)の矢吹丈は、前髪が前方にとんがっていた。ボクサーらしくない髪形だが、彼が短髪になった姿など想像できない。

バーチャルシンガーの初音ミクといえば、足まで届きそうなツインテールが印象的。踊るのに邪魔じゃないのかと思うけど、彼女が髪形を変えることはあり得ないだろう。

今回は、そんな空想世界のキャラたちのバラエティ豊かな“髪”について考えよう。

12mの髪を持つ美女

髪が物語に大きく関係しているキャラといえば、グリム童話「ラプンツェル」である。

主人公・ラプンツェルは、魔法使いによって、長らく高い塔に閉じ込められていた。彼女の髪はとても長く、窓から垂らしたその髪を伝って、魔法使いは塔に出入りする。そして、ラプンツェルの歌声にひかれた王子も、同じように髪を使って上り、ラプンツェルとの逢瀬(おうせ)を重ねていた……。

まさに髪が長いからこそ成立する物語なのだが、搭の昇降に使えるとは尋常な長さではない。『完訳 グリム童話集(1)』(金田鬼一・訳/岩波文庫)によれば、なんと12mもあるという。

ここまで長く伸ばすには、かなりの歳月がかかったのではないだろうか。

人間の髪は、1日に平均0.4mm伸びるから、12m伸びるには……えっ、3万日!?

3万日とは82年である。ラプンツェルは若い女子だと思っていたが、実はおばあさんだったということか……!?

とても不思議な昔々の物語である。

髪が伸びるのが速すぎる人々

前述のとおり、人間の髪が伸びる速さは1日平均0.4mm。しかし、空想の世界には、ものすごいスピードで髪が伸びる人たちがいる。

魔法少女系アニメの「魔法使いプリキュア!」(2016~2017年、テレビ朝日系)では、変身するときに髪がビューンと伸びる。普段の髪形からプラス2mほども!

髪は自動的にセットされるから戦いの邪魔にはならないが、そんなに一瞬で髪が伸びて大丈夫なのだろうか。

普通の人間だったら、髪が2m伸びるには5000日=14年かかる。ところがプリキュアたちの髪は1秒ほどで同じだけ伸びる。これは常人の4億3200万倍のスピードだ。

髪は毛根で、毛母細胞が分裂することで伸びていく。細胞分裂に必要な栄養分は、血液で運ばれ、毛根の先端にある「毛乳頭」に蓄えられる。

すると、その奇跡の1秒間だけ、血流が平常の4億3200万倍の勢いになり、心臓は4億3200万倍でのペースでけたたましく拍動する、ということか。それはそれで心臓と血管に負担が大きそうだが……。

『HUNTER×HUNTER』(1998年~)の主人公・ゴンの髪も異様な速度で伸びたことがある。

ゴンは、命の恩人で自分の目標でもあったカイトの死を知る。すると「カイトは自分のせいで死んだ」と思ったゴンの体に異変が起こった。見る見る身長が伸びて筋肉隆々になり、髪の毛は何と身長の3倍ほどに伸びる。しかもその髪は、天を突くように垂直に立っている!

一体何が起こったのか? これを目の当たりにした敵のネフェルピトーは独白した。

「方法はわからないが 強制的に成長したんだ………!! ボクを倒せる年齢(レベル)まで!!」

仲間のキルアも息をのんで独白する。

「何年…!? 十数年!? 何十年!? 絶え間ない修行を経てようやくたどり着くはずの姿!!」

2人の言葉から考えると、悲しみと怒りと自責の念に駆られたゴンは、目の前のピトーを倒すために急激な成長を遂げ、その結果、髪も伸びた……ということか。

だとしたら大変なことになる。このときゴンの身長は180cmぐらいになっていたから、その3倍の髪の長さとは5.4m。これだけ伸びるには、通常は1万3500日=37年かかる。

一瞬で37年分の成長を遂げたということは、そのときゴンの体内では、1万3500日分の新陳代謝が行われたはずである。

急成長する間の平均体重が70kgなら、ゴンの基礎代謝量は1日1890kcal(キロカロリー)。1万3500日分なら2550万kcalだ。120gのコンビニのおにぎりに換算して11万9000個分! 300gのステーキ4万枚分!!

波平さんの頭頂の1本が最強!

さてここまでモーレツな毛髪力の持ち主を見てきたが、彼らと対極の道を生きるのが、「サザエさん」(アニメ1969年~)の磯野波平さんである。後頭部にわずかに残る以外は、頭髪が頭のてっぺんに1本しかない。

男性の髪が加齢と共に抜けていく現象は「男性型脱毛症」と呼ばれる。

その原因は、男性ホルモンの一種・テストステロンが、2型5αリダクターゼという酵素と結び付いて、ジヒドロテストステロン(DHT)に変わり、毛母の細胞分裂を阻害すること。2型5αリダクターゼは、前頭部と頭頂でよく作られるので、この部位からはげる人が多い。

ここから考えると、波平さんの前頭部と頭頂でも、2型5αリダクターゼが盛んに作られたが、頭のてっぺんでは局所的に2型5αリダクターゼが作られなかったため、周囲の髪がはらはらと脱落していく中、1本だけがしぶとく残ったのだろう。

そのラスト1本は、太さも相当なものと思われる。波平さんがかなり遠いところにいても、目視確認できるからだ。

その髪はどのくらい太いのか。筆者が自分の髪を1本抜いて、白い壁に貼り付けると、視力0.8の目では、距離2.5mからがギリギリ見える限界だった。

波平さんの髪1本が10m離れても見えるとしたら、一般人の髪の10[m]÷2.5[m]=4倍も太いことになる。

なるほど。この太さとなれば、1本だけ残った理由も分かる。

毛根の強さは太さの2乗に比例するから、波平さんの1本は一般人の髪の4×4=16倍もの強さがあるはずだ。

自分の髪で測定すると、髪の毛1本は300gの重さに耐えた。その16倍も強い波平さんの髪の毛は、4.8kgの力で引っ張っても抜けないことになる。

つまり、逆立ちして、髪に2L入りのペットボトル2本をぶら下げても抜けない! めちゃくちゃ強靭(きょうじん)な髪の毛ですなあ。

ロープの代わりになるほど長かったり、急速に伸びたり、常人の髪の16倍も強かったり、空想世界の髪もいろいろである。髪という体の一部位がこれほどバラエティー豊かで、そこから物語が作られていくとは、人間の想像力は、まことに素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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