エネルキーワード

エネルギーマネジメントシステムで勝ち抜け、国際競争

エネルキーワード 第18回「エネルギーマネジメント」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第18回は「エネルギーマネジメント」。「我慢の省エネ」から「スマートな省エネ」へ、エネルギーの合理的な使用につなげるエネルギーマネジメントについて考えてみました。

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出典:US Air Force Photo

EMSとは?

EMS(Energy Management System:エネルギーマネジメントシステム)とは、一般社団法人ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会の定義によると、「電気、熱、ガスなどのエネルギーの見える化や設備の最適運用などを実現するシステムのことであり、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を用いてエネルギー使用状況を適切に把握・管理し、省エネルギー及び負荷平準化等によりエネルギーの合理的使用につなげること」だそうです。
 
ちょっとお堅いですが、要はエネルギーマネージメントを適切に行うことにより、効率的なエネルギー使用を促し、省エネルギーにつなげることが目的です(図1)。

(図1)エネルギーマネージメントの全体像

出典:資源エネルギー庁省エネルギー対策課「省エネルギー政策の動向 2016以降の展開」2016年2月

EMSの大きなメリット

さて、このエネルギーマネジメントシステムにはISO50001という国際規格が存在しており、以下のPDCAサイクルに沿って組織を運用することが求められています(図2)。

(図2)ISO50001のPDCAアプローチ

出典:資源エネルギー庁「ISO50001」

第三者審査によって認証を得、規格を導入すると以下のようなメリットを得ることが想定されます。
 
1.コストダウン
2.効率向上、省エネ、環境負荷低減
3.企業イメージの向上
4.取引の優位性:顧客との取引条件、公共事業の入札条件、海外(中国・ブラジル・インド・米国・EU諸国など)ビジネス取引の必須条件となる場合
 
この規格の下で、組織のエネルギーの運用管理を進めると結果として、温室効果ガスの排出量やエネルギーコストの低減を図ることができるのです。

EMSの具体的取り組み

抽象的な話ではピンとこないですよね。では、企業の具体的な取り組みを見てみましょう。

まず、JR東日本の「変電設備スリム化」の取り組みです。列車位置情報を用いて蓄電池の充放電制御を効率的に行うエネルギーマネジメントシステムを構築するというもので、10月から実証実験を開始します(図3)。 列車に電気を供給する変電所の設備を「回生電力貯蔵装置」に置き換えることで、設備のスリム化とメンテナンスの省力化を図るという発想に可能性を感じます。

(図3)変電設備スリム化イメージ

出典:JR東日本「列車位置情報を活用した変電設備スリム化の実証試験について」

また、日本のEMSが海外で採用されているケースもあります。

インドが携帯電話大国であることはつとに知られていますが、そうした中NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、2013年度からインド携帯電話基地局エネルギーマネジメント実証事業」に取り組んでいます。

その結果、なんと83%のディーゼル燃料消費量削減と、60%のCO2排出量削減を達成したそうです(図4)。

(図4)NEDOインド「携帯電話基地局エネルギーマネジメント実証事業」イメージ図

出典:NEDOプレスリリース

今回の実験で、携帯電話基地局に太陽光発電とリチウムイオン蓄電池を設置したところ、これまで発電用に使っていたディーゼル発電機の燃料を大幅削減できました。また、日中の高温になる基地局内の温度上昇を抑制しエアコンの使用を削減するために、屋根や外壁に光触媒塗料を使って消費電力量を減らした結果、CO2排出量も大幅に削減できたと言います。
 
こうした例を見ると、さまざまな技術を組み合わせ、それらを総合的に管理することで大きな成果が出ることが分かります。まさにEMSの真骨頂がここにあります。

日本のEMSの可能性

そして問題はこれからです。電力需要が増え続けている中国やインドなどのエネルギー効率を高めることが必要不可欠です。そうした中、産業分野のエネルギーマネージメントはまだまだ改善の余地があり、注目されています。
 
IoTでつながっている機器も増えてきました。それらから集められるビッグデータを利用してより効率的なエネルギー消費を実現できるはずです。膨大なデータの解析にはAI(人工知能)が活躍するでしょう。
 
長年EMSに取り組んできた日本の技術が今世界的にも注目を集めています。この大きなビジネスチャンスをものにするグローバル競争の真っただ中に私たちはいるのです。

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