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IKEAからソニーまで!グローバル企業が続々加盟する「RE100」真の価値とは

エネルキーワード 第37回「RE100」

「エネルギーにまつわるキーワード」を、ジャーナリスト・安倍宏行さんの解説でお届けする連載の第37回は「RE100」。IT、金融、アパレルなどあらゆるジャンルの世界的な企業が、こぞって加盟を表明している国際ビジネスイニシアチブだが、その実態はどのようなものなのだろうか。ビジネスパーソンが知っておくべき世界が目指す方向について考えてみよう。

世界150企業が加盟するRE100

RE100」が何を表しているか分かる人は、かなりのエネルギー情報通です。かくいう筆者も最近まで詳しく知りませんでした。

RE100とは、事業運営を100%再生可能エネルギー(以下、再エネ)で調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブで、「Renewable Energy 100%」の頭文字を取ったものです。

RE100は、地球温暖化や気候変動の脅威に対し、政府、企業、NGOを巻き込んだ活動を行っている国際NGO「The Climate Group」と、環境NPOの「CDP(Carbon Disclosure Project)」がパートナーシップを組み、2014年に設立した企業連合です。

RE100の公式ホームページ

出典)RE100

そのミッションは、世界規模で再エネの需要と供給を増やすこと。対象はグローバル企業。企業の使用している電力は世界中で使用される電力の約半分を占めており、その消費を再生可能エネルギーに移行すれば、世界中の炭素排出量の約15%を削減することができる、とRE100はうたっています。

2018年10月16日現在、RE100にはFacebook、Google、AppleなどのIT、H&M、バーバリーといったアパレルからゴールドマンサックス、BMW、ゼネラルモーターズ、スターバックス、ヒースロー空港まで多様なグローバル企業約150社が名を連ねています。

では日本企業はどうでしょうか。2017年4月のリコーを皮切りに、積水ハウス、アスクル、大和ハウス工業、ワタミ、イオン、城南信用金庫、丸井グループ、富士通、エンビプロ・ホールディングス、ソニーに続き、2018年9月26日には芙蓉総合リース、10月にはコープさっぽろが加わって現在加盟は13社になっています。今後も加盟企業は増えていく見込みです。(参考:Japan -CLP

RE100に参画する企業抜粋

出典)環境省地球局「RE100について」資料より/RE100ホームページ,RE100 Annual Report 2016,積水ハウスニュースレター,2017年10月20日, アスクルプレスリリース,2017年11月29日を基に環境省作成

RE100参加で得られるメリットと日本の事情

RE100に参加している企業は、特定年までに再エネ100%を実現するための公的目標を設定し、その目的に沿った取り組みを進め、その進捗(しんちょく)状況をRE100の事務局であるCDPに毎年報告しなければなりません。

例えば、RE100の創設パートナー企業である北欧家具メーカーIKEAは、再エネ100%達成を2020年までにと設定しており、既に風力や太陽光発電へ巨額の投資を行っています。

また、ことし加盟したソニーも、2040年までに自社の事業活動で使用する電力を100%再エネに移行することを目標に掲げていて、海外事業所の再エネ化を拡大させることや、再エネによって自家発電した電力を自社の事業所へ供給する「自己託送制度」システムの構築といった取り組みを推進しています。(参考:ソニーニュースリリース

そして、企業にとって気になるRE100加盟のインセンティブとは、「ESG投資」を呼び込むことです。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資のことです。その規模ですが、2014年から2016年までの2年間で世界全体のESG投資額は25.2%増加し、22兆8,900億米ドル(約2,500兆円)に上っています。ESG投資を呼び込むことができれば株価は上がりますし、企業のブランド価値も向上します。これからの企業活動にとってRE100加盟は、もはや必要不可欠のことのように思えます。

世界のESG要素を考慮した持続可能な投資の成長

出典)環境省「平成30年度版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」(2018年6月5日閣議決定)

しかし、日本の場合、厄介な問題が横たわっています。RE100に加盟し、事業運営を100%再エネで調達しようとしてもそれが簡単にはできない事情があるのです。一体どういうことなのかというと、ある制度がネックとなっているのです。それがFIT(フィット)と呼ばれるものです。

FITとはFeed in Tariff、すなわち固定価格買取制度のことです。風力や太陽光などの再エネの普及を図るため、再エネで発電された電気を電力会社に一定期間、固定価格で買い取ることを義務付けた制度で、2012年度から始まりました。

FITによって買い取られたいわゆる「FIT電気」は、そのコストを全ての電気利用者が再エネ賦課金として負担していることから、政府は、FIT電気には、環境負荷の小ささなどを示す「環境価値はない」と取り決めています。既に価値は電気利用者に帰属しているという考え方です。

RE100事務局は、各国の制度を前提に再エネ電気の利用を証明できるかどうかを判断することになっていますが、上述の理由から現時点で日本企業はRE100の目標達成にFIT電気が使えません。では日本企業が再エネ電気を調達するには一体どうしたらいいのでしょう?

100%達成を実現する再エネ電気の調達方法

RE100が提示する再エネ電気の調達方法は主に次の3つです。

1)自社施設内や他の施設で再生可能エネルギー電力を自ら発電する(自家消費
2)市場で発電事業者または仲介供給者から再生可能エネルギー電力を購入する(PPA:Power Purchase Agreement:電力販売契約)
3)グリーン電力証書等の購入

日本ではFIT制度のために、海外では一般的な2の方法が使えないことから、1の「自家消費」か、3の「グリーン電力証書等の購入」が検討されています。グリーン電力証書とは、再エネによって得られた電力の「環境付加価値」を取引可能な証書にしたものです。こうした環境付加価値を証書にしたものは、ほかに「J-クレジット」と「非化石価値証書」があります。

「グリーン電力証書」と「J-クレジット」は自家消費用発電を対象としたものであるのに対し、「非化石価値証書」はFITや大型水力など国内で建設された大部分の再エネが対象になっています。こうした中、「非化石価値証書」は証書単位で再エネ源を特定することはできないため、RE100には適していないと見られています。

日本が抱える今後の課題

このように日本では証書でしか再エネ電気を使っていると証明する方法がないのが現状です。

RE100の目標達成のために、FIT電気が使えるようになることが望まれている中、「余剰電力買い取り制度(※)」が終了する2019年11月以降、その可能性が出てきています。それ以降、企業は安い太陽光由来の再エネ電気が使えるようになるからです。そうなれば、再エネ電気を扱う新電力事業者にも、さまざまなビジネスチャンスが生まれるでしょう。

(※)余剰電力買い取り制度:家庭の太陽光パネルが発電し、自宅で使い切れなかった電気を10年間固定価格で電力会社に売電できる仕組み。2009年11月に開始し、2019年11月に終了予定。

太陽光発電システムを搭載した住宅(スマートシティ草津)

出典)パナソニック

最近では、ブロックチェーン技術を使って、どの再エネ発電所で発電した電気なのかを証明する仕組みを構築した新電力もあり、既に再エネの品質にこだわる需要家との間で取り引きが始まっています。

企業や個人が、再エネ電気をその由来によって自由に選べる社会がもうすぐそこに来ています。RE100はまだ始まったばかりではありますが、その社会に与えるインパクトは私たちの想像以上のものがありそうです。

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