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100年前の小水力発電が復活へ!ロマンあるプロジェクトが三重県で進行中

新しい水の搬送方式で地産エネルギーを最大限に活用

三重県伊賀市の馬野川上流にかつて存在した小水力発電所。廃止からおよそ60年を経た今、その復活に向けたプロジェクトが進行している。EMIRAの年明け最初の記事は、水資源を地域エネルギーとして活用する、ロマンあふれる取り組みを紹介する。

地域エネルギー創出に向けて原点回帰

かつて三重県伊賀市には河川を利用した小水力発電所が2カ所存在した。その一つである伊賀馬野川水電は、1919(大正8)年から稼働。

出力60kW、勢いの強い水をおわん形の羽根に当てて回転させて利用するペルトン水車と50kWの発電機を利用して発電を行い、近隣の3村(布引村・阿波村・山田村<稼働当時。現在の伊賀市>)に電力を供給していた。

馬野川上流に存在した小水力発電所の歴史

画像提供:三重大学

その後1958(昭和33)年まで稼働したが、老朽化によって同年3月に廃止されていた。

旧・伊賀馬野川水電の概要

画像提供:三重大学

今回、地元の三重大学と同市に本社を構える地元建設会社の株式会社マツザキ、地元協議会の三者がタッグを組んで挑戦しているのが、馬野川に小水力発電所を復活させるプロジェクトだ。

きっかけは、2013年にマツザキが以下の3つを目的に構想したことによる。
1.貴重な水資源を地域エネルギーとして地産地消する
2.ここで得た恩恵を地域に還元する
3.このプロジェクトでの住民参加による郷土意識の向上。それによって地域社会の元気・活力を取り戻すこと

以降、同大地域イノベーション学研究科の坂内正明(ばんないまさあき)特任教授と共同で取り組み、地元住民・自治協議会や金融機関の協力を得るなど、地域全体で取り組む一大プロジェクトへと発展していった。

2017年10月にはそれまでの取り組みを基に事業性評価を確認。マツザキの子会社として発電所を建設・運営する新会社「みえ里山エネルギー株式会社」が設立されるなど計画は順調に推移している。

今回計画されている発電所の概要

画像提供:三重大学

2018年2月には工事を着工し、2019年4月の稼働を目指している馬野川上流の小水力発電所。

最大出力199kWの水車発電機で発電を行い、年間101万kWhの発電量が見込まれている。当時の発電量50kWと比べて発電量の目標値はおよそ4倍に相当し、実現すれば約340世帯の電力を賄うことが可能になるという。

標高差もお構いなしの新たな搬送方法

今回のプロジェクトにあたりポイントとなったのが馬野川水系の変化だ。

馬野川水系の移り変わりを示した図

画像提供:三重大学

かつては高い保水力(山が降雨時の水を保有する能力)を備えており、雨水の川への流入はゆっくりと長く続いたが、調査の結果、現在では保水力が低下し、一気に川へと流れ込むようになっていることが判明した。

これはつまり、雨が降っても水がすぐ川に流れてしまうため、水車が利用できる水量が減少、すなわち水車の運転時間が短くなってしまうことを示している。

そこで坂内特任教授が考案したのが、導水路に直径約50cmのパイプを用いるという国内初の試みだ。

馬野川小水力発電の計画概要

画像提供:三重大学

この構想の特徴は、パイプを水で満水にして密閉した状態で水を搬送すること。

これにより旧・伊賀馬野川水電で採用されていたようなU字形の導水路と比べて、小さな水圧管路であっても管内を満水にし、流れを速くすることで多量の水を運ぶことができる。加えてパイプ内部を密閉状態にするので、取水口より高い地点を導水管が通る場合でもポンプなどの動力を使わずに水の搬送を可能にする“サイフォン効果”を活用していることも見逃せないポイントだ。

今回の計画では、長さ1082mの導水路を使い約77mの落差を利用した発電が予定されているので、その効果は大きいといえる。坂内特任教授は「今後、三重県の南勢地域や他県の降雨量が多い地域でも、今回のような事業性に優れる新しい方式の小水力発電を増やし、エネルギーの地産地消を広げていきたい。そして将来的には、地域エネルギーをその地域内で活用する“真の地産地消”へと展開させたい」とさらなる小水力発電所の発展に期待を寄せている。

資源が乏しいといわれる日本において貴重な資源である水。今後、こうした小規模の水力発電が中山間部を中心に普及し、私たちの暮らしを支えるエネルギーを供給してくれるのではないだろうか。

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