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宇宙からマグロの生態を調査!近大が「宇宙マグロプロジェクト」発足

衛星からのレーザー反射を利用した新たな生態調査方法に挑む

国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に指定されている太平洋クロマグロをはじめ、生態の多くがいまだ謎に包まれたままのマグロ。近畿大学(以下、近大)では現在、生態調査における魚への負担軽減や効率的な調査を目的に、人工衛星を用いた新手法を模索している。養殖マグロにとどまらず、天然マグロをも未来に残すことに使命感を抱く近大の最新研究の詳細をお届けする。

マグロの動きを宇宙からのレーザーで捕捉

2002年にクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功した近大。その近大が、日本近海を回遊する太平洋クロマグロなどの水棲生物の生態調査に人工衛星を活用する「宇宙マグロプロジェクト」を4月18日よりスタートした。

新たな観測方法として人工衛星と再帰性反射材を用いた方法を模索

近大理工学部電気電子工学科 前田佳伸教授(光エレクトロニクス)と農学部水産学科 光永靖准教授(漁業情報学)、両研究室の各学生が取り組む学部横断型プロジェクトとして発足。マグロに取り付けた反射材に人工衛星からレーザーを照射し、マグロの生態解明を試みるというものだ。

「宇宙マグロプロジェクト」に挑むメンバーたち

クロマグロをはじめとする天然マグロは、世界中での消費需要上昇と共にその数が減少。日本においても罰則付きの法規制が導入されるなど、国際ルールに基づいた漁獲量制限が設けられている。しかし、マグロの個体数や生態についてはいまだ謎めいた部分が多く、回遊ルートや産卵場所など資源構造は判明していない。天然資源の保護には、近大が成功した完全養殖技術と併せて天然ものの資源管理も重要なため、マグロの詳細な生態調査が急務となっている。

従来の調査に用いられるアーカイバルタグ方式(左)とアーカイバルポップアップタグ方式(右)

これまでの水棲生物の調査研究では、捕獲した個体にデータ記録タグを取り付け、リリースしてデータを取得する方法(アーカイバルタグもしくはアーカイバルポップアップタグ方式)が主流として用いられてきた。しかし、従来の方法では体内へタグを入れ込む、もしくはタグを背骨にワイヤーでくくり付ける必要があるため、魚体を傷付けざるを得ないなどマグロにかかる負担が大きかった。

また、タグはバッテリーで駆動するため、記録時間の制限やリアルタイムでデータを確認することができないという課題が存在。さらに、データ取得にはタグ回収が必要なため、再捕獲しなければならないなど、手間や人的なコストもかかっていた。

再帰性反射材を取り付けたマグロのイメージ(左)と実証実験に使用されたマグロ(右)

そこで今回、それら回収の手間を省くことでエネルギーの効率化を図り、また魚への負担も軽減させて、より本来の活動をトレースする新たな調査方法として取り組んでいるのが、タグの代わりに光を反射する再帰性反射材を採用する方法だ。

再帰性反射材とは、一般的な反射と異なり、光がどのような方向から当たっても光源に向かってそのまま反射するように工学的な工夫がなされた反射方法による材質。

その再帰性反射材を取り付けたマグロにレーザーを照射して、反射した光から水中のマグロを追跡。人工衛星を通じて瞬時にデータを取得することができ、回収の手間を省いて効率よく、長時間のリアルタイム追跡記録が可能になる。加えて、反射材に薄いシート状の軽量素材を用いることで、マグロに過度な負担を強いることなく装着もできるという。

これまでに行われた実証実験概要図

これまでに近大水産研究所 白浜実験場(和歌山県)のいけすを使った実証実験では、ドローンを使った地上数m~数十m間や上空500mの長距離探査航空機からレーザーを照射し、反射材を付けたマグロのリアルタイム観測・調査に成功。今後は、上空300kmの宇宙空間にある人工衛星からのレーザー照射による生態調査を最終目標に、超小型人工衛星「宇宙マグロ」を製作し、2019年度中の打ち上げを予定している。

現在、近大ではクラウドファンディング国内大手のCAMPFIRE(キャンプファイヤー)と提携し、この人工衛星の製作費用を募る「宇宙マグロプロジェクト」(HPはこちら)を展開し、広く資金調達を呼びかけている(募集期間は5月30日<水>まで。目標金額は190万円)。

マグロの最大消費国である日本で開始された、大海原を泳ぐマグロを宇宙からのレーザーで補足し生態を解明するという壮大なプロジェクト。マグロの恩恵を享受する現代人として、今後のプロジェクトの行方に注目したい。

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