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空気中の湿気を集めて水に変える省エネ材料「スマートゲル」を関西大学が開発

除湿の仕組みを根本から変えることで新しいタイプのエアコンシステムが期待できる!

節電意識が高まり、クールビズやエアコンの省エネ設定が企業などでも定着した観のある昨今。しかし、最低限快適に過ごすための気温(室温)と湿度のコントロールには、現状の空調機器では構造上多くのエネルギーを消費してしまう。その原理を根本から変え得る材料が誕生した。その名も「スマートゲル」。新たなエコ時代を切り開く革新的アイテム、その詳細をお届けする。

省エネ&省スペースで快適空間を創出

関西大学化学生命工学部 宮田隆志研究室とシャープ株式会社 健康・環境システム事業本部からなる研究グループは6月21日、大気中の湿気を吸湿した後、わずかに温度を上昇させるだけで液体状態の水に変化させることができるスマートゲル(温度応答性ゲル)の開発に成功したと発表した。

従来の除湿システムとはまったく異なる原理に基づく技術で、人々の快適な生活につながる省エネルギーな材料・システムとして脚光を浴びている。

開発されたスマートゲル。上が吸湿実験前の状態、下が吸湿後のスマートゲルの様子

現在、広く普及している除湿システムは、ゼオライトやシリカゲルという乾燥剤を用いて除湿を行っている。

ただし、これらのシステムでは、吸湿した乾燥剤を高温で加熱し再び気化させる(加熱再生)プロセスと、蒸発した水蒸気を凝縮して集める(液化)プロセスが必要となっており、この過程で膨大なエネルギーを消費するという課題が存在。加えて、室内機と室外機で構成されるエアコンの場合は、土地の狭い都心部では置き場所がネックとなることもある。

通常の乾燥剤を用いた除湿機のプロセス。液体状態から気体状態、あるいはその逆の相変化には熱(潜熱)の出入りが伴い、エネルギー消費も大きくなる

仮に、乾燥剤に吸着した水分子を液体状態の水として直接回収することができれば、より省エネルギー&コンパクトな除湿システムを構築させることができる上、経済的にも優しく快適に夏を過ごせるようになるはずだ。今回発表された温度応答性ゲルは、この解決策となる画期的な開発だ。

温度応答性ゲルの基となる高分子ゲルは、高分子同士を鎖(架橋)でつないだ集合体で、固体と液体の中間的ないわばスライムのようなものだ。寒天やゼリーといった食品(物理ゲル)、紙おむつ、コンタクトレンズなど(化学ゲル)の材料としてさまざまに利用されている。

現在、医療分野における最先端材料として世界中で研究が進められる一方で、通常はハイドロゲルと呼ばれるたっぷりと水分を含んだ状態で使用されるため、乾燥状態での応用についてはほとんど手付かずの状態であった。

実験で明らかとなった吸湿から水がにじみ出るまでの様子

しかし、今回の実験では新たな可能性を求めて、凍結乾燥で完全に乾燥させた温度応答性ゲルを使って吸湿実験が行われた。すると、室温付近かつ高湿度の環境下において空気中から効率よく湿気を吸収すると共に、吸湿したゲルを50℃で加熱したところ、表面から液体状態の水として回収に成功。また、空気中の湿気を液体の水として回収するサイクルを繰り返し行えることも確認された。

研究グループが開発したスマートゲルは、温度感受性高分子と呼ばれる分子で構成されている。これは、高分子をつなぐ鎖が低温では親水性で水に溶けやすいが、ある温度以上になると水に溶けにくい疎水性に変化するユニークな性質を備えている。

温度応答性ゲルによる吸湿とにじみ出しのプロセスを示した図。高温加熱による乾燥剤の再生や水蒸気の凝縮プロセスが不要となったことで、小型&省エネルギーシステムの開発が期待できる

ちなみに実験で使用されたスマートゲルが、水溶性から水不溶性に変化する下限臨界溶液温度(LCST)は32℃付近。このLCST以下では湿度を吸収し、LCST以上では水として取り出せるのだ。つまり、LCSTをまたいだわずかな温度間で気体から液体へと姿を変えられることを示しており、これは学術的にも初めて得られた成果となる。

今回の結果を受けて、宮田教授は「この技術を利用することによって、空気中の湿気を液体状態の水として直接回収する新しいタイプのエアコンシステムが設計できるようになります。さらに従来のスマートゲルの利用は、水中やウェットな状態に限られてきましたが、乾燥状態でもスマートな機能を示すことが分かり、その応用範囲が飛躍的に広がるでしょう」と、今後の発展に期待を寄せている。

ブラウン管から液晶に変わったことでテレビが薄型化したように、温度応答性ゲルの誕生は空調設備のコンパクト化の呼び水となるかもしれない。

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