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2017.6.20
科学特捜隊は緊急避難を!怪獣より危険なウルトラマンの必殺技
ウルトラマン、ゴジラに出てくる「光線」を考察してみた
空想世界をエネルギー文脈から分析する好評連載、今回のテーマは「光線」。光の国からやって来たヒーローの必殺技が危な過ぎる!
スペシウム光線で怪獣は爆発しない?
映画やアニメなど、空想科学の世界の「光線」は、とてもバラエティーに富んでいる。あまりに多彩なので、前回に引き続いて考究していきたい。
今回注目したいのは、それらの光線が、科学的にビックリするような振る舞いを見せることだ。
子供のころから不思議だったのは、ウルトラマンの「スペシウム光線」である。ウルトラマンが腕を十字に組むと、青白い光が飛んでいく。そして、怪獣に当たると爆発…!
その威力を考えると、スペシウム光線もレーザーなのではないかと考えたくなる。レーザーは狭い面積にエネルギーを集中できるからだ。(レーザーの仕組みは前回参照)
そうなると、爆発するのはなぜだろう。
レーザーが武器となり得るのは、物体に吸収されると熱に変わるからだ。だとしたら、怪獣にやけどを負わせたり、手足を焼き切ったりすることはできたとしても、体が爆発することはないのではないか。
レーザーじゃなくてメーザーだった!?
これを考えるにあたり、思い出したいのは、「メーサー殺獣光線車」だ。ゴジラ映画に繰り返し出てきた兵器(陸上自衛隊所有)だが、初登場は1966年の『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』である。
このとき、メーサー殺獣光線車は、逃げ回るガイラを容赦なく攻撃した。ガイラは光線が当たるたびに痛がって、気の毒になるほどだった。
メーサー光線の出力は10万Vだという。
メーサーとは、おそらくメーザー(maser)のことだろう。光の仲間を「電磁波」といい、波長の長い順に、電波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線がある。波長の短い電波にマイクロ波があり、水によく吸収されるので、電子レンジに使われている。これで食べ物がホカホカになるのは、食べ物に含まれる水分にマイクロ波が吸収されて熱に変わるからだ。
このマイクロ波をレーザーと同じ方法で発振するのが「メーザー」だ。生物の体には多くの水分が含まれているから、メーザーを怪獣への攻撃に使えば、確かに絶大な効果があるだろう。
メーザーの理論が完成したのは1952年、初めての発振は1954年である。メーサー殺獣光線車の登場はその12年後だから、当時としてはかなり早いと思う。さすが、新しいものをどんどん作品に取り入れた円谷英二だ。
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マイクロ波で食品を温める電子レンジの原理
スペシウム光線だ、逃げろ!
さて、話を戻そう。怪獣を爆発させる点に注目すれば、スペシウム光線には、このメーザーが含まれている可能性が高い。
電子レンジに生卵を入れると爆発する。これは、卵の中の水分が、マイクロ波を吸収して水蒸気になるからだ。水が水蒸気になると、体積は1700倍にも膨れ上がる。爆発は、その圧力が殻の強度を上回った瞬間に起こる。
怪獣も生物である以上、体内には水分があるはずだ。彼らの体は厚い皮膚や甲羅に覆われているから、メーザーを当てれば、体内の水分が膨張して、やがて圧力が皮膚や甲羅の強度を上回り、爆発することも十分に考えられる。
ただし、ウルトラマンがメーザーを放っているとしたら、危険な面もある。
マイクロ波は金属で反射される。だから、電子レンジにアルミ箔(はく)を入れると、反射してバチバチと火花が散る。もし、怪獣の体が金属で覆われていたら、バチバチ反射して、周囲の罪もない人々がホカホカと煮え上がってしまうかもしれない。
そうなった場合に一番危険なのは…正義のチーム・科学特捜隊の皆さんだ!
科学特捜隊は自爆覚悟
科学特捜隊の皆さんといえば、彼らが常備しているスーパーガンも、一見、可視光線のレーザーを放つように見える。
ただし、やっぱりモノスゴク気になることがある。スーパーガンの光線は、ジグザグに飛んでいくのだ。レーザーには「狭い面積にエネルギーを集中させる」とともに「直進する」という特性があるのに、いったいどういうことだろうか。
これはもう、空中放電を起こしていると考えるしかないだろう。空中放電では、電気が少しでも流れやすい方へ、流れやすい方へと流れる結果、進路がジグザグになること。稲妻が好例で、その進路を予測するのは難しい。ということは、スーパーガンの光線もどこへ飛んでいくか分からない!
さらに、空中放電を起こすには、距離1mにつき50万Vの電圧が必要になる。仮にスーパーガンが、メーサー殺獣光線車と同じ10万Vの電圧を持っていたとしても、飛距離はたったの20cmということに。
空中放電では、電気は最も近い物体に向かって流れるから、こんなに射程距離の短い電撃にやられるのは、撃った科学特捜隊員本人!
この点は、怪獣キングギドラの光線も同じである。3つもの首を持ち、全身が金色に輝くあのゴージャスな宇宙怪獣は、その3つの口から、やはりジグザグの光線を放っていた。どこへ飛んでいくか、たぶん自分でも予想がつかない上、隣の首に当たる可能性が大!
八つ裂き光輪で地球が滅亡!?
いろいろな不思議光線を見てきたが、その中でもチャンピオンはウルトラマンの「八つ裂き光輪」だろう。
これはスペシウム光線をリング状にしたものともいわれ、投げると回転しながら飛んでいき、怪獣をスパッと切断する。まことにカッコいい技だったが、でも繰り返すけど、光の最大の特徴は直進することだ。それがなぜ丸くなるのか!?
科学的に、大胆かつ強引に考えるなら「光も強い重力を受ければ曲がる」という事実を応用しているのかもしれない。これは1915年にアインシュタインが「一般相対性理論」で予言し、1919年の日食の際、太陽の向こう側にあって見えるはずのない星が観測されたことで実証された。
ひょっとして、八つ裂き光輪の中心には、小さくてよく見えないが、大質量を持つ物体があり、その重力で光が人工衛星のように回っている…?
八つ裂き光輪はせいぜい直径10mほど。光がその小さな直径で回るための質量を計算すると、なんと地球の1000倍!
その大きさでそんな重いものはもはやブラックホールであり、地球は重力でバラバラに砕かれ、吸い込まれてしまうだろう。ウルトラマンは、決して八つ裂き光輪を使わないでいただきたい。
――などなど、アヤシイところも満載のSF映画や怪獣番組の光線たちだが、前述したように現実世界で理論と技術が完成するや、意欲的に作品世界に取り入れてきたという歴史もある。
まことに柔軟であり、そこから発想を飛躍させてきたからこそ、それまでにない映像が生み出されたのだ。人間の想像力は本当に素晴らしいなあ!
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イラスト:古川幸卯子
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