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2026.1.14
最強の“うまポケモン”は誰か?/ポケットモンスター
『ポケットモンスター』で描かれたエネルギーについて考えてみた
マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるのは『ポケットモンスター』。今年2月で30周年を迎える、言わずと知れた人気ゲームシリーズだ。今回は午年(うまどし)にちなんで、シリーズに登場する“馬”をモチーフにしたポケモンを、エネルギーの観点からランキング形式で紹介します。
第1作『ポケットモンスター 赤・緑』が発売されたのは1996年2月27日。そう、今年はポケモン30周年! そして午年となると、2026年最初のテーマはコレしかないでしょう。
最強の“うまポケモン”は誰なのか!?
ここで頼りになるのが『ポケモンずかん』である。例えば、うまポケモン第1号の「ポニータ」については、次のように説明されている。
No.0077 ひのうまポケモン ポニータ たかさ1.0m おもさ30.0kg
「体が軽く脚の力がものすごい。1回のジャンプで東京タワーも跳び越える」
人間の子供のような体格で、東京タワーを跳び越える! 高度333mのジャンプとは、滞空時間16.5秒。「おお、ポニータが跳んだ! ぐんぐん上昇しています。頂上を越えて、下降に入り、いま着地しました!」といった実況中継も可能な、悠然たるジャンプなのだ。
こうした説明が満載の図鑑が、新しいゲームが出るたびに作られてきた。それまでのポケモンについても、新たな情報が加えられてきた。筆者の知る限り、馬をモチーフにしたポケモンは、これまでに9体。その中で、エネルギーの観点から特筆すべき5体を厳選し、どんなエネルギーを放っているのかを考えてみたい。
ポニータに続く4体は次の通りだ。
No.0078 ひのうまポケモン ギャロップ たかさ1.7m おもさ95.0kg
「時速は最高240キロ。メラメラ燃えながら新幹線と同じスピードで駆け抜ける」
No.0522 たいでんポケモン シママ たかさ0.8m おもさ29.8kg
「雷雲で空が覆われると現れる。たてがみで雷をキャッチして電気をためる」
No.0647 わかごまポケモン ケルディオ たかさ1.4m おもさ48.5kg
「ひづめから水を噴き出すことで水面を滑るように移動。得意の足技で戦う」
No.0750 ばんばポケモン バンバドロ たかさ2.5m おもさ920.0kg
「10tある荷物を引きながら三日三晩休まずに山道を歩き続けることができるのだ」
みんなスゴイけど、エネルギーNo.1は? ランキング形式で紹介しよう!
ジャンプ速度は時速325km!
第5位は、「ポニータ」である。なんと、東京タワーを跳び越えても、エネルギーの観点では5体の中で最下位! このランキングのレベルの高さがヒシヒシと伝わってきますな~。
具体的に、ポニータが発揮するエネルギーはどれほどか。
ポニータはおそらく、助走して、東京タワーの手前で斜め上にジャンプし、放物線を描いて跳び越えるに違いない。高さと同じ333m手前で大地を蹴るとしたら、空気抵抗を無視しても、必要な速度は秒速90.4m。これは時速325kmで……ええっ!?
ご存じの方も多いと思うが、No.0078「ギャロップ」は、ポニータが進化した姿。進化する前の時点で、ギャロップの時速240kmを上回っている!
それでもエネルギーで及ばないのは、体重が軽いことに加えて、ジャンプは一瞬の運動だから。瞬発力はスゴいが、発揮する時間が短いため、エネルギーは小さな値になってしまうのだ。とはいえ、ポニータのエネルギーは決して侮れない。
運動エネルギー[J]=1/2×体重[kg]×速度[m/秒]2
体重30kgと、速度90.4m/秒を代入すると、運動エネルギーは12万2600J。時速56kmで走る車重1tの乗用車と同じ! 体重30kgなのに! それでも5位!
生物が消費するエネルギーの単位[kcal]に直すと、29.3kcal(1kcal=4184J)。同じ体重の人間なら、1km走らないと消費できないエネルギーだ。これを一瞬のジャンプで消費するのだから、さすがポケモンである。
雷1発で3週間!
第4位は、「シママ」。これにも驚く読者が多いだろう。雷の電気をためられるのに!? と。
雷の電圧は1億V(ボルト)、電流は数千~数万A(アンペア)。電流を最大クラスの5万Aとすると、まず「電力」が出てくる。
電力[W]=電圧[V]×電流[A]
1億V×5万A=5兆W=50億kW。日本で発電されている電力は1億kW、世界でも30億kWだから、驚異の大電力である。
だが、電力も仕事率やパワーの一種で、1秒間あたりのエネルギー。そして、落雷の継続時間は、きわめて短い。『カミナリはここに落ちる:雷から身を守る新しい常識』(岡野大祐/オーム社)によれば、80µ秒=100万分の80秒=0.00008秒。すると、雷1発のエネルギーは、5兆W×0.00008秒=4億J=9万5600kcalとなる。シママはこれでどのくらい活動できるのか。
JRA馬事公苑診療所の資料によれば、競走馬が1日に必要とするエネルギーは次の通り。
・非運動時(維持期)[kcal]=1400+30×体重[kg]
・軽運動時は1.25倍、中程度の運動時は1.5倍、強い運動時は2倍
シママの体重29.8kgで計算すると、維持期に必要なエネルギーは1日に2294kcal。ポケモンバトルに明け暮れるシママには、強い運動時のエネルギーが必要だろうから、その2倍の1日4588kcal。雷の9万5600kcalとは、その21日分である。なんとシママは、雷を1発受ければ、3週間も戦えるのだ!
効率が良すぎる!
第3位は、「ケルディオ」。ひづめから水を噴き出して進むのもスゴいが、ポケモンずかんには「海や川など水面を走り、世界中を駆け回る」「世界を駆け巡り、修行を続ける」とある。どうやら、大変な距離を移動するらしい。
ケルディオが水面を進みつつ「前足のひづめから吸水し、後ろ足のひづめから噴出する」と考えよう。体高1.4mと比較すると、後ろ足のひづめは直径15cm。ここから放たれる水流の直径は10cmほどだろう。
「水面を滑るように移動」するというから、噴き出す角度は斜め下20度ぐらいではないだろうか。その場合、水を秒速9.4m=時速34kmで噴き出せば、その反作用で48.5kgの体重を支えつつ、時速224kmで前進できるはずだ。おお、「ギャロップ」(時速240km)に迫る!
これに必要なエネルギーは1秒間に6540J。「世界を駆け巡る」というから、太平洋の横断ぐらいはできる可能性がある。東京からロサンゼルスまで、大胆に四捨五入して8000km。時速244kmなら12万9000秒=35時間43分。消費するエネルギーは、6540×12万9000=8億4000万J=20万kcalだ。
シママの2倍だが、ガソリンに換算すると21L。燃費は驚異の380km/L! ジェットフォイル船が高速で進めるように、水を噴き出す反作用で進むのは、とても効率がいいのだ。
馬としてスゴすぎる!
第2位は、「バンバドロ」。そろそろ記憶から消えている人もいると思うので、ポケモンずかんの記述を再録しよう。
バンバドロ たかさ2.5m おもさ920.0kg
「10tある荷物を引きながら三日三晩休まずに山道を歩き続けることができるのだ」
北海道で行われる「ばんえい競馬」では、体重800~1200kgの重種馬が、450~1000kgのソリを引く。バンバドロの体重は重種馬たちの範囲に入っているが、引く荷物の重さは上限の10倍! しかも、三日三晩=72時間! ばんえい競馬は数分で決着がつくから、驚嘆するしかないスーパーホースだ。
バンバドロが発揮するエネルギーは、次の式で求められる。
エネルギー[kcal]=摩擦力[kg重]×重力加速度×距離[m]÷4184[J/kcal]
摩擦力とは、ソリや荷車と地面の間に働く力で、山道という悪路では、荷車にのせたとしても、荷物の重さ10tの30%=3t=3000kg重ほどとみられる。重力加速度とは重力の強さを表す数値で、地上の場合は9.8[m/秒2 ]。
そして、三日三晩も歩くと、距離が大変なことになる。馬の歩き方(歩法)には4種類があり、最も遅い常足(なみあし)が分速110m=時速6.6km。バンバドロがこの速度で歩くとしても、72時間では475.2km。東京から国道1号線に沿って三重県まで! 消費するエネルギーは、3000[kg重]×9.8[m/秒2 ]×475200[m]÷4184[J/kcal]=334万kcal! スーパーホース・バンバドロが2位に輝く!
時速240kmで走る馬とは?
そして、栄光の1位は「ギャロップ」。ただ走るだけなのに!? いや、馬が時速240kmで走るというのは、とてつもない現象なのだ。
人間が運動時に消費するエネルギーは、「最大酸素摂取量」で測定する。(*)のサイトによれば、一般成人で40[mL/kg/分]、マラソンのトップランナーで80[mL/kg/分]。馬についても測定されていて、トレーニングを積んだ馬で190[mL/kg/分]。一流の競走馬では200[mL/kg/分]を超えると推定されている。
*『3 科学の箱馬車⑫ 心拍数とスピードからわかること…馬の有酸素能力について』(日本中央競馬会 栗東トレーニング・センター 競走馬診療所/塩瀬 友樹)
最大酸素摂取量に1.05をかけると、「体重1kgあたり1時間に消費するエネルギー」が求められる。一流の競走馬は、210[kcal/kg/時間]だ。そして理論的には、これは速度の3乗に比例する。一流の競走馬の平均速度は時速68km。ギャロップの時速240kmはその3.53倍で、その3乗は44倍。つまり、ギャロップが消費するエネルギーは210×44=9240[kcal/kg/時間]となる。
競馬が長くても数分で決着することからもわかるように、一流の競走馬でも、全力で1時間も走ることなどできない。あくまでも「そのペースでエネルギーを消費する」ということだ。しかし、ポケモンずかんは驚きの事実を伝える。
「炎のたてがみ煌(きらめ)かせ 駆ける様(さま)は矢の如し。広大なるヒスイの地を1日半で横断せし驚異の駿馬なり」
なんと、36時間も続けて走れるらしい! ギャロップ(体重95kg)が「ヒスイの地横断」で消費したエネルギーは、9240×95×36=3160万kcal。われわれ人間が実感しやすいように、120gのおにぎり(187kcal)に置き換えると、16万9000個分。重さにして20t!
これほどのエネルギーを、ギャロップはどこから得ているのか? その秘密は、間違いなく「煌く炎のたてがみ」にあるのだろう。
30年の歴史の中で登場したポケモンは、実に1025体。1対1のバトルの組み合わせは、100万を超える。その1体ずつについて、あるいは対戦の1カードずつについて、数億あるいは数十億の子供や大人たちが、それぞれのイメージを膨らませてきたのだろう。それに比べればわずかと言える1000余りの種が、芽吹き、育まれて、他に類のない豊かな世界となった。人間の想像力は、本当に素晴らしい!
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※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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イラスト:花小金井正幸
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