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空想未来研究所2.0

四国を空母にする!?史上最高の海上スマートシティ

仮面ライダーBLACK RXの敵が考えた四国の可能性について考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「島の空母化」。昭和最後のライダー「仮面ライダーBLACK RX」で提言された空前絶後の発想が、未来の街構想に活用できないかを考えてみました。

スマートシティの次は国土の船舶化?

海上都市やスマートシティといった近年注目されている都市構想は、資源やエネルギーを有効に使うという発想で設計される。それは「出入りするモノやエネルギーを最小限に抑えた中で、一つのコミュニティを成立させる」方法を考えることにもなるだろう。

空想の世界には、その可能性が感じられる壮大な作戦がある。『仮面ライダーBLACK RX』(1988~89年)の敵方であるクライシス帝国が立案した「四国戦略空母化作戦」である。

四国の空母化!?と驚かれるだろうが、いくらでも驚いていただきたい。その言葉どおり「四国を海底から切り離して、海上に浮かべて空母にする」という計画なのだ!

四国は、最も長い差し渡しが260km、面積は1万8297km2。世界最大のニミッツ級空母が全長333m、甲板面積1万8000m2だから、“空母四国”の長さはその780倍、面積は100万倍である。本当に空母として運用できたら、世界征服も不可能ではないかもしれない。

しかも、四国には空母に必要なものが備わっている。高松空港、松山空港、高知龍馬空港、徳島阿波おどり空港と、滑走路が4本もあり、讃岐うどん、ミカン、カツオ、鳴門糸ワカメなど、糧食も万全。吉野川、四万十川、仁淀川など水にも事欠かない。道後温泉、四国アイランドリーグ、アンパンマンミュージアム(香美市立やなせたかし記念館)と、乗員の福利厚生も充実している。

これは、空母どころか、一つの優れたスマートシティになるかもしれない。自分たちが住んでいる大地を動かせれば、夏は北へ、冬は南へ移動して快適に過ごせる。雨の欲しい時季には雨雲の下へ行き、台風が接近したら大地ごと逃げればいい。そして、プレートから離れるのだから、地震の心配がない!

このように書くと「なぜ現実の世界では、国土の船舶化が行われないのだ!?」などと思ってしまうが、結論を急ぐのはまだ早い。それを実現するためには何が必要なのか、クライシス帝国の四国戦略空母化作戦に学んでみよう。

動力源は念動力!?

四国戦略空母化作戦の全貌は、次のとおりであった。

(1)念動力を持った少年少女を誘拐する
(2)怪魔ロボット・シュライジンが溶解液で四国の地下の岩盤を溶かす
(3)少年少女の念動力を「念動力増幅装置」で増幅し、四国を動かす

なんと、空母の動力源が少年少女の念動力!うーむ、筆者の国土船舶化構想も、いきなり頓挫である。

そもそも、空母を含む船の利点は、浮力で水に浮かぶこと。浮かんでいるだけならエネルギーはいらないし、移動させるにも、陸上よりはるかに小さなエネルギーで済む。

だが、このたびの空母は岩石製。海水の浮力では浮かばないから、別の力が必要になる。その力として、クライシス帝国は子供たちの念動力を選んだわけである。

誘拐された少年少女は10人ほどで、彼らは3人がかりで地面に置いたサッカーボールを揺らしたり、プールに浮かんだ浮き輪を動かしたりしていた。念動力は1人あたりせいぜい10gとみられる。

これに対して、四国の面積は1万8297km2。平均標高は404m。平均密度が通常の岩石なみの1m3あたり2.7tなら、重量は海面上だけで20兆tだ。

これは絶対ムリだろう……と思っていたら、劇中の子供たちは四国を動かし始めたからビックリである。恐るべきは、クライシス帝国の「念動力増幅装置」ですなあ。

作戦対象の選択だけは完璧!

念動力が動力源と言われてしまうと、科学的には手も足も出なくなってしまうので、それは後で考えることにして、別の問題に着目しよう。

四国を海に浮かべるには、海底から切り離さなければならない。その任務は怪魔ロボット・シュライジンに与えられた。ここでも「怪魔ロボット!?」と現実から遠ざかる気がしてしまうが、実は四国という選択は意外にもふに落ちる。

日本は、世界有数の火山国だ。世界にはおよそ1000の活火山があり、そのうち111が日本にある(※2017年6月、気象庁発表)。わが国の面積が世界の陸地の400分の1でしかないことを思えば、異様な密集度だ。

火山は、地下数kmの「マグマだまり」と「火道(かどう)」でつながっているから、陸地を海底から切り離すと大変。それは火道もしくはマグマだまりをぶった切ることになり、マグマが噴き出す!怪魔ロボットも溶けてしまう……!?

ところが、四国には火山がないのである。

これは、プレート境界に近いためだ。駿河湾から四国の沖合にかけて、南のフィリピン海プレートが、北のユーラシアプレートの下に斜めに潜り込んでいる。その境目が「南海トラフ」というプレート境界だ。潜り込んだ海洋プレートは、深さ100kmぐらいで地下の熱で溶けて、マグマになる。

四国はプレート境界に近いので、その地下では、フィリピン海プレートが深さ100kmに達していない。その結果マグマが形成されず、火山もできない。

つまり日本の主要四島のなかで、戦略空母にできるとしたら、それは四国だけなのだ!

実際にやったらどうなる?

では、四国の空母化を現実の世界でやったら、どうなるだろうか?

まず、海に浮かべる方法。

最も簡単なのは、四国を海面で水平に切り、その下に発泡スチロールを敷くことだろう。その発泡スチロールに働く浮力で、20兆tの四国を浮かべるのだ。

これには、厚さが1100mに及ぶ発泡スチロールが必要になる。重量は4000億t。日本で生産されている発泡スチロールの300万年分だ!

次に、動かすためのエネルギー。

ニミッツ級空母は出力4万8000kW。同じ速度で動かすには、面積に比例する出力が必要だ。四国の面積はニミッツ級空母の100万倍だから、480億kW。日本で発電されている電力はおよそ1億kWなので、その480倍だ!

それより何より、四国を海底から切り離すのに必要なエネルギー。

四国の地下に厚さ1100mの発泡スチロールを敷くには、同じ容積の空間を作るしかないだろう。それを発破工法でやるとしたら、必要なダイナマイトは40億t!

もう、まるっきり実現の香りがしない話になってきたが、それは21世紀の現在の話。兵器として使うのではなく、快適な環境を求めて、陸地が移動するという発想はとても面白いと思う。はるか未来に、実現できる日が来るかも、と考えるとワクワクする。そして、そんな可能性を見せてくれた人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。

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