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2018.1.23
量産型を瞬殺するビームサーベルの消費電力
アニメ&特撮で描かれた超強力な剣について考察してみた
マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「ロボットの剣」。ガンダムやエヴァ、スーパー戦隊の巨大ロボットが手にしていた武器が、いかに驚異的な威力を秘めていたのか考えてみました。
武器と言えばやっぱり剣
気が付けば、ロボットが人間社会に大きく進出してきている時代である。
家庭では掃除ロボット、ペットロボット、コミュニケーションロボット。工場では産業用ロボット、災害現場では調査ロボットやレスキューロボット、深海や宇宙では探査ロボット。自動運転の車や、自律飛行のドローンも、ロボットの一種だろう。
だが、アニメや特撮の物語で「ロボット」といえば、人間の形をした「アンドロイド」や「ヒューマノイド」、そして「巨大ロボ」のことである。
そして、これらに欠かせない要素が「戦う」ことだ。
彼らの武器には、ビームやロケット弾などさまざまなものがあるが、中でも一大潮流を成しているのが「剣」である。
科学の粋を集めたロボットの武器が、剣。
時代が逆戻りしているような気もするが、人型のロボットなのだから、人間が武器にするものを武器に持つのも当然……という気もする。
今回は、空想の世界のロボットたちが、どのような剣で戦ってきたのかを振り返ってみよう。
ビームサーベルが日本を救う?
数ある剣の中でも、記憶に強く残るのが『機動戦士ガンダム』(1979~1980年)のビームサーベルであろう。
普段は柄(つか)だけで、手に取ると赤いビームが伸びて刃渡り10mほどの剣になる。
『機動戦士ガンダム MS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』(バンダイ)によると、ビームサーベルの刃は、ミノフスキー粒子(架空の粒子)を圧縮して、縮退・融合させたメガ粒子のビームであり、直接放出時に出る熱エネルギーで攻撃するという(縮退とは、粒子が最大の密度で密集すること)。
なぜビームが剣の形になるのだろう。ひとたび発射されたら、どこまでも飛んでいきそうな気がするが。
筆者が想像するに、メガ粒子に寿命があるからではないだろうか。例えば、メガ粒子が秒速1000mで発射され、寿命が0.01秒だとすると、ちょうど10mの長さを保つことになる。
確かなのは、その威力がすさまじいことだ。作中で初めて使用したときに、ジオン軍のモビルスーツ・ザクの胴体を一瞬で両断している。
これを熱エネルギーでやったとなると、恐らくビームサーベルの幅と同じ30cmほどの領域を蒸発させたのだろう。前出の『MS大図鑑』によれば、ザクは全高18.0m、本体重量58.1t、装甲はチタン系の超硬合金。ビームサーベルが、ザクの胴体に触れてから、切断して離れるまでの時間を計ると、わずかに1.2秒である。
現実世界にあるチタン合金のデータから計算すれば、これを可能にする出力とは900万kW。ビームサーベルには、ザクに当たっていない部分もあるから、それも考慮して計算すると、総出力2600万kWである。
これは、日本全国で発電されている電力の4分の1を超える!
これほどのエネルギーが、直径30cm、長さ2mほどの柄から放出されているとは、驚くべきことである。アレが4本あって、連続使用が可能なら、わが国の電力は賄えてしまう。
操縦者も震える超振動ナイフ
『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年)にも、強力な「剣」が登場した。
その名はプログレッシヴナイフ。「プログナイフ」とも略される。『エヴァンゲリオン用語事典 第1版』(八幡書店)によれば、「高速振動子の刃で、接触する物体を分子レベルで切断してしまう武器」だという。
高速振動で物体を切断する技術は、現実世界にも「超音波加工」がある。工具を超音波並みの振動数(毎秒2~7万回)で振動させる加工法で、工具によって大きく2つに分けられる。
1)超音波切断…刃物を振動させる。刃物より硬いものは切れない
2)超音波切削…平らな工具と材料の間に「砥粒(とりゅう)」という硬い粉末を水に混ぜたものをはさみ、振動させる。ガラスやセラミックスやダイヤモンドも切れる
エヴァが、プログナイフにいちいち砥粒を塗っていた様子はないから、超音波切断に近い仕組みなのだろう。それでも切れるのだから、プログナイフの刃は、相当に強靭(きょうじん)と思われる。
いずれにしても、刃が高速振動することは間違いない。現実世界の超音波加工では、本体よりはるかに小さな工具を振動させるから、本体の振動はわずかなものだが、プログナイフの刃は、柄と同じぐらいの大きさだ。すると、柄も高速振動したはず。
エヴァと操縦者は「神経接続」されていたから、操縦者の手もビリビリ震え、ジーンとしびれていたのかもしれない。
カミナリ100万本分の剣
「剣を持つロボット」といえば、スーパー戦隊の巨大ロボットたちである。
第3代『バトルフィーバーJ』(1979~1980年)以来、戦隊の巨大ロボは、ほぼ例外なく剣を主武器にしている。
中でも驚くのは、第8代『超電子バイオマン』(1984~1985年)のバイオロボだ。全高52m、本体重量920tの巨体から「スーパーメーザーバイオ粒子斬り」を繰り出す。
このスーパーメーザー(剣の名前)は、恐るべきエネルギーを秘めていた。なんと、雷100万本分のエネルギーが注がれているという!
『カミナリはここに落ちる 雷から身を守る新しい常識』(岡野大祐 著/オーム社出版局)によれば、1回の落雷は、電力に換算して100億kW、電気が流れる時間は80マイクロ秒(100万分の80秒)。エネルギー=電力量は「電力×時間」で計算できるから、80万kW秒=222kW時。これは一般家庭2カ月分ほどの電力量だという。
雷は、一瞬に流れる電力はすさまじいが、流れる時間が短いため、エネルギーはそれほど大きくはないのである。
それでも100万本分となると、2億2200万kW時。これは、全国で消費されている電力の2時間余りに相当するというとてつもないエネルギーだ。これで長さ24m(画面で測定)、推定重量13t(日本刀を元に計算)のスーパーメーザーを振るうと、そのスピードはマッハ1760!直径1.8kmの岩が砕け散る!
モビルスーツや汎用人型決戦兵器、巨大ロボットが振るう剣は、あまりに強力である。これらが実際に開発されることはないだろうし、あってはならないと思うが、彼らのカッコよさに憧れた少年少女や若者たちが、科学の心を刺激され、全く違う素晴らしいものを生み出してくれるのではないだろうか。人間の想像力は、本当に素晴らしい!
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※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります。
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イラスト:古川幸卯子
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