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2018.10.9
1日で日本中が猫人間に!仮面ライダーも勝てないウイルスの感染&増殖力
仮面ライダーシリーズのウイルスについて考察してみた
マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「ウイルス」。「仮面ライダー」シリーズに登場したウイルス兵器(?)が秘めていた、真の実力を考えてみました。
インフルエンザは本当に厄介
インフルエンザの季節がやってきました。
感染すると、高熱、鼻詰まり、喉の痛み、頭痛、筋肉痛、関節痛に加えて、B型インフルエンザウイルスでは腹痛や下痢も起こる。本当に厄介な病気である。
しかしこれらの症状は、ウイルスが直接引き起こすものではない。体がウイルスを撃退しようとする結果だ。
高熱を発するのは、熱に弱いウイルスを倒すために、体が自ら温度を上げるから。鼻詰まりや喉の痛みは、ウイルスと戦う白血球などを送り込むために、大量の血液が送られて、鼻や喉の粘膜が腫れるため。
頭痛、筋肉痛、関節痛は、ウイルスを倒すためにプロスタグランジンという物質が作られ、これが自分の体にもダメージを与えるから。そして腹痛や下痢は、ウイルスを体外に排出するための反応だ。
つまり、これらの症状が起きているとき、体は必死にウイルスと戦っているわけである。
われわれにできることは、栄養を取り、安静にして、これらの仕組みを支援すること。インフルエンザも重篤化すると、命に関わることもあるので、軽く考えてはいけない。
ウイルスと細菌って何が違う?
そもそもウイルスとは何なのだろう。
ウイルスは、実に奇妙な存在だ。直径は、わずか100万分の1~1万分の1mm。DNA(デオキシリボ核酸)あるいはRNA(リボ核酸)がタンパク質の殻に包まれただけの単純な構造で、呼吸など生きるための仕組みを持っていない。
ウイルスの体は、生きるための最小の単位である「細胞」とは言えない、ということだ。このため「生物」と言えるかどうかさえ、定説がない。
ウイルスがどうやって生きているかというと、他の生物の体に侵入して、その細胞の仕組みを利用して、エネルギーを手にしたり、増殖するための物質を作ったりしている。そのためヒト免疫不全ウイルス(HIV)やエボラウイルスなど、結果的に宿主を死に至らしめるものもある。
このウイルスに似たイメージのものに、細菌と菌類がある。
細菌は、体が細胞でできていて、生きるための仕組みを一通り備えている。明確に「生物」であり、条件さえ整えば自力で生き、増殖できる。ただし、その細胞には核がなく、DNAが細胞内に散らばっている(このような生物を「原核生物」という)。大きさは1000分の1~100分の1mmと、ウイルスの100倍くらいある。
菌類とは、カビ、キノコ、酵母のこと。このうち酵母は単細胞の菌類で、大きさは100分の1mmほどだ。カビの中には、一個体の菌糸が山一つにまで広がるものもあり、「世界最大の生物はカビ」と言われることもある。
菌類は核を持つ「真核生物」であり、そのくくりでは、われわれ動物、植物、藻類(ワカメ、コンブ、ミカヅキモ)、原生生物(アメーバ、ゾウリムシ)と同じ仲間だ。
つまり、ウイルスとは、非常に小さく、構造が単純で、生物かどうかも分からない存在であり、細菌や菌類とは全く別のものということ。
そして、細菌が1回の細胞分裂で1個から2個に増えるのに対して、ウイルスは同時に何個にも増える。これが、たちまち感染が広がる「パンデミック(爆発的な流行)」の原因の一つである。
わずか1日で日本中が猫人間になるウイルス
さて、基礎知識が長くなったが、今回はそんなウイルスを、空想科学の世界がどのように描いてきたかを紹介したい。
これを積極活用していたのは、昭和の「仮面ライダー」シリーズの悪の秘密結社たち。当時ウイルスは「ビールス」と呼ばれることも多かったが、悪の組織はどう使ってきたのか。
例えば、「仮面ライダー」(1971~73年)のショッカーは、脳に到達すると、ある一定の音波により人間を操ることのできるビールスを開発した。これを牙に仕込んだ蝙蝠男(こうもりおとこ)は、一般市民にかみついて感染させ、主人公・本郷猛を襲わせる……。
さすがショッカーである。前述の通り、ウイルスは生きるための仕組みさえ持っていないはずなのに、このウイルスはそれよりはるかに高度な“音声認識能力”を有する!
シリーズ中で最も注目したいのは「仮面ライダーX」(1974年)に登場した「化け猫ビールス」だ。
猫怪人キャッティウスは、爪を突き立ててこのビールスを流し込み、人間を猫人間(牙と鋭い爪が生え、キャッティウスの言いなりになる)に変えてしまう。
これは実に効果の見込める作戦だ。ビールスに感染して猫人間になるなら、猫人間の体内でビールスはどんどん増えるはずで、すると猫人間も爪から化け猫ビールスを出せる可能性が高い!
キャッティウスは、たちまち2人の人間を猫人間にしていたが、もしキャッティウスと猫人間が、1時間あたり2人ずつ猫人間を増やしていったら、どうなるか?
1時間後、キャッティウス+猫人間は3人
2時間後、それぞれが2人ずつ増やすから、猫人間は9人
3時間後には27人
4時間後は81人
5時間後、243人
6時間後、729人
7時間後、2187人
8時間後、6561人
9時間後、1万9683人
10時間後、5万9049人
11時間後、17万7147人
12時間後、53万1441人
13時間後、159万4323人
14時間後、478万2969人
15時間後、1434万8907人
16時間後、4304万6721人
17時間後、1億2914万163人
――なんと1日もたたないうちに、日本は化け猫の国に!
これぞパンデミックの恐ろしさだが、劇中、化け猫作戦は順調に進まなかった。
キャッティウスは「ビールスの培養が思うようにいきません」とGOD秘密機関の幹部に報告する。科学者を猫人間にしてビールスを培養するように命じたが、どうしても協力しないという。
「猫人間になってもか?」と驚く幹部に、キャッティウスは答える。「猫人間になると、頭の程度も猫並みになってしまうので、うまくゆきません」。
わははははっ、なんて重大なところに落とし穴が!
ウイルスサイズの細胞の実力
ぐっと時代が飛んで、昨年話題になったVOD特撮「仮面ライダーアマゾンズ」(2016~17年)でも、ウイルスに近いものが物語世界の根底を支えている。
野座間製薬がウイルスサイズの「アマゾン細胞」を秘密裏に開発。それは、人間のタンパク質を好む性質を持っていた。その集合体を人型にまで育てた「アマゾン実験体」を作ったところ事故が発生、4000もの実験体が逃げ出してしまう。彼らの食人欲求は薬で抑えられているが、薬の切れた者たちが一人また一人と、人を食う異形の「アマゾン」へと変貌していく……。
これは恐ろしい。
アマゾン細胞の集合体が人間を形作っているということは、人間の細胞と同じように、一つ一つの細胞が生きるための機能や遺伝情報を備えているのだろう。
前述したように、ウイルスは100万分の1~1万分の1mm。人間の細胞は多くが100分の1mmだから、中間サイズの10万分の1mmで考えると、人間の細胞の1000分の1。体積や重さはその3乗で10億分の1! その小ささで同じ機能を持つ細胞を開発するとは、途方もないハイテクノロジーである。
エネルギーに注目すると、さらに驚く。
同じ体形の動物が消費するエネルギーは、体重の4分の3乗に比例する。
例えば、体重が16(2の4乗)倍なら、消費するエネルギーは8(2の3乗)倍。これは体が大きくても、体重の比率ほどには、消費エネルギーは多くならないということだ。
発揮できるエネルギーについても、これに近いことが言える。小さな動物ほど、体重に比べてたくさん食べ、体格に比べて運動能力が高いのは、そのためだ。
これが細胞にも当てはまるとしたらどうなるか?
重さが10億分の1の細胞は、562万分の1のエネルギーを消費&発揮する。一つ一つの重さが10億分の1なら、全身の細胞の数は10億倍のはずだ。すると、全身で発揮できるエネルギーは、562万分の1×10億=178倍。
つまり、アマゾンたちは人間の178倍も強い! 人間が1秒で20kgのバーベルを持ち上げるとしたら、アマゾンたちは同じ時間で3.56tをリフトアップする!
映像を見ると、確かにそのくらいの強さかもしれない。野座間製薬の技術力、いよいよ恐るべし。
ウイルスは極めて小さく、活動できる環境も増殖の仕方も、通常の生物とは全く違う。その不思議な在り方が、さまざまな想像を生み出すのだろう。音を聞くウイルスあり、頭の程度を猫並みにするウイルスあり、ウイルスサイズの細胞を生み出すハイテクあり。人間の想像力は、本当に素晴らしい!
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※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります
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イラスト:花小金井正幸
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