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空想未来研究所2.0

ガンダムとザクを身体測定!出力と推進力から見る白いヤツの性能の違い

ガンダムのモビルスーツについて考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「モビルスーツ」。「機動戦士ガンダム」の二大モビルスーツであるガンダムとザクが、実際どれほどの性能なのか、そのスペックから考えてみました。

人間の能力を拡大させたモビルスーツ

人間は何かを身にまとうことで、本来の能力を超える活動をしたり、生存できない環境に進出したりしてきた。宇宙服やスキューバはもちろんのこと、消防士の耐火服、和洋の甲冑(かっちゅう)、スポーツの防具も、人間の可能性を広げる装備といえるだろう。

その思想を大きく発展させたと思われるのが、『ガンダム』シリーズ(1979年~)のモビルスーツだ。

この作品世界では、通常の宇宙服が「ノーマルスーツ」、武器を装備した巨大な人型のものが「モビルスーツ」と呼ばれる。電磁波を妨害するミノフスキー粒子の散布によって、遠距離の無線通信やレーダー索敵が不能になったため、人間が戦場に出て接近戦を行うしかなくなった。そのために開発されたのがモビルスーツである。

そしてモビルスーツの一大特徴は、スペックが詳細に設定され、作品世界の外で公表されていることだ。例えば……。

●ガンダムRX-78-2(アムロ・レイが乗る連邦政府軍のモビルスーツ) 
頭頂高18.0m
本体重量43.4t
ジェネレーター出力1,380kW
スラスター総推力55,500kg

●ザクⅡ(一般的に「ザク」と呼ばれるジオン公国軍のモビルスーツ)
頭頂高17.50m
本体重量58.1t
ジェネレーター出力951kW
スラスター総推力43,000kg

※『ENTERTAINMENT BIBLE .1 機動戦士ガンダムMS大図鑑【PART.1 一年戦争編】』(バンダイ)より

これほどスペックが明らかになっていると、その運動性能も科学的に推測できる。ここでは、前者を「ガンダム」、後者を「ザク」と呼ぶことにして、これらのモビルスーツが、人間の能力をどれほど拡大させてくれるのかを考えよう。

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ガンダムとザクの運動能力

まずは、両者の体格に注目したい。

それぞれの頭頂高は、人間のほぼ10倍だ。もし人間が10倍に相似拡大したら、上下、左右、前後ともに10倍だから、体重は10の3乗=1000倍になる。身長180cm、体重70kgの人なら、身長18m、体重70tだ。

ガンダムの本体重量43.4tは、その62%だから、人間が相似拡大した場合より、軽量化が達成されていることになる。これは、運動するには有利な条件だ。

では、実際に、ガンダムはどれほどの運動ができるのか。最も予測しやすいのは垂直跳びで、それは体格とパワーで決まる。パワーは「1秒間に発揮するエネルギー」のことで、出力ともいう。ガンダムの場合は、ジェネレーター出力がパワーを表すことになる。

前述の「身長180cm、体重70kgの人」が。身長の6分の1(30cm)だけ腰を沈め、そこから全力で踏み切って、高さ60cmまで跳べるとしたら、その瞬間に発揮したパワーは2.35kWという計算になる。

するとガンダムのジェネレーター出力1380kWは、人間の590倍ということだ。

これは、ちょっと心配である。

ガンダムの体重は、前述のように人間の「1000倍の62%」つまり620倍もある。それに対して、パワーは590倍。しかもガンダムは、ビームサーベル、ビームライフル、シールドなどを装備して全備重量は60.0tだというが……。

心配していないで計算すると、フル装備のガンダムが、頭頂高の6分の1(3m)だけ腰を沈めて、フルパワーでジャンプした場合、跳び上がれる高さは2.2m。おお、人間の3倍を超えた!

――などと喜べるケースではなかった。ガンダムの身長は人間の10倍もあるのだから、その体でジャンプ高度が2.2mなのは、身長180cmの人が22cmしか跳び上がれないのと同じである。

こうなると、ザクはさらに心配だ。

頭頂高17.5m、ジェネレーター出力951kWと、ジャンプに有利な要素はガンダムを下回るのに、全備重量は73.3tもある。

これで計算すると、ジャンプ高度は1.5m。なんと身長175cmの人が15cmしか跳べないのと同じ……という話になってしまう。

スラスターを併用すると?

ジャンプの際、ガンダムは胸や背中のスラスターを噴射する。これを併用した場合、ジャンプの高度はかなり伸びるのではないだろうか。

ガンダムのスラスター総推力は55,500kg=55.5t。これは本体重量43.4tを上回るから、ガンダムは武器を持っていなければ、スラスターの推力だけで、ぐんぐん上昇できることになる。

全備重量60tと比較しても、その92.5%。これは、ジャンプしながらスラスターを真下に噴射すると、重力の92.5%を減殺してくれることを意味する。

つまり、スラスターを吹かしながらジャンプすると、重力が地球の7.5%しかない星の上で跳ぶのと同じ。この結果、到達できる高度は28.8m。身長180cmの人が、2m88cm跳べるようなものだ。やはりモビルスーツは、人間の能力を拡大している!

ザクはどうか。その推力43,000kg=43tは、全備重量73.3tの59%。これによって重力が地球の41%の星で跳ぶのと同じになり、ジャンプ高度は3.6mになる。

しかしこれはキビシイ。スラスターをもってしても、身長175cmの人が36cmしか跳べないのと同じである。

かなりの性能差があるガンダムとザク。もちろん、これは『機動戦士ガンダム』の物語でもしっかり描かれていた。

ジオン公国軍の兵士たちは、ガンダムを「白いモビルスーツ」と呼び、その性能と装甲の頑丈さに驚いていた。そして、技術と経験でアムロたちをはるかに上回りながら、無念の敗北を重ねていく……。まさに、モビルスーツの性能差が、物語の骨格を作り上げていったわけである。

赤い彗星が出す通常の3倍の速度はものすごい

だが、ジオン公国軍も、恐るべき性能を誇るモビルスーツを保有していた。「赤い彗星」シャア・アズナブル専用の赤いザクである。その性能が優れていることは、初登場のシーンで告げられた。

ホワイトベースのレーダーに、ジオン公国の戦艦ムサイから飛び立った3機の機影が映る。そのうち1機が見る見る他の2機を引き離す。レーダー係が叫ぶ。

「通常の3倍のスピードで接近します!」

この場合の「スピード」とは「速度」ではなく、「加速度」のことだろう。

宇宙空間では、「相対速度」しか測定できない。相対速度とは「自分から見てどんな速度か」ということで、自分の速度が変われば、相手の速度も変わって見えるから、「速度」はマシンの性能を示すことにはならないのだ。

だが、加速度は「どんな勢いで速度を上げているか」ということであり、性能の指標になる。機体が軽く、スラスターの推力が強いほど加速度は大きくなるはずだ。

前述したように、ザクのスラスター総推力は、全備重量の59%。ここから、ザクは宇宙空間では、自由落下の59%、すなわち0.59Gで加速できると考えられる。

シャア専用ザクがその3倍の加速度を持つとしたら1.77Gである。F1マシンは、スタートしてから2.5秒で時速100kmに達する。その平均加速度は1.1Gだ。通常のザクは、F1マシンの半分ほどの加速度だが、シャアのザクはF1マシンの1.5倍の加速ができることになる。

しかもF1マシンは、スピードが上がるほど空気抵抗が大きくなり、やがて速度は上がらなくなるが、空気のない宇宙では、どこまでも速度が上がり続ける。

シャアのザクの場合、飛び立った戦艦ムサイと相対速度は、10秒後に時速600km、1分後に時速3600km、5分後に時速1万8000km!

これはものすごい性能だ。さすが赤い彗星の専用モビルスーツ!

詳細なスペックを設定し、視聴者に公開することで、物語の在り方も、描写のリアリティも、グッと胸に迫ってくる。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※原稿では数字を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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