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空想未来研究所2.0

飛べるけど燃費はリッター9cm!?車を空に飛ばす4つの方法

空想世界のいろいろな空飛ぶ車を考察してみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「空飛ぶ車」。マンガ、アニメ、特撮の中には膨大な数のマシンが登場しているが、理想的な車の“飛ばし方”はあるのか考えてみました。

空飛ぶ車のアイデアは物語が源流

車が空を飛べたら、どんなに便利だろう。

地上を走るより速度が出るし、交通渋滞にハマる心配もなく、離島からの車通勤も可能になる。自家用ジェット機を所有するセレブたちも、空港までは別の交通手段で行かねばならないわけで、空飛ぶ車があれば、その手間も省けることになる。そんな夢と欲求に応える空飛ぶ車の実用化は、実は既に世界中でいくつも進められている。スロバキアのエアロモービル社など、すでに予約販売(2020年納車)を開始しているメーカーもある。

だが、空飛ぶ車という発想は、ほぼ間違いなく空想の物語が源流。地上を走っていた車が、ボディーから翼を出したり、ロケット噴射をしたりして、大空に舞い上がるシーンはまことにカッコよかった。そうした夢に、現実世界の技術が追い付いてきたということだろう。

今回は、そんな空想世界の空飛ぶ車の歴史を振り返りつつ、現実世界の空飛ぶ車の開けゆく可能性を探ってみよう。

車が空を飛ぶために要求される技術

物体が空を飛ぶには、地球の重力に打ち勝たねばならない。それを可能にする原理には、次の4つがある。

(1)翼に風を受けて「揚力」を発生させる
(2)ガスなどの噴射で「反作用」を発生させる
(3)空気より軽い気体で「浮力」を発生させる
(4)地球を周回して「遠心力」を発生させる

こうして並べてみると、面白いことに気付く。

飛行機は、プロペラやジェットエンジンで自らが前進することで翼に風を受け、上向きの揚力を生み出す。ヘリコプターのローターは、断面が飛行機の翼と同じ形をしていて、これを回転させることによって風を受け、揚力を発生させる。飛び方は全く違うが、どちらも(1)の揚力で飛んでいることになる。

その一方で、ヘリコプターは垂直離陸やホバリング(空中停止)が可能で、この点は(2)の反作用で飛ぶ垂直離着陸機と同じ。つまり、ヘリコプターは、原理は飛行機と同じなのに、飛び方は垂直離着陸機と同じということになる。

いま存在する現実世界の空飛ぶ車は、飛行機型、ヘリコプター型、垂直離着陸機型に分かれる。

飛行機型は、スピードが速く、航続距離も長いが、離着陸に滑走を必要とする。ヘリコプター型は、スピードと航続距離では飛行機に劣るが、滑走を必要としないか、滑走距離が非常に短くて済む。垂直離着陸機型は、スピードは飛行機に肩を並べるが、垂直離着陸時に大きなエネルギーを必要とする。

実現した“空飛ぶ車”で言えば、もちろん、車の設計にはさまざまなコンセプトがあり、速度や航続距離などが実現できた数値なのか、実現したい目標値なのかの違いもあるので、こうした一般論が発表されているスペックに当てはまらないこともある。

では、(3)浮力と(4)遠心力を利用した空飛ぶ車は実現できないのか。

浮力を利用するとしたら、車の屋根に気球を付けることになるだろう。

安全な気体の中で最も軽いのはヘリウム。気温20℃の空気中で、1m3あたり1.04kgの浮力が発生する。気球の球皮の重さを1m2当たり50g(熱気球の標準)とすると、1tの車に平均体重65kgの人が4人乗る場合、車体を浮かすのに必要な気球の直径は13.3m。乗用車の全長は4mぐらいだから、そんなものがプクーっと膨らみ始めたら、あまりに迷惑!

さらに、遠心力は迷惑どころの騒ぎではない。

地上を走って、遠心力が重力を上回るためのスピードは、時速2万8000km=マッハ23! 車の燃費は、「空気抵抗に対抗するためのエネルギー」だけに注目すると速度の2乗に反比例するので、「時速60kmで1L当たり20km」の車を基に計算すると、マッハ23で走る車の燃費は、1Lあたり9cm!スピード違反で捕まるわ、ガソリンは食うわ、ロクな車じゃありませんな。

車が飛ぶ、バイクも飛ぶ、宇宙も飛ぶ!

片や、空想の世界で空飛ぶ車が百花繚乱を競ったのは、1970年代の特撮番組である。例を挙げれば枚挙にいとまがない。

『サンダーマスク』(1972年)のサンダー1号は、ボンネットの左右から三角形の翼が出ると、後部からジェット噴射して、マッハ3で飛ぶ。宇宙も飛ぶ!

『流星人間ゾーン』(1973年)のマイティライナーは、タイヤが車体に収納され、左右に翼が出て、空を飛ぶ。動力源はプラズマ流体振動エンジン。これも宇宙を飛ぶ!

『快傑ズバット』(1977年)のズバッカーは、後部の巨大なファンで時速350kmの高速走行が可能だが、「フライトスイッチ、オン!」の掛け声で、ボンネットから主翼がせり出し、後部からブースターの付いた尾翼が現れて、空を飛ぶ!

これらは、いずれも飛行に当たっては翼を展開する飛行機型と言えるだろう。

驚くのは『超人バロム・1』(1972年)のマッハロッドだ。これも後部に巨大なファンが付いているが、走行速度はマッハ2=時速2450kmと怪傑ズバットのズバッカーを圧倒。そして、特に変形もしないのに、垂直上昇もできるし、水平飛行も可能!その上、地中も水中も走れる!地中では、その巨大ファンがモノスゴク邪魔になると思う。

そして空想の世界では、バイクも空を飛ぶ。

『仮面ライダーV3』(1973年)のハリケーンは、風防の左右にある短い翼が伸び、ロケットブースターが現れて、10時間の飛行が可能!

『仮面ライダーX』(1974年)のクルーザーは、風防の左右にプロペラが付いていて、これで空も飛べるし、深海にも潜れる!

『仮面ライダーアマゾン』(1974年)のジャングラーは、インカの長老・バゴーが設計した。マシンの後方に付いた2枚の翼で滑空できるが、その翼は縦向き。長老の秘法、恐るべし。

走るより飛ぶのにナットクのガンツバイク

空飛ぶ車は、時代が下っても現れた。鮮烈な印象を残したのは、マンガ『GANTZ』(2000~13年)のガンツバイクだ。

1個の巨大なタイヤの内部に、一回り小さなリングがあり、そこに運転席が設置されている。タイヤに遮られる前方の視野は、手元のモニターで確保。タイヤの後方外側にも、後ろ向きの座席があり、そこに仲間を乗せて攻撃もできる。

このバイクが、空も飛べるのである。

運転席となる内側のリングは地面に垂直のまま、タイヤだけが水平に回転。そして、タイヤの側面には、スラスターのようなものが現れ、後部にはジェットエンジンらしきものが見える。そのスラスターから十分な量と速度の空気やガスを噴射して、ジェットエンジンで推進力を得れば、確かに安定して飛ぶことができそうだ。

これは素晴らしい!

地上走行時のガンツバイクのように、一輪で走る乗り物は空想の世界にはよく登場するが、通常の2輪バイクに比べると、安定性(カーブで倒れやすい)や加速性能(急加速すると運転席がタイヤの内側を上っていく)に問題があると考えられる。

普通「空飛ぶ車」は、地上を走るのは当たり前で、空を飛ぶことに驚きが集まるものだが、ガンツバイクはそれが逆なのだ!

もちろん『GANTZ』は、未知のテクノロジーに支えられた世界の物語なので、現実の技術に当てはめて喜ぶべきではないかもしれないが……。

そして、主人公の玄野計(くろの・けい)は、地球と月の間に位置した異星人の母船から、このガンツバイクで2度も地球に帰還した!ガンツバイクには、与圧装置どころか、風防すらないように見えるのに!これも驚くべきテクノロジーである。

空想の世界では、さまざまな空飛ぶ車が、大空や宇宙を闊歩してきた。それらを「荒唐無稽」というのは簡単だが、現実世界において、ほんの10年前まで「空飛ぶ車の実用化」が夢物語だったことを思い出してほしい。「技術的に不可能」とは「現在の技術では不可能」ということであり、技術は日々進歩しているのだ。そして、現実世界の空飛ぶ車が、空想世界の空飛ぶ車に刺激されて生まれたのも間違いないだろう。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

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