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2021.4.19
モバイルSCOT(R)で手術室を可視化! NTTドコモが考える、5G医療でより安心できる医療が実現する未来
株式会社NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所 方式担当 担当課長 南田智昭【後編】
近い将来、モビリティーを与えられた手術室や戦略デスクによって、いつでも・どこでも専門医が監修できる夢の医療体制が整うかもしれない。そんな期待を抱かせる5G医療だが、その実現には乗り越えるべきハードルがいくつか存在している。前編に引き続き、株式会社NTTドコモ ネットワークイノベーション研究所で方式担当 担当課長を務める南田智昭氏に、5G医療が抱える課題と、その解決策としての施策を伺った。
INDEX
万一の医療過誤でも責任の所在が明らかに
5Gを活用したDtoD(DoctorとDoctor)による遠隔医療で、医療に関するさまざまな社会問題の解決に取り組む株式会社NTTドコモ。
では、実際に5G医療の実証実験を推し進めてきた一人である南田智昭氏は、医療を受ける患者側にどんなメリットがあると考えているのだろうか。
「指導する専門医が執刀医の一つ一つの所作に対して意見を言えるということは、患者とすればその場でリアルタイムのセカンドオピニオンを受けているようなものですよね。そんなことは、おそらく今までなかったのではないかと思います」
※【前編】の記事「5G×移動診療車が登場! 医療格差を是正するドコモのモバイルSCOT(R)構想」
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5G医療によって手術に対する患者の安心感は全く違うものになるはず、とそのメリットを説く南田氏
さらに南田氏は、手術室の透明化にもつながるのではないかと続けた。
「手術室の映像が全て保存されているということで、手術中に起きたことを後から他の人が再生して確認できます。したがって、手術室が密室じゃなくなるわけですね。自分に行われていることが全部記録されるわけなので、患者さんの安心につながるはずだと考えています」
もし手術中に何か問題が発生し、それが予期せぬ事故なのか判断が難しい場合でも、後から映像で正しく検証することが可能というわけだ。
これは、もちろん患者だけに限られた話ではない。適切な治療を施した医師にとっては自らの正当性を証明することにもつながるだろう。
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手術室で行われたことを「SCOT(R)」は全て録画。戦略デスクからアクセスすれば、途中から手術に参加する場合であっても、追っかけ再生して手術の経過を全て確認できる
「例えば、事前にしっかりと検査をした上で『熟練の専門医が執刀しますので安心してください』と言われて従来の手術室で受ける手術と、同じ医師の執刀でも『SCOT(R)(Smart Cyber Operating Theater/スコット)で手術前、手術中の様子は全部録画されています』という手術。これが同じ値段だったら、患者さんはどちらを選ぶでしょうか」
インターネット上への情報流出を防ぐ5G時代に求められるクラウドサービス
しかし、一方で手術という重要な個人情報となるだけに、データの取り扱いや流出を心配する声も多そうだ。
「もちろん、そうした懸念はごもっともです。現在でも医局外部に手術データを持ち出すことは倫理的になかなか認められていません。これは日本に限ったことではありませんが、医療×AIではAIに食べ(蓄積)させるデータがそろわず、情報がタコツボ化するとよく言われます。でも、これは当たり前の話なんですよね。そこで、一般のLANと同じイメージでインターネットに情報を露出させない、そうすることで患者さんのプライバシー的な障壁や医療の倫理的障壁を一段クリアしようという取り組みがあります」
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NTTドコモが提供するオープンイノベーションクラウド(R)は、NTTドコモ網内の設備にクラウド基盤を構築することで、低遅延&高セキュリティーを実現
南田氏によれば、5Gにはもともと閉鎖網と呼ぶプライベートネットワークの考え方が盛り込まれているという。2020年10月の「モバイルSCOT(R)」と商用5Gを活用した国内初の遠隔医療実験で使われた「ドコモオープンイノベーションクラウド(R)」もこの閉鎖網を活用したシステムだ。
「ドコモオープンイノベーションクラウド(R)はすでにサービスインしているものです。つまりドコモとしては、セキュリティー上はいわゆるローカルエリアネットワークと違わないレベルで、情報をインターネットに出さないで伝送する技術を確立させています。今回の実験でも、インターネットに情報を漏らすことなく、ドコモの通信網の中だけで患者の情報を遠隔地へ伝えられることが検証できました。この結果により、医療データの活用に向けて一つの道筋を示せたのではと考えています」
5G医療の実現に向け克服すべきコスト問題
もう一つ、5G医療の実用化のために避けて通れないのが費用の問題だ。大きく言えば2つあると南田氏は指摘する。
「移動診療車を造るにはコストがかかるので、患者の発生件数によっては輸送網を作った方が安上がりということも当然あり得ます。そこの折り合いをどうつけるかですが、いざというときのために移動診療車を持っておくことは有効・有用だと思います。例えば、災害時には病院や専門医が足りなくなることが想定されますが、そんなときに移動診療車を派遣して遠くの専門医のサポートが受けられるのは絶対に力になるはずです」
もう一つが、サポートに当たる専門医に対しての報酬だ。現状の日本では新型コロナウイルスの影響もあり、例外的に初診からオンライン診察の医療加点が認められている。しかし、DtoDのような場合、直接診察する医師には医療報酬が支払われるが、指導医に対しては支払われていないのが現状だ。
「ビジネスとして考えたときに、サポートする専門医の方に報酬を得てもらうシステムをどう構築するのか、というのは当然の課題といえます。ただ、これはそもそも支援という医療行為がプラスになるんだという認識にまで至っていないのが原因だと思います。そうした認識を変えていくためにも、実証実験を重ねることで、広く患者に適用を促すべき技術であるという点をアピールしなければいけませんね」
変わる社会基盤の中で通信が果たす役割
5G医療の実用化に向けて、今まさにそこに注力しているのかと思いきや、南田氏の目線はすでにその先に向けられているという。
「『モバイルSCOT(R)』については現在の医療の現場で何ができるのかを具現化した上で、DtoDがどこまで患者のプラスになるのか、5Gの技術を使ってここまでできる、ということを指し示していかなければいけないと思っています。ただ、私の所属部署としては5Gの限界点を早く見定めて、5Gの経験を次の『5G Evolution &6G』につなげていくのも重要な役割です」
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これまでの経験や取得してきた特許は、通信の未来を見渡したときにNTTドコモの大きな強みになると語る南田氏
5G通信がスタートして1年もたたないうちに、早くも5Gに取って代わる次世代通信網を睨んでいるとは少々驚きといえる。
では、今後10年、20年、そして100年と進んでいく中で、通信の力はどのように世の中に貢献していくのだろうか。
「エネルギーコンサンプション(エネルギー消費)という部分に、通信がつながっていければと考えます。コロナ禍においてリモートワークが進んで自宅でできる仕事の幅が広がりましたが、これには通信が一役買っているはずです。社会の生活基盤がガラッと変わるとき、当然エネルギーの使い方も変わってきます。その中で、東京だけではなく、各都市部での生活の在り方も踏まえ、衣食住に生業も加えた衣食職住という形でどうグランドデザインしていくのか。
私はコンパクトシティーという考え方が非常に好きなんですが、この実現には大小の痛みを必ず伴うのでなかなか進まないだろうと思います。ですが、日本の未来のために痛みを伴ってでもコンパクトシティー構想を進めるとなったそのときには、間違いなくわれわれNTTドコモの通信技術が生かせるはずです」
5G医療のみならず、通信の力で社会貢献を担っていくNTTドコモ──。
この先、その存在感はますます高まっていくに違いない。
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text&photo:安藤康之
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