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タンパク質で将来病気になる確率が分かる? 疾病リスク予測最前線

NECグループ企業が展開する新時代のトータルヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス」

長寿社会の現代において、がんや心筋梗塞、脳卒中、そして認知症は生活や生命を脅かし、早期発見・治療が望まれる。それらを早期発見よりもさらに前段階、つまり“発症リスクを見える化”できたら、私たちの健康意識は抜本的に変わるかもしれない。その可能性を7,000種類のタンパク質を約5mlの血液で一度に測定する世界初の技術を活用したトータルヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス」検査で推進する企業がフォーネスライフ株式会社だ。今回は同社マーケティング部ゼネラルマネージャーの溝辺武史氏に、同社が展開する疾病リスク予測検査の詳細を聞いた。

早期発見よりも早く、疾病リスクを予測する技術

日本では少子高齢化が加速し、昨今は認知症の患者数が増加し続けている。

内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると、2037年には日本の総人口における65歳以上の割合は33.3%に達すると見込まれ、医療費を含む社会保障費のますますの増大、介護需要の逼迫(ひっぱく)などが懸念されている。

また、日本では20歳以上の67%もの人たちが健康診断を受診していても、厚生労働省が発表した「平成29年 患者調査における総患者数」では毎年280万人が心疾患、脳血管疾患で治療が必要とされ、国立がん研究センター「平成29年がん情報サービス統計」では97万人ががんを罹患すると発表されている。

フォーネスライフはこうした状況を踏まえて、新たな検査による行動変容の実現を目指し2020年に設立された。同社マーケティング部門、およびコンシューマー事業の責任者である溝辺氏が説明する。

「認知性を含むこれらの疾病は本人、そして家族に身体的にも経済的にも長期にわたるダメージを与えます。フォーネスライフは、そうした状況に疾病リスク予測によるヘルスケア革命を起こすことを使命として、NECソリューションイノベータ株式会社から事業を切り出すカーブアウトにより設立されました」

社会ソリューション事業を担うNECグループの中核企業であるNECソリューションイノベータの100%子会社で、循環器・血管生物学、ゲノム疫学、オミクス解析など医学分野からアドバイザーを迎えた同社は、将来の疾病リスクを可視化し、生活習慣の改善をサポートするトータルヘルスケア・サービス「フォーネスビジュアス」を提供している。

「フォーネスビジュアスは、血液中のタンパク質を測定し、健康状態・疾病リスクを可視化することにより、誰も病気にならない未来を目指したサービスです。技術的には、アメリカのバイオベンチャーであるSomaLogic社(2024年1月にStandard BioTools社と経営統合)と共同事業契約を結び、同社が持つ血液に含まれる7000種ものタンパク質を解析する高精度測定と、NECグループのビッグデータ解析を組み合わせることで実現できた事業です」

SomaLogic社が開発した技術「SomaScan」を用い、血液中の約7,000種類のタンパク質を一度に解析、認知症、心筋梗塞・脳卒中、肺がん、慢性腎不全の将来の疾病リスクと、肝臓脂肪や耐糖能など現在の体の状態を可視化する

資料提供:フォーネスライフ株式会社

一般的に血液検査は血液中の細胞や酵素を数値化、現在の健康状態を知り病気の早期発見に役立てる。一方、フォーネスビジュアスは数年先、将来病気になる確率を予測する。

「早期発見は『既に発症している』状態。重大疾病の治療は心にも体にも、そして経済的にも大きな負担がかかります。早期発見よりもっと前にリスクに気付き生活習慣を見直すことで病気にならない未来を目指すことが、フォーネスビジュアスのコンセプトです」

7,000種のタンパク質から将来病気になる確率や、現在の体の状能を可視化

フォーネスビジュアスは、血液中の7,000種類のタンパク質を一度に解析する。

そもそも、なぜタンパク質を調べることで将来の疾病リスクが可視化されるのだろうか。

「遺伝子は、その人が生まれ持った一生不変のリスクが可視化できるのに対し、タンパク質は生まれた後、日々の環境要因や生活習慣によって変化するリスクを捉えることができます」

健康状態によるタンパク質の変化のイメージ

資料提供:フォーネスライフ株式会社

現在、疾患は約20%が遺伝子、残り80%が生活習慣に起因すると言われている。

「コホート研究(大勢の人を対象に病気と生活習慣、環境要因の関係を分析する長期研究)から、数十万人の血液を20年単位で取得、それらに過去 20 年間分の病歴情報を合わせたビッグデータを解析することで、血中タンパク質とさまざまな病気発症との相関関係を可視化、タンパク質の変化から、どんな病気がどのくらいで発症するかといったリスク予測が可能になりました」

フォーネスビジュアスの血中タンパク質検査結果の提示例。少量の血液採取から、認知症は20年以内、および(65歳以上の方のみ)5年以内、心筋梗塞・脳卒中は4年以内、肺がんは5年以内、慢性腎不全は4年以内の発症リスクを数値化

資料提供:フォーネスライフ株式会社

「フォーネスビジュアス検査のモデルの性能評価は、例えば認知症リスクにおいて、FDA(アメリカ食品医薬品局)が消費者向けに直接販売することを承認した遺伝子での認知症予測検査と、同等かそれ以上であることが認められました」

また、リスクが可視化される項目は順次追加され、「2025年にはがんの種類、乳がん、大腸がん、食道がん、胃がんなどを加えられるよう研究開発を進めています」と溝辺氏は話す。

「提携医療機関で採血された検体は弊社の衛生検査所で解析します。その後、検査結果報告書を提携医療機関の医師よりご提供いたします。その結果を基に保健師の資格を持つ弊社のコンシェルジュが一人一人に合わせパーソナライズされた生活習慣改善メニューを提案させていただきます。

例えば、飲酒量について過多の傾向がみられる場合、『飲酒の半分をノンアルコール飲料に』『2日に1回は休肝日を作る』『飲酒に変わる爽快感として炭酸水を飲む』『焼酎の瓶に目盛りを入れる』など、さまざまな提案を行い、少しずつできることから取り組んでいただき、一人ひとりのライフスタイルにあった継続できる生活習慣の定着を目指します」

フォーネスビジュアスで提供されるサービスの全体イメージ。検査はフォーネスライフのECサイトやコールセンターから申し込みが可能

資料提供:フォーネスライフ株式会社

フォーネスビジュアス解説動画。元タレント・アナウンサーの多田(高樹)千佳子氏が同社の広報を担当している

高齢化社会待ったなし! 地方から進むサービスの浸透

フォーネスビジュアスのサービスは基本的に個人で申し込むことが可能だ。しかしサービスの浸透には、やはり企業・団体に福利厚生の一環として採用されることが大きな鍵となるだろう。昨今は、従業員の健康管理を経営課題として捉え、健康保持・増進を経営戦略に盛り込む「健康経営」を実践する企業も増え、サービス浸透の追い風となっている。

「現在は健康経営の意識の高い企業とともに、熊本県荒尾市などの住民の高齢化が進む自治体での導入が進んでいます。他にも複数の自治体からお声掛けをいただいており、今後の導入が加速することが見込まれます」

NEC公式YouTubeより。荒尾市は2023年3月より自治体として初めて市民へのフォーネスビジュアス検査の提供を実施した

自治体単位のサービス実施には、地域の医師、保健師とも協力・連携し高齢者を中心に生活習慣改善をサポート。「利用者からは『検査をきっかけに、大病になる一歩手前でリスクが見つかり、本当に助かりました』という声が届くこともあります」という。

「今後も引き続き研究開発を進め、50以上の疾病リスクの可視化を目指します。企業、自治体、そして個人での利用者の拡大を日本にとどまらず、海外へも展開していく予定です。そして、弊社の企業ビジョン『誰も病気にならない未来、誰もが自分らしく生きられる社会』を実現していきたいと考えています」

社名の「フォーネスライフ」の語源は、“命の声”を意味するギリシャ語を英語と組み合わせたもの。

日々進歩する検査技術で一人一人の“命の声”に寄り添うビジネスが、ヘルスケアの未来を変革し始めている。

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