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「エネルギー基本計画」を3分解説!

国が定めるエネルギー政策の基本方針

エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第5回のテーマは「エネルギー基本計画」。定期的に耳にするが、そもそも“基本”の“計画”とはどのようなものなのか。最低限知っておきたい「エネルギー基本計画」のポイントを解説します。

エネルギー基本計画とは、日本のエネルギー政策の方針

エネルギー基本計画は、「エネルギー政策基本法」という法律が作成することを定めているもので、内閣が決を下す閣議決定の対象です。

2002年に施行された同法は、エネルギーにおける「安定供給の確保」「環境への適合」「市場原理の活用」という3つの柱を掲げ、国や地方公共団体、事業者、国民の役割を示しました。

この法律を背景に、長期的で総合的なエネルギー政策を計画的に進めるため、政府は「エネルギーの需給に関する基本的な計画」を定めなければなりません。それが「エネルギー基本計画」なのです。

エネルギーをめぐる世界の情勢は、日々変化しています。

そこで政府は、少なくとも3年ごとに計画の見直しを行うこととしています。

これまで、2003年に最初の計画が策定され、2007年、2010年、2014年、2018年にそれぞれ改訂版が閣議決定されています。

そして2020年10月、第6次となるエネルギー基本計画の策定に向け、本格的な議論が始まりました。

第5次は2030年と2050年の方向性を示している

現行の基本計画となる第5次エネルギー基本計画は、2018年に定められました。

2015年の基本計画に引き続き、2030年度に温室効果ガスの26%削減、2050年までには80%削減するという脱炭素化の目標を掲げ、「2030年度に目標とするエネルギーミックスを実現すること」、そして「2050年に向けた政策の方向性」を示しています。

2030年度のエネルギーミックスとは、2015年7月に決定された「長期エネルギー需給見通し」のこと。

これは、日本が必要とする電力を含んだ全てのエネルギー量について、化石燃料、原子力、再生可能エネルギーといったエネルギー源が担う供給量の割合を示したものです。

2030年度のエネルギー需給構造の見通し(エネルギー需要及び一次エネルギー供給構造)

出典:経済産業省『長期エネルギー需給見通し』(平成27年7月)より引用

2030年度の電力の需給構造

出典:経済産業省『長期エネルギー需給見通し』(平成27年7月)より引用

日本が2015年に示した「温室効果ガス排出削減目標」(2030年度に2013年度比26%削減)の前提が、このエネルギーミックスとなります。

つまり、温室効果ガスの削減目標を安定供給や経済性に配慮しながら達成するには、エネルギーミックスの実現が必要であり、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの積極的導入、安全性を最優先にした原子力発電所の再稼働といった取り組みを方針として示しているのです。

また、2050年に向けた政策の方向性として、政府は「あらゆる選択肢を追求する」としました。

再生可能エネルギーを経済的に自律した主力電源化にすることや、原子力を脱炭素化の選択肢として位置付けること、さらに、化石燃料の脱炭素化に向けた水素技術の開発などが挙げられています。

ただし、2030年度の目標とは違い、エネルギーミックスといった具体的な将来像は示していません。

これは、2050年に温室効果ガスを80%削減するという目標のハードルが非常に高いことに加え、今後起こる技術革新を正確に予測することが難しいためです。

「2050年カーボンニュートラル」の具体的な中身がポイントに

2018年の基本計画改訂以降、自国第一主義の台頭、気候変動問題への危機感の高まり、新型コロナウイルス感染症の拡大など、国際情勢は大きく変化しました。

2020年10月の所信表明演説において、菅 義偉首相は、2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を同等にし、全体としてゼロにすること、いわゆる「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すと宣言しました。

近年、ドイツ、英国、フランスのみならず、中国もカーボンニュートラル(ネットゼロ)を目指すことを示しています。

ただ、再生可能エネルギーの大量利用と安定供給や経済性との両立は、未知の領域です。

また、エネルギーを多く消費する産業の脱炭素化に向けた製造プロセスの革新は、まだまだ開発途上。

さらなる省エネルギーには、私たち一人一人の生活様式と行動を変えていく必要もある上、新しいエネルギーシステムに作り替えていくためには莫大なコストもかかります。

これらを踏まえると、「2050年カーボンニュートラル」は簡単に達成できる目標ではありません。

日本の産業競争力を維持、さらには強化しながら温室効果ガスの大幅削減を実現する。

菅首相の所信表明演説を踏まえ、具体的な議論が、これから進みます。

参考:
・e-Govポータル『エネルギー政策基本法(平成14年法律第71号)
・経済産業省 資源エネルギー庁『エネルギー基本計画について
・経済産業省 資源エネルギー庁『長期エネルギー需給見通し』(平成27年7月)

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