2021.4.28
「ネットゼロ」を3分解説!
温室効果ガスの排出量と吸収・除去量を正味ゼロに
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第10回のテーマは「ネットゼロ」。ここ数年でネットゼロを目標として掲げる国が増えています。ネットゼロとは、いったい何を指すのか? 最低限知っておきたい「ネットゼロ」のポイントを解説します。
ネットゼロとは温室効果ガスを差し引きゼロにすること
近年、多くの国や自治体、企業がネットゼロ(Net Zero)を宣言しています。
ネットゼロとは、温室効果ガスあるいは二酸化炭素(CO2)の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする、という意味です。
排出量を完全にゼロとすることが現実的には難しいため、排出量を正味(=ネット)ゼロとすることを指しており、「CO2ネットゼロ」といわゆる「カーボンニュートラル」の意味するところは同じです。
経済・社会を維持していくために、どうしても排出せざるを得ない分を、間接的に減らす方法の一つといえます。
日本政府は、2020年10月の菅 義偉首相による所信表明演説で、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すこと」を宣言しました。
既に120を超える国が2050年までにCO2排出についてネットゼロを目指すと宣言しており、企業や投資家、都市でもネットゼロを目指す動きが加速しています。
ネットゼロはパリ協定の目標にも位置付けられる
気候変動問題に関する国際的な枠組みである「パリ協定」では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを掲げています。
そのため、「できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる」ことも併せて示しました。
つまり、パリ協定の目標を達成するためには、国や企業、市民がネットゼロを目指して、産業や生活を意識的に変化させることが非常に重要なのです。
2021年11月に開催予定のCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)を前に、同年3月、IEA-COP26ネットゼロサミットがオンラインで開催されました。
会議には日本も参加し、ネットゼロの実現に向けた以下7つの主要原則がIEA(国際エネルギー機関)によって提示され、40カ国以上もの参加国から支持を得ています。
◆ネットゼロの実現に向けた7つの主要原則
(1)ネットゼロに向けた持続可能な復興の推進
(2)2030年およびそれ以降に向けた明確で野心的かつ実行可能なロードマップの策定
(3)各国間の情報共有によるトランジションの促進
(4)ネットゼロ達成に向けたセクターごとの脱炭素化とイノベーションの加速
(5)官民による投資促進
(6)人々を中心としたトランジションの支援
(7)新たなエネルギーシステムにおけるエネルギー安全保障の確保
ネットゼロ達成にはイノベーションが絶対条件
日本の温室効果ガス排出量の約85%は、燃料の燃焼などから排出される「エネルギー起源CO2」となっています。
エネルギー起源CO2を削減するには、省エネルギーをはじめ、電力の脱炭素化、それに伴う需要側のさらなる電化(動力を電気に変えること)、自動車・船舶・航空機用燃料や産業用燃料の脱炭素化、そしてネガティブエミッション技術(大気中の二酸化炭素を回収・除去する技術)といった複数の方法を組み合わせる必要があります。
例えば、植林によってCO2の吸収量を増やすこともネガティブエミッション技術の一つです。
その他、各国で研究開発されているネガティブエミッション技術には、大気中のCO2を直接回収して取り除く直接空気回収技術(DAC)とCO2回収・貯留技術を組み合わせたDACCS、バイオマス燃料とCO2回収・貯留技術を組み合わせたBECCSなどが挙げられます。
既存の技術だけでなく、まだ商用化されていない多くの技術も活用していかなければ、ネットゼロという非常に困難な目標は達成できません。
ただ、脱炭素化に向けた技術開発は、経済成長の新たな推進力にもなります。
今後、ネットゼロの進捗とともに、技術の普及促進に向けた各国や企業の開発競争が注目されます。
参考:
・経済産業省『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?~』
・経済産業省『「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?~』
・International Energy Agency『Seven Key Principles for Implementing Net Zero』
※参照:2021年4月19日
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