2022.3.31
「SAF」を3分解説!
脱炭素化に貢献する次世代航空燃料
エネルギーの注目キーワードを3分で理解! 第21回のテーマは「SAF」。航空業界の脱炭素化に向けた取り組みの一つとして注目される燃料とはどのようなものなのか。最低限知っておきたい「SAF」のポイントを解説します。
SAFとは化石燃料由来ではない航空燃料
長距離、大重量を運ぶ航空輸送は、推進力を得るために密度の高いエネルギー源が必要とされ、電気などへの代替が難しい分野とされています。
他業界と同じく、航空部門でも脱炭素化が進められる中で、大きな期待が寄せられているのが「SAF」です。
SAFは、「持続可能な航空燃料」(Sustainable Aviation Fuel)の略称で、従来の化石燃料由来ではないジェット燃料を指します。
廃油や油脂、生ごみや都市ごみ、非食用作物といったさまざまな原料から生産され、近年では微細藻類などから製造される燃料も話題となっています。
SAFの化学的・物理的な特性は従来の航空燃料とほぼ同じであり、混合して使用することや、同じ供給インフラを利用することも可能です。
このような特別な追加設備などを必要とせず、既存システムに組み込んで運用できる燃料は「ドロップイン燃料」と呼ばれています。
各国の定期国際航空会社で構成される国際航空運送協会(IATA)は2021年10月、世界の航空運送業界が2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量をネットゼロとすることを決議しました。
IATAは、目標達成のために必要となる排出削減量のうち、約65%をSAFによる削減として見込んでいます。
SAFの重要な3つの要素
SAFは、「持続可能性」「原油を代替する原料 」「燃料」という3つの重要な要素から構成されます。
1つ目の「持続可能性」は、経済的・社会的・環境的な目的に合致した方法で継続的かつ反復的に資源を確保でき、天然資源の枯渇を回避して生態系のバランスを保つものと定義されます。
2つ目の「原油を代替する原料」は、従来の化石資源(石油、石炭、天然ガスなど)以外を原料とした燃料のこと。
最後の「燃料」は、商用航空機に使用するための技術的および認証要件を満たしたものを指します。
航空機はさまざまな国で給油するため、航空燃料には国際規格が定められています。
ドロップイン燃料として、従来の燃料を代替していくことに焦点が当てられており、SAFも米国試験材料協会(ASTM)が定める規格に合致する必要があります。
現在、SAFは7種類の製造技術が認証されており、技術によって異なるものの、従来の燃料と最大50%の割合で混合させることが認められています。
2050年に向けて普及が始まるSAF
現在、SAFの生産量は航空燃料の総需要の1%未満にとどまりますが、欧米ではSAFの製造や利用拡大に向けた目標の設定や取り組みが進められています。
欧州では、欧州委員会(欧州連合の政策執行機関)が規則案(ReFuelEU Aviation Initiative)を提示しました。
規則案では、全ての航空燃料供給会社に対し、EUの空港で供給する航空燃料に占めるSAFの割合を徐々に増やすことを義務付けています。
例えば、SAFの割合を2025年には最低2%、2030年には最低5%、2050年には63%とすることが提案されています。
一方の日本では2021年12月、国土交通省が2030年に国内航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換える方針を示しました。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がSAFの技術開発に取り組んでおり、国産SAFを使用した国内航空会社によるフライトも実施されています。
ただ、日本ではまだ国産SAFの商用化にまでは至っていません。
国産SAFの商用化・普及を推進させるため、2022年3月に業界を横断した16社が参画する団体「ACT FOR SKY」が設立されました。
今後、国産SAFの普及に向けて、生産体制の強化や利用企業への資金的な支援、サプライチェーンの構築など、国内の動きが注目されます。
参考:
・IATA, “Developing Sustainable Aviation Fuel (SAF)”
https://www.iata.org/en/programs/environment/sustainable-aviation-fuels/
https://www.iata.org/contentassets/d13875e9ed784f75bac90f000760e998/saf-what-is-saf.pdf
https://www.iata.org/contentassets/d13875e9ed784f75bac90f000760e998/saf-technical-certifications.pdf
・European Commission, “Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on ensuring a level playing field for sustainable air transport”
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX:52021PC0561
・国土交通省、「航空機運航分野におけるCO2削減に関する検討会」(主に第4回事務局説明資料)
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk8_000004.html
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photo:TOSHI.K / PIXTA(ピクスタ)